ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

令和6年度予算編成大綱における地域公共交通の扱い

2024年01月12日 00時15分00秒 | 国際・政治

 2023年12月14日、自由民主党および公明党が令和6年度予算編成大綱をまとめ、公表しました。令和6年度税制改正大綱と同日ですので、ほぼ同時に公表したと考えてよいでしょう。

 昨年は、このブログで何度も取り上げたように、「2024年問題」を前に路線バスや鉄道の減便が相次いで発表され、実施されていきました。地域公共交通活性化再生法の改正法が公布・施行された年でもありましたが、活性化・再生どころか衰退、消滅の危機が深まった訳です。大阪府の金剛バスの全廃は象徴的な事件でしたが、それに続く事例がないとは思えません。

 そのような中で、令和6年度予算編成大綱は地域公共交通にどれだけ目を向けているかが気になります。元々、予算編成大綱は税制改正大綱ほど頁数も多くなく、内容もそれほど詳細ではありません。従って、地域公共交通に関する記述についてもあまり期待はできませんが、とりあえず引用の上で紹介しておきましょう。なお、PDFファイルを参照した上でAcrobat Proの簡易検索機能を利用したことを記しておきます。

 「インバウンドを含む地方への人の流れの強化、地方活性化に向けた基盤づくり、地域公共交通の維持・確保などによって地方創生を推進するとともに、『デジタル田園都市国家構想総合戦略』に基づき、デジタル技術の活用によって、『全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会』の実現を目指す。

 更に、人口減少の下でも、従来以上に質の高い公共サービスを効率的に提供するため、アナログを前提とした行財政の仕組みを全面的に改革する『デジタル行財政改革』を起動・推進し、利用者の視点はもちろん、サービス提供者側の視点も織り込みながら、教育、交通、介護、子育て・児童福祉等の分野において、デジタル技術の社会実装や制度・規制改革を進める。」(2頁)

 総論あるいは導入部の記述であるため、総花的で具体像は全く見えてきませんが、「デジタル田園都市国家構想総合戦略」を参照し、さらに地方創生の政策内容を見よ、ということなのでしょう。地方創生が一体何であるのかという問題がありますし、上手く進んでいたのであれば地域公共交通の衰退は食い止められた可能性が高いのですが、地方創生の看板を外すことはないということになります。

 地域公共交通については、次の箇所においても述べられています。16頁から17頁にかけての部分です。

 「〈個性をいかした地方活性化と分散型国づくり〉

 デジタル技術の活用等によって、地域の個性をいかした地方活性化と、東京一極集中型から脱した分散型国づくりを推進する。

 具体的には、バリアフリー化の推進、多様な暮らし方に資する二地域居住等の促進、空き家・所有者不明土地等の活用、奄美・小笠原・離島・半島・豪雪地帯等条件降り地域の振興、スマートシティの社会実装、コンパクトでゆとりとにぎわいのあるまちづくり、多様な関係者との共創による地域公共交通ネットワークの再構築等の交通のリ・デザイン、都市再生等に取り組む。加えて子育てにやさしい住まい環境整備など『こどもまんなかまちづくり』を推進する。」

 令和6年度予算に盛り込むべき内容の基本を示すに過ぎないという性格の文書であるため、やはり具体性に乏しい内容ではありますが、「分散型国づくり」の一環とされていることはわかります。ただ、スマートシティと地域公共交通ネットワークとの関係など、並立する様々な事項をどのようにまとめていくのかが問われるところでしょう。


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