今日の日経朝刊13面(日曜に考える)に「地球回覧」として「独経済、誰がための『奇跡』? 改革の果実、企業に偏り」という記事が掲載されています。まるで数年前までの日本の実情を見るような内容ですが、やはりドイツでも労働市場に階層化が顕著となっているようです。
この記事に、フランクフルト・アム・マインで行われたデモの写真が掲載されています。そこに移っているスローガンが、今回のタイトルに示したドイツ語なのです。
記事では日本語に訳せば「派遣労働は人身売買?」と訳されていますが、原語のLeiharbeitを直訳すると「貸出労働」あるいは「貸借労働」となります。「なるほど」と思わせる表現です。派遣労働の仕組みを考えると、人材派遣会社が別の会社に労働者を貸し出す、逆に言えば人材派遣会社から別の会社が労働者を借りる、ということになります。労働者が賃貸借や消費貸借などの目的物として扱われているという訳です。そもそも、人材という言い方自体が、人を人としてではなく、物として扱うことを表しています。
ドイツ語のMenschenhandelは(直訳でも)「人身売買」です。上の仕組みからすれば、売買と言うよりは貸借ですが、売買と表現してもよいでしょう。
Leiharbeit ist Menschenhandel. スローガンでも疑問符は付けられていますが、相当にストレートな表現です。
マルクスの『資本論』が正当に指摘しているとおり、賃金労働自体は労働力の売買あるいは取引です。人身売買ではありません。雇用者は労働者の労働力、あるいは労働力により産み出された物あるいはものを欲するのであって、労働者自身を欲するのではないからです。しかし、賃金労働と人身売買は紙一重という部分もあり、簡単に境界を越えてしまうということも否定はできません。
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