ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

長良川鉄道越美南線の一部が廃止?

2025年03月04日 22時00分00秒 | 社会・経済

 この10年、20年くらいの公共交通機関、とくに鉄道の状況を見ていると、1980年代の国鉄改革は何だったのか、残されたものは何だったのかと考えることがあります。JRグループで存廃問題が生じている路線の全てではありませんが、多くの路線が、実のところ、1980年代にも存続か廃線かの検討がなされ、一定の基準によって特定地方交通線への指定を免れ、存続となりました。その代表例として留萌本線をあげておきましょう。

 また、特定地方交通線に指定された路線は第三セクターに転換されるかバス路線になりました。既に廃止されている元特定地方交通線もいくつかありますし、最近では、いすみ鉄道が危機的状況にあります。

 このような流れの中で、岐阜県の第三セクター鉄道が、一部とは言え廃線を検討することになりそうです。共同通信社が、今日(2025年3月4日)の19時14分付で「岐阜・長良川鉄道の一部廃線検討 施設老朽化、沿線自治体負担増で」(https://www.47news.jp/12256106.html)として報じています。

 長良川鉄道は、国鉄の特定地方交通線にして第二次廃止対象路線であった越美南線(72.1km)を運営する会社です。路線名称からおわかりでしょうが、越は越前、美は美濃を意味します。元々、髙山本線および太多線との接続駅である美濃太田駅からハピラインふくい線(旧北陸本線)との接続駅である越前花堂駅までの路線として計画され、美濃太田駅から北濃駅までの区間が越美南線、越前花堂駅から九頭竜湖駅までが越美北線として開業したのですが、北濃駅から九頭竜湖駅までの区間は未開業のままに終わりました。国鉄改革の結果、越美北線は国鉄線として残り、現在もJR西日本が運行していますが、状況はかなり厳しいところです。一方、越美南線は第三セクターである長良川鉄道が引き受けたのでした。

 その長良川鉄道の本社は関市にあります。筆頭株主は岐阜県、次いで郡上市、関市の順に主要株主となります。岐阜県や沿線自治体が株主である以上、沿線自治体の意向が会社の経営に多少なりとも影響を与えることとなります。現在の社長は関市の市長ですが、同市長が越美南線の「一部区間の廃線を検討していると明らかにした」のでした。共同通信社記事に書かれていることをそのまま引用しましたが、同記事では具体的にどこで述べたのかまでは明らかにされていません。そこで中日新聞社のサイトを参照すると、2025年3月3日16時04分付で「長良川鉄道、一部区間の廃線検討 山下清司・関市長が議会で答弁、区間や時期は触れず」(https://www.chunichi.co.jp/article/1032999)として報じていました。ただ、見出しにあるように、具体的な区間や時期は検討されていないようです。中日新聞社の取材によれば、一部区間というのは、越美南線の半分以上を占めるとともに末端区間を含んでいる郡上市にある区間です。

 関市長でもある長良川鉄道の社長が廃線検討の理由としてあげているのは、施設の老朽化、沿線自治体の負担の増加です。もとより、老朽化と負担増加は密接な関連があります。設備の更新に金がかかるためす。ただ、2023年度の運賃収入はおよそ2億5000万円、同年度の経常損益はおよそ3億8000万円であり、輸送人員の減少も理由としてあげられるでしょう。関市および美濃市には越美南線の他に名鉄美濃町線も通っていましたが、既に廃止されています。自動車社会の進展の結果でもありますが、人口減少の結果でもあるでしょう。現在、越美南線には、起点の美濃太田駅以外に他の鉄道路線との乗り換え駅がありません。これで70km超の路線なのですから、不利な形態であることも否定できません。

 現在のところは市議会などで端的な意見が出されているだけですが、今後、関市、郡上市などの沿線自治体において存廃が検討されることでしょう。


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1 コメント

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Unknown (fantasyexpress)
2025-03-05 03:58:23
廃止検討区間はまず美濃白鳥〜北濃の辺りかな?
あるいは郡上八幡〜北濃かもしれないが。
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