英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2019王位戦挑戦者決定戦 羽生九段ー木村九段 その2「第6図の周辺(その1の補足)」

2019-06-09 21:22:26 | 将棋
前記事(その1)の補足です。

 
 第6図は、羽生九段が飛車を切って得た金を7八に打ち、木村九段も△5二玉と玉型の整備を強いられた局面。木村九段の強襲を羽生九段が巧みに受け止めた感がある。
 控室も「羽生九段良し」の雰囲気だったが、金打ちの補強をしたものの先手玉には嫌味が残っており、手駒も歩のみ、後手陣にいる馬と歩も後手玉との若干の距離があり、先手の指し手が非常に難しい。
 羽生九段の局後の感想も「△5二玉と上がられて、やっぱりちょっと苦しいのかなあ?」

 中継棋譜の解説では、(第6図から)
▲9一馬は、△6七銀成▲同金△5九飛▲同玉△6七角成(変化図1)と攻め込まれたときに先手の受けが難しいことが検討で確認された。(1)▲4八金は△8九飛(変化図1-A1)で、以下▲6八銀には△6九金(変化図1-A2)▲同玉△7九飛成▲同銀△6八歩▲同銀△7八金▲5九玉△6八金までで先手玉が詰む。(2)▲5八香にも△8九飛(変化図1-B1)が利き、以下▲6八銀(▲8九同金は△6八金から詰み)に△7八金(変化図1-B2)で後手勝ち。木村のほうはこれらの変化は対局中に読みきれていた様子だった」とある。


 
(1)変化図1で▲4八金の受けには、△8九飛(変化図1-A1)が鮮烈な一手!

 ▲6八銀と踏ん張って受けても△6九金(変化図1-A2)が巧手!
 以下▲6九同玉△7九飛成▲同銀△6八歩▲同銀△7八金▲5九玉△6八金で詰んでしまう。(▲6九同玉で▲6九同金は△同龍で簡単な詰み)

(2)変化図1で▲5八香の受けにも、△8九飛(変化図1-B1)が利く。

 以下▲6八銀(▲8九同金は△6八金~△5八金~△4九で詰み)に△7八金(変化図1-B2)で後手勝ち。△7八金では(1)と同様に△6九金と打っても良いようだが以下▲6九同玉△7九飛成▲同銀△6八歩に▲5九玉で失敗。

 では、第6図より▲9一馬は、△6七銀成▲同金△5九飛▲同玉△6七角成の変化図1は後手が勝ちなのかと言うと、▲4九銀(変化図1-C1)と受ける手があり、難解ながらも先手も指せるようだ。
(3)変化図1で▲4九銀の受け

 ▲4九銀(変化図1-C1)以下、△6六馬▲8一馬△7七馬が一例。


 さて、第6図では▲7一歩成が自然だ。
 この手に対しても、まず、本譜の▲8一馬に△6一飛としたのと同様な狙いの△6二飛(変化図2-A)の飛車打ちが考えられる

 しかし、この場合は▲5五馬(変化図2-A2)と引けるので先手が良いようだ。

 では、先程の変化図1の△6七銀成▲同金△5九飛▲同玉△6七角成(変化図2-B)は、どうだろうか?

 以下▲4八金の受けに対し、やはり同様に△8九飛を放つと……

 今度は後手陣にある先手の攻め駒の位置(状態)が違うので、▲6三銀(変化図2-B2)の切り返しが鮮烈!

 △6三同玉は▲7二馬以下の詰み。
 玉をかわす手には飛車で王手していくと、4一に金合いを強要でき、それから▲8九金と飛車を取れば先手の勝ちとなる。
 ただし、変化図2-Bの△6七角成に▲4八金と受けた時、△8九飛の一手ではなく、他の手段も考えられるが、後手の指し手に応じて▲6三銀や▲7二飛が有効になるので、▲7一歩成に対して△6七銀成~△5九飛~△6七角成と切り込む手は無理なようだ
ちなみに、先の変化▲9一馬の時は、▲6三銀は△同玉でうまくいかない。

 
 第6図から▲7一歩成とした局面に戻って、△8七銀成(変化図2-C)▲同金△8四飛(変化図2-C1)も考えられる。

 これに対しては、いろいろ対応が考えられるが、一例として▲8五歩と8二の馬を献上してしまう手が面白い。
 ▲8五歩以下△8二飛▲9五歩△8三角▲8四歩△9二角▲8三銀(変化図2-C2)△6二飛▲9二銀成△同香▲8一とでバランスは取れていると思う。



 という訳で、第6図では先手が若干有利だが、先手の方が何かと神経を使わないといけない局面(変化)が多く、勝つのは大変かもしれない。

「その3」へ続く
コメント
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