英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2019王位戦挑戦者決定戦 羽生九段ー木村九段 その1

2019-06-06 23:07:20 | 将棋
一昨日、何とか王位戦白組リーグ・プレーオフ(1位決定戦)で永瀬王位を破り、王位戦挑戦者決定戦に進出した羽生九段でしたが……
木村九段に敗れて、無冠返上の機会は遠のいてしまいました。木村九段には竜王戦に続いての敗局。A級順位戦でお礼をするのが礼儀というものでしょう。


木村九段とはこれまでまで32勝16敗、つまり3局指せば2勝するという対戦成績だが、直近10局では5勝5敗の互角。2016年の王位戦でも4勝3敗の激闘を繰り広げている。
「形勢はともかく、いつも中盤では羽生九段が勝つのが大変な将棋に誘導されている」というイメージがある。羽生九段が軽視していた仕掛けを踏み込まれ、主導権を握られてしまうのである。
それでも何とか踏みとどまり、終盤、羽生九段が競り勝つことも多いが、木村九段の強気の受けを喫し、受け潰されてしまうことも多い。



 将棋は横歩取り戦。2010年ごろ流行し、その後は細々と年に数局指される程度で、いちばん新しい前例は2017年8月の▲羽生善治三冠-△松尾歩八段戦(肩書は対局当時)【中継サイトの棋譜解説の情報】


 第1図の7手前の△8二歩で前例を離れ、未知の局面になっている。
 素人目には、△7四銀から▲7六飛に△9四角と打たれ、飛車が逃げると桂頭に△7六歩と打たれる手がちらつくが、解説には「▲9六歩でその筋を牽制している」とある。
 しかし、やはり桂頭の弱点、飛車の不安定さ、自玉の2、3筋の壁形など先手の苦労が多そうな気がして仕方がなかった……


 第1図以下、△8四飛▲9五角△7四飛▲同飛△同銀と理解が難しい手順の後、▲7二歩の手裏剣を飛ばし6一の金を動かし▲5一飛を狙い、△7三歩を強要し、△7六歩の筋を消して、局面の均衡を保ったのは流石。


 しかし、数手進んで第3図。△6六歩が嫌味な嫌味な絡みの歩。▲6六同歩は角で王手されて困る。
 どうするのかと思ったが、▲5五角と一旦6六の地点をカバーしておき、△7五銀の援軍に対し、▲6五飛の返し技(第4図)。


 木村九段は△6七歩成▲同銀を決めた後、△7四歩と銀に紐をつけ、力を貯める。
 いったん緩め、さらに“角を成ってきても構わない”という強気な手だ。
 先手も角を成り込むと6六の角の利きが消えて自玉の危険度が増すので、躊躇が働くが、羽生九段も強気に▲8二角成を決行。
 先手も△6六歩で危険だが、後手玉も8二の馬、7二の歩、6五の飛に後手玉のこめかみ付近に狙いを定められ、危険度が増している。
 ▲8二角成以下、△7六銀、▲6七歩で第5図。
 

 ▲6七歩は飛車より6七の地点の死守を優先させた手。
 木村九段も“飛車よりも6七の地点が急所”と△9四角と角の狙撃手を配置。(△6五銀と飛車を取ると▲6五同桂が後手玉頭の脅威となる)
 羽生九段、▲6一飛成と切り飛ばして得た金を惜しみなく▲7八金打(▲6八金打もあるかも)と投入。飛車を2枚手持ちにさせても、敵駒を侵入させなければ▲7一歩成からぼちぼち攻めれば良いというのだろう。
 そこで、ともかく、△5二玉と危険地帯から後手玉を遠ざけたのが第6図。


 おそらく、第6図は先手の羽生九段に少し利のある局面であろう。
 しかし、手駒を加えた▲8一馬が強気過ぎた
 △6一飛が8一の馬取りと先手玉の6筋に狙いを付けた絶好の一着となった。


 もちろん、飛車打ちは羽生九段も織り込み済みだったとは思われ、△6一飛に▲7一歩成△6六飛に堂々と▲6六同歩と取り、後手玉に迫るべく飛車を手にする。 
 しかし、ドカーンと△6七銀打と銀をぶち込まれてしまう……大丈夫なのか?
 (△6七銀打では△7七銀成りと桂を取りながらの開き王手も怖い。以下▲7六歩と中合し△同角とさせ、後手陣への角の利きを無くしておき▲6七桂で勝負)


 (第6図での先手の最善手については「その2」で補足する予定です)
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