1.登録免許税とは
登録免許税は、登記、登録、特許、免許、許可、認可、認定、指定および技能証明(以下、登記等とまとめて記すことがある)について課される国税である(登録免許税法第2条)。
登録免許税の課税物件、課税標準および税率は、全て登録免許税法別表第一に示されている(同第2条および同第9条も参照)。別表第一の第1号から第160号まで課税物件が列挙されており、それぞれについて課税標準および税率が定められている訳である。
登録免許税の性質については、登録免許税を手数料などと捉える見解と、手数料などではなく租税であると捉える見解がある。後者は、登録や登記による利益に担税力が見いだされると考えるのである。
●東京地判昭和38年11月28日行集14巻11号1936頁
事案:昭和35年4月7日に司法修習を終えたXは、同日、東京弁護士会経由で日本弁護士連合会に対し弁護士名簿への登録の請求を行った。Xは同日に弁護士名簿に登録されたが、日本弁護士会連合会に対して登録料5000円(同会則第23条)を納付したものの、当時の登録税法第7条が定める新規登録のための登録税3000円を納付しなかった。日本弁護士連合会は納付を求めたが、Xは登録税法第7条が無効であるなどと主張し、納付義務がないことの確認を求めて出訴した。その際に、Xは登録税について「税金というよりはむしろ受益者負担の原則に従う手数料としての性格しか有しないのが現状である」とも主張している。
判旨:東京地方裁判所は、Xの請求のうち、登録税法第7条の無効確認に係る部分を却下し、その他の部分を棄却した。
①「わが国の現行法制上、裁判所は、特定の者の間の具体的な法律関係についての争訟につき裁判するに際し、前提問題としてその適用が問題となる法令の有効無効を判断し、有効とみればその法令を適用し無効とみればその適用を拒否する権限を有しまたそうすべき職責を有するが、それが直接個人の具体的な権利義務に影響を与えない限り、法令自体の効力を裁判の対象とすることは許されないと解すべきである。(中略)登録税法第7条は、単に所定の登録の請求をする者に登録税を納付すべき義務を定めただけであるから、同条が直接原告の具体的な権利義務に影響を与えるものでないことは明白であり、しかも原告は登録税を納付することなくすでに弁護士名簿に登録されたというのであるから、もし追徴措置がとられる虞があれば本件におけるように登録税法第7条の無効を前提とする登録税納付義務の不存在確認の訴を提起し、またもし将来具体的に徴収処分がなされたときまたは原告が登録申請等具体的な申請をした場合に登録税不納付を理由に却下されるようなことがあつたときは、これらの処分に対する抗告訴訟を提起し、これらの訴訟において前提問題として登録税法第7条の無効を主張するという方法によれば足りるのである」。
②「登録税の廃止についてはもとより法律によることを必要とするところ、現行弁護士法の制定に伴い、この点につき何らの立法措置がとられていないのであるから、登録税法第7条の規定を死文化したものとみることができないことは明らかであり、従前国の行政機関が取り扱つてきた弁護士登録を日本弁護士連合会に行わせることとした現行弁護士法の施行と同時に、弁護士登録についての国の課税権は消滅したとか日本弁護士連合会へ委譲されたとかいうXの主張は根拠がない」。
③「登録税は登録を申請する者が登録をうけた場合それにより何らかの利益を享受するであろうことに着眼して国の財政収入の目的から課される一種の租税であつて単なる手数料ではなく、登録税法第7条の定める登録税債権が成立するためには、弁護士名簿への登録という事実が存在すれば足り、その登録が国の本来の行政機関によりなされたことは必要でないと解すべきであるから、弁護士登録が日本弁護士連合会によつて行われるようになつた今日でも、弁護士登録という事実の存する限り課税の根拠が失われたということはできない」。
④「登録税は、登録に関する書類に収入印紙を貼付して納付するのが原則であるが、一定の場合には現金をもつて納付することが許されている(登録税法第17条、第17条の2第2項、同法施行規則第1条、第2条参照)。そこで、登録申請者としては通常登録申請書に登録税額相当の収入印紙を貼付して申請すれば納付義務を履行したことになるのであり、また現金納付の場合にも一定の書式の納付書を当該登録税額に相当する現金に添えて最寄の日本銀行本店または代理店等に納付すればよいのである(登録税法施行規則第2条ノ規定ニ依ル登録税ノ納付ニ関スル件-昭和20・10・11大蔵省令第85号等参照)。したがつて、弁護士名簿登録についての登録税につき登録機関等の印紙消印の権限ないし義務についての法規が明確でないことがあるにしても、そうだからといつて徴収機関がないとか納付方法がないとかいうことはできない」。
〔Xは控訴したが、東京高判昭和39年3月19日税務訴訟資料38号178頁は控訴を棄却した。また、最一小判昭和42年8月24日税資48号368頁もXの上告を棄却した。〕
2.登録免許税の納税義務者
登録免許税法第3条前段は、登録免許税の納税義務者を「登記等を受ける者」とする。この「登記等を受ける者」が複数存在する場合には、それらの者が「連帯して登録免許税を納付する義務を負う」(同後段)。連帯納付義務を負う場合の例としては、AとBが建物を共有しており、両者が連名で保存登記をするとき(建物を新築した時などに行う)、所有権移転登記(登記権利者と登記義務者の両者が連帯納税義務を負う)をあげることができる。
一方、同第4条第1項は「国及び別表第二に掲げる者が自己のために受ける登記等については、登録免許税を課さない」とする。また、同第2項は「別表第三の第一欄に掲げる者が自己のために受けるそれぞれ同表の第三欄に掲げる登記等(同表の第四欄に財務省令で定める書類の添附があるものに限る旨の規定がある登記等にあつては、当該書類を添附して受けるものに限る。)については、登録免許税を課さない」とする。
さらに、やや特殊とも言えるが、同第6条第1項は「外国政府が当該外国の大使館、公使館又は領事館その他これらに準ずる施設(次項において「大使館等」という。)の敷地又は建物に関して受ける登記については、政令で定めるところにより、登録免許税を課さない」と定める。但し、同項の規定が適用されるのは「同項の外国が、その国において日本国の大使館等の敷地又は建物に関する登記若しくは登録又はこれらに準ずる行為について課する租税を免除する場合に限」られる(同第2項)。
3.登録免許税の課税物件
前述のように、登録免許税の課税物件は登録免許税法第2条および同別表第一に示される。但し、同第5条、同第7条に定められる事項については非課税である。また、租税特別措置法にも非課税や免税が定められている。
4.登録免許税の課税標準および税率
登録免許税の課税標準および税率は、原則として別表第一に定められるところによる(登録免許税法第9条)。なお、登録免許税の税額は、納税義務の成立と同時に確定する(自動確定方式。国税通則法第15条第3項第5号)。
また、登録免許税法第10条第1項は、別表第一に掲げられる不動産等の登記または登録の場合における課税標準としての価額を「当該登記又は登録の時における不動産等の価額」(不動産については「所有権以外の権利その他処分の制限」がないものとした場合の価額」)とする(同第2項以下も参照)。
税率については是非とも別表第一を参照していただきたいが、ここでは多くの特例のうち、若干のものを取り上げておく。
①2023(令和5)年3月31日までに土地の売買による所有権移転登記をする場合については税率が1000分の15に、所有権の信託登記については1000分の3に軽減される(租税特別措置法第72条第1項。仮登記については同第2項および同第3項を参照)。
②2022年3月31日までに新築された住宅を売買によって取得して所有権移転登記をする場合については、その住宅が耐火建築物または準耐火建築物であるなど一定の要件を充たす場合に限り、税率が1000分の3に軽減される(同第73条)。
③中古住宅についても②と同様の特例がある(同条)。
④2022(令和4)年3月31日までに新築された住宅の所有権保存登記については、その住宅が耐火建築物または準耐火建築物であるなど一定の要件を充たす場合に限り、税率が1000分の1.5に軽減される(租税特別措置法第72条の2)。また、2022年3月31日までに新築された特定認定長期優良住宅または認定低炭素系住宅の所有権保存登記についても、一定の要件を充たすことにより税率が1000分の1(一戸建ての特定認定長期優良住宅については1000分の2)に軽減される(特定認定長期優良住宅については同第74条、認定低炭素系住宅については同第74条の2)。
⑤2022年3月31日までに、宅地建物取引業者による改修工事が行われた中古住宅で一定の要件を充たすものを取得して所有権移転登記をする場合には、税率が1000分の1に軽減される(同第74条の3)。
ちなみに、登記簿の表題登記は別表第一に掲げられていないため、登録免許税が課せられない。
また、登録免許税法第15条は「別表第一に掲げる登記又は登録に係る課税標準の金額を計算する場合において、その全額が1000円に満たないときは、これを1000円とする」と定める。
一方、仮登記がなされている不動産について、その仮登記に基づいて「所有権の保存若しくは移転の登記、地上権、永小作権、賃借権若しくは採石権の設定、転貸若しくは移転の登記、信託の登記又は相続財産の分離の登記を受ける場合」の登録免許税の税率は、同第17条第1項に従い、別表第一第1号(12)イ〜ホに定められた税率欄に示された割合から第17条第1項表下欄に定められた割合を控除して得られた割合とされる。
さらに、同第4項は「地上権、永小作権、賃借権若しくは採石権の設定の登記がされている土地又は賃借権の設定の登記がされている建物について、その土地又は建物に係るこれらの権利の登記名義人がその土地又は建物の取得に伴いその所有権の移転の登記を受けるときは、当該登記に係る登録免許税の税率は、別表第一第1号(二)の税率欄に掲げる割合に100分の50を乗じて計算した割合とする」と定める。
5.登録免許税の納付など
登記等を受ける者は、原則として「当該登記等につき課されるべき登録免許税の額に相当する登録免許税を国に納付し、当該納付に係る領収証書を当該登記等の申請書にはり付けて当該登記等に係る登記官署等に提出しなければならない」(登録免許税法第21条)。但し「課されるべき登録免許税の額が3万円以下である場合その他政令で定める場合には、当該登録免許税の額に相当する金額の印紙を当該登記等の申請書にはり付けて登記官署等に提出することにより、国に納付することができる」(同第22条)。この他、納付については同第23条以下の規定を参照されたい。
登録免許税の納付の期限は、同第27条第1号により、原則として「当該登録免許税の納付の基因となる登記等を受ける時」である(同第2号に注意すること)。また、登記等について納付されるべき登録免許税の全部または一部が納付されていない事実を登記機関が知ったときは、遅滞なく、納税地を所轄する所轄税務署長に通知しなければならない(同第28条第1項。同第2項も参照)。また、登記機関の通知を受けた場合などに該当するのであれば、税務署長が登録免許税を徴収する(同第29条)。
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