「第1回女子将棋YAMADAチャレンジ杯レポート」 【写真・文】渡辺大輔氏
今年度から始まった棋戦で、若手女流棋士15名(開催年の4月1日時点で女流2級以上女流初段以下の女流棋士のうち、新しい順に15名)とアマチュア選抜選手1名によるトーナメント。
事前予選で8名に絞り(16名→8名なので、実質1回戦)、8名によるトーナメントを1日で消化するため、持ち時間10分、切れたら30秒の秒読みという早指し棋戦。
全7局のポイント局面付レポートなので、観戦レポートの渡辺氏は大変だったと思われる(しかも写真撮影も)。
臨場感もあり、的確なワンポイント解説で、面白かった。
しかし、1箇所、変な解説があった。
1回戦(準々決勝)、▲竹俣女流1級-△熊倉女流初段
記事をそのまま引用するが、第1図、出来れば一度、自力で局面を分析してほしい。
『▲竹俣紅女流1級-△熊倉柴野女流初段戦は、矢倉模様から竹俣が左銀を中央に繰り出す積極的な相居飛車の力戦型を採用した。
第1図は金頭を叩いたところ。ここに至るまでにも形勢は揺れ動いており、30秒の秒読みならではのスリリングな将棋が展開されている。

▲4四歩は詰めろだが、馬筋を止めてしまったため、先手玉に△7九飛成以下の詰みが生じてしまった。手順の一例は△7九飛成▲同玉△6八金▲8八玉△7八金▲同玉△8七歩成▲同玉△8六銀▲同玉△7六金▲9五玉△9四歩▲8四玉△9三銀▲8三玉△8二飛まで。
しかし秒読みの中で読みきるのは容易ではなく、熊倉の指し手は△8七歩成。これでは詰まず、▲同金で逆に先手玉は妙に寄らない形になってしまった。
この後も白熱の終盤戦が続いたが、最後は詰めろ竜取りをかけた竹俣が制勝した。お互い最善手の連続とはいかなかったかもしれないが、手に汗握る戦いは観戦したファンも十分楽しめたのではないだろうか。』
大筋は間違っておらず、ポイントで取り上げた局面も妥当で、一局の流れも簡潔にまとめられている。
まず、図の▲4四歩は後手玉に迫る厳しい一着である。しかし、レポートの指摘通り、馬筋を止めた危険な手であった。
第1図でまず目に付くのは、△8七歩成(実戦の熊倉初段の指し手)。しかし、▲8七同金(第2図)で却って寄らない形になってしまった。8七の金が玉が9七に逃げた時の強力なボディガードになっている。

また、第1図では△7九銀も考えられるが、▲9七玉とかわされると、後手の攻め駒が置き去りになってしまう。
ここは△7九飛成(変化図1)が寄せの筋。

▲7九同銀は△8七歩成以下簡単に詰むので、▲7九同玉と応じる。
玉を7九に呼んでおいて△6八金が継続手。以下▲8八玉△7八金▲同玉△8七歩成▲同玉で変化図2。(▲8八玉で▲6八同金、また△8七歩成の前に△6八成銀▲8八玉を利かす変化もあるが、変化図2と大差はない)

問題は、この局面。レポートでは△8六銀と鮮烈な捨て駒!

以下、▲8六同玉△7六金▲9五玉△9四歩▲8四玉△9三銀▲8三玉△8二飛までの詰み。

確かに、この手順が唯一の詰みなら、「秒読みの中で読みきるのは容易ではなく」と評するのも頷けるが、変化図2では平凡に△7六金で簡単な詰みがある。

以下、どう逃げても並べ詰み。
不可思議な解説手順であるが、おそらく、詰手順の検証でコンピュータソフトを使用したのではないだろうか?
7局すべてに実況レポートは大変であるし、検証の為ソフトを使うことは当然の作業だ。
若干、女流棋士に好意的過ぎる(甘い)レポートであったが、内容は面白かっただけに、残念な詰めの甘さであった。
ちなみに、△7九飛成(変化図1)に対しては▲9七玉(変化図1-2)が一番しぶとい手。

この手には、△8七歩成▲同金(変化図1-3)と進める。

ここで△8六銀が巧手(変化図1-4)

以下、①▲8六同金△8八銀▲8七玉△7七金(変化図1-5)以下詰み。
②▲8六同玉には△7六金(変化図1-6)▲9五玉△9四歩▲8四玉△9三銀▲8三玉△8二飛(変化図1-7)までの詰み。(細かい変化は省略)
今年度から始まった棋戦で、若手女流棋士15名(開催年の4月1日時点で女流2級以上女流初段以下の女流棋士のうち、新しい順に15名)とアマチュア選抜選手1名によるトーナメント。
事前予選で8名に絞り(16名→8名なので、実質1回戦)、8名によるトーナメントを1日で消化するため、持ち時間10分、切れたら30秒の秒読みという早指し棋戦。
全7局のポイント局面付レポートなので、観戦レポートの渡辺氏は大変だったと思われる(しかも写真撮影も)。
臨場感もあり、的確なワンポイント解説で、面白かった。
しかし、1箇所、変な解説があった。
1回戦(準々決勝)、▲竹俣女流1級-△熊倉女流初段
記事をそのまま引用するが、第1図、出来れば一度、自力で局面を分析してほしい。
『▲竹俣紅女流1級-△熊倉柴野女流初段戦は、矢倉模様から竹俣が左銀を中央に繰り出す積極的な相居飛車の力戦型を採用した。
第1図は金頭を叩いたところ。ここに至るまでにも形勢は揺れ動いており、30秒の秒読みならではのスリリングな将棋が展開されている。

▲4四歩は詰めろだが、馬筋を止めてしまったため、先手玉に△7九飛成以下の詰みが生じてしまった。手順の一例は△7九飛成▲同玉△6八金▲8八玉△7八金▲同玉△8七歩成▲同玉△8六銀▲同玉△7六金▲9五玉△9四歩▲8四玉△9三銀▲8三玉△8二飛まで。
しかし秒読みの中で読みきるのは容易ではなく、熊倉の指し手は△8七歩成。これでは詰まず、▲同金で逆に先手玉は妙に寄らない形になってしまった。
この後も白熱の終盤戦が続いたが、最後は詰めろ竜取りをかけた竹俣が制勝した。お互い最善手の連続とはいかなかったかもしれないが、手に汗握る戦いは観戦したファンも十分楽しめたのではないだろうか。』
大筋は間違っておらず、ポイントで取り上げた局面も妥当で、一局の流れも簡潔にまとめられている。
まず、図の▲4四歩は後手玉に迫る厳しい一着である。しかし、レポートの指摘通り、馬筋を止めた危険な手であった。
第1図でまず目に付くのは、△8七歩成(実戦の熊倉初段の指し手)。しかし、▲8七同金(第2図)で却って寄らない形になってしまった。8七の金が玉が9七に逃げた時の強力なボディガードになっている。

また、第1図では△7九銀も考えられるが、▲9七玉とかわされると、後手の攻め駒が置き去りになってしまう。
ここは△7九飛成(変化図1)が寄せの筋。

▲7九同銀は△8七歩成以下簡単に詰むので、▲7九同玉と応じる。
玉を7九に呼んでおいて△6八金が継続手。以下▲8八玉△7八金▲同玉△8七歩成▲同玉で変化図2。(▲8八玉で▲6八同金、また△8七歩成の前に△6八成銀▲8八玉を利かす変化もあるが、変化図2と大差はない)

問題は、この局面。レポートでは△8六銀と鮮烈な捨て駒!

以下、▲8六同玉△7六金▲9五玉△9四歩▲8四玉△9三銀▲8三玉△8二飛までの詰み。

確かに、この手順が唯一の詰みなら、「秒読みの中で読みきるのは容易ではなく」と評するのも頷けるが、変化図2では平凡に△7六金で簡単な詰みがある。

以下、どう逃げても並べ詰み。
不可思議な解説手順であるが、おそらく、詰手順の検証でコンピュータソフトを使用したのではないだろうか?
7局すべてに実況レポートは大変であるし、検証の為ソフトを使うことは当然の作業だ。
若干、女流棋士に好意的過ぎる(甘い)レポートであったが、内容は面白かっただけに、残念な詰めの甘さであった。
ちなみに、△7九飛成(変化図1)に対しては▲9七玉(変化図1-2)が一番しぶとい手。


この手には、△8七歩成▲同金(変化図1-3)と進める。

ここで△8六銀が巧手(変化図1-4)

以下、①▲8六同金△8八銀▲8七玉△7七金(変化図1-5)以下詰み。
②▲8六同玉には△7六金(変化図1-6)▲9五玉△9四歩▲8四玉△9三銀▲8三玉△8二飛(変化図1-7)までの詰み。(細かい変化は省略)



いつも将棋の記事を楽しみにしています。王位戦の記事にコメントしようか
とも思ったのですが、やはり羽生さんは強かったということですね。また、
ヤマダ・チャレンジ杯が記事になるとは思いもよらず、色々な変化を考えて
しまいました。確かに、変化図5の△7六金以下、簡単な詰みですね。
さすが、いつも鋭い英さんと感心しました。
この棋戦では、LPSAの渡部初段が優勝されたのですが、数年前に連盟
といろいろ問題があり、その渦中の人であった渡部さんが優勝したのは、
何か灌漑深いものがあると感じました。今は両団体も問題なくやっている
ようで、良い方向に進み良かったと思います。
竜王戦は、糸谷竜王が負けてしまい、1勝2敗となり、挑戦者が奪取
する可能性が高くなってきました。個人的には3勝3敗とタイになれば、
面白いのですが・・・。それと、里見三段が奨励会でついに初勝利!
いろいろありますが、あまり無理しないでくださいね。
>いつも将棋の記事を楽しみにしています
うれしいお言葉です。私も、Stanleyさんのコメント、励みにしています。ありがとうございます。
>いつも鋭い英さんと感心しました
今回は、ミスを見つけて、鬼の首を取ったかのような記事です。
一応、根底には、女流棋士への叱咤激励の意があります。
一昔前に比べて、女流棋士のレベルは上がっています。それも、トップだけではなく、全体的な底上げを感じます。
ただ、それでも、不満を感じる将棋は多いので、今回の渡辺大輔氏の記事は甘いと感じました。
もちろん、もし、私が氏の立場でレポートを書くことになったら、大甘なモノになると思います(笑)。
>その渦中の人であった渡部さんが優勝したのは、
何か灌漑深いものがあると感じました。
ええ、良かったです。
彼女の成績は、通算が36勝26敗、今年度が11勝10敗で、もう少し勝ってもいいように思います。今年度は、女流名人リーグ3勝5敗も響いている気がしますが、甲斐、中村、香川、上田の実力者から1勝も上げられなかったのは残念です。最終局の清水戦は頑張っていただきたいです。
竜王戦は二人の読みがかみ合わないようです。その中で、2勝1敗と勝ち星が先行した渡辺棋王が星以上に優位に立ったような気がします。
里見さんの1勝は快挙ですが、里見さんの女流棋戦での勝ちっぷり(今期19勝1敗)を見ると、当然のように思います。今期は6勝はできる。さらに、来期は勝ち越し…。女流と二刀流は大変ですが、体調さえ崩さなければ、プラスになると思います。