毎年、1月の下旬から2月の上旬にかけて、期末試験の採点をしています。今年は、本務校である大東文化大学と、非常勤講師として担当している国学院大学および東洋大学とで定期試験期間にかなりのズレがあり、大東のほうは1月28日に終わりましたが(但し、レポート科目は1月31日を締め切りとしました)、国学院大学の行政法1については2月6日に試験を行いました。
さて、採点をしていると、「これはいい!」とか「文句なし!」という答案もあるのですが、逆に、問題の趣旨を取り違えているのか、というような答案もあります。
そればかりか、ここ数年、非常に気になることが三つあります(本当はまだあるのですが、ここでは三つに絞ります)。法学部、法科大学院に共通する事柄です。
第一に、講義でも扱った用語〔術語)の意味を理解していないことがうかがわれる答案が少なくないことです。例えば、行政行為とは、私の講義ノートから引用させていただくならば「行政庁が、法律(「法令」とする例も多い)に基づき、優越的な意思の発動または公権力の行使として、国民に対して具体的な事実について直接的に法的な効果を生じさせる行為」をいい、行政契約、行政指導などとは厳格に区別されるべき概念です。ところが、答案の中には行政行為を行政活動と同じ意味のものとして捉えているらしいものがあります。これでは行政行為の概念を立てる意味がありません。もし、解答を書く者が用語(術語)を独自の意味で用いるならば、何故に通常の用語法と異なる意味を持たせるのか、説明をしなければなりません。
用語(術語)の問題は、何も試験科目の相違に関係があるというのでもありません。行政法や税法の答案でも、憲法、民法、刑法の基本的用語(術語)を誤って理解していると思われるものが見受けられます。そのため、論述の趣旨が不明になったりすることが少なくないのです。
第二に、1年生の時分で学ぶべき法学の内容を全く理解していないと推察される答案があります。採点をしていて驚いたのは、地方公務員法が憲法の特別法であるというようなことが書かれていた答案が実際に存在したことです(さすがに法科大学院の学生の答案には存在しません)。私は頭を抱えました。憲法が法律でないことは、法学でも憲法でも習うはずです。いや、高校の現代社会や政治・経済でも学ぶでしょう。憲法は法律より上位にあることは、いやしくも法学部生ならばイロハのイ、アイウエオのアとして身につけておくべきことでしょう。特別法と一般法との関係は、法律同士、たとえば民法と商法との間に成立するものです。もう一度、いや、何度でも、法学を勉強しなおしてください(ちなみに、ごく稀にではありますが、実務家でもこういう誤りを犯す人がいたりするようです)。
第三に、 そもそも文章の表現になっていない、いや、文章になっていない、もはやただの文字の列となっているものがあります。優秀な留学生の答案、レポート、レジュメなどを読んだ人が「下手な日本人よりもよほど日本語がうまいね」と口にすることがありますが、まことにその通りで、今回も改めて感じたことです。
第一の問題および第二の問題は、質問などを受ければ私が対応できますが、第三の問題は、私だけで対応できません。何故なら、国語力、文章表現力の問題であるためです。
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