英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

剛と豪……2016女流王座戦2次予選 清水市代女流六段 × 香川愛生女流三段 「その1」

2016-08-03 19:25:47 | 将棋
「剛」……①力が強い。気が強い。ひるまない。
      ②かたい。
「豪」……①並はずれている。強く勢いのさかんなこと。
      ②才知・力量などのすぐれた人。
      ③おごり高ぶる。


 両者とも「強い」という意味が基底にある。
 ただ、前者は「芯が強い」、後者は「勢いが強い」というイメージがある。
 役者名だと「加藤剛」「若林豪」が思い浮かぶ。

「豪」(こちらを先に述べた方が「剛」を語りやすい)
 女流棋士(奨励会員を含む)の中で“攻め将棋”と言えば、西山奨励会三段、香川愛生女流三段、中村真梨花女流三段が浮かぶ。
 西山三段は「大砲(破壊する)」、香川女流三段は「鎖鎌(ぶった斬る)」、中村三段は「速射砲(突き出す)」と言ったところだ。
 本局登場の香川女流三段の鎖鎌のイメージについてもう少し言うと、いきなり鎖鎌の分銅が飛んできて、それを受けるのに気を取られると、間合いをいきなり詰めてきて鎌で一刀両断されてしまう……


「剛」
 指し手に意志を感じさせる。
 佐藤康光九段、郷田真隆王将、清水女流六段がその代表格。




 ゴキゲン中飛車・銀対抗型から、後手の香川女流三段が穴熊に囲う動きを見せたのに対し、先手の清水女流六段が▲9七角と趣向。角出で後手の飛車と左金の動きをけん制する。
 さらに、△9四歩には▲8八銀。△9五歩と来るなら▲同歩△同香▲8六角で、9筋での競り合いは“望むところ”なのだろう。

 その後は、穴熊を完成させる香川女流三段に対し、両桂を跳ね全軍総動員。“鶴翼の陣”を思わせる。
 鶴翼の陣は本来、敵が攻撃を仕掛けてきたらその付近にいる戦力が素早く集結し撃退する防御の陣形。清水女流は攻勢の構え見せて、≪来るなら来い≫という心づもりなのかもしれない。

 対する香川女流三段も強気。

 先手の飛先を受けていた3三の角を4二に引いて角交換を迫る。
 ▲4二同角成△同金となり、2筋ががら空きとなった。
 以下▲2四歩△同歩▲同飛に△3二金で、一応、突破はされないが、角を手持ちにされた上、飛先交換をされて後手を引くのは不安だが、玉の堅さに差があり、局面が動くことは歓迎なのだろう。
実際、本来なら当たりを避け飛車を2八に引きたいが、△2七歩(▲同飛は△3八角がある)を利かされてしまう。
 そこで、▲6八金上と玉型を整備。百戦錬磨の清水女流六段だ。私なら▲9五歩△同歩▲9四歩(△同香なら▲8五角)と取りあえず嫌味をつけておくところだ。

 ▲6八金上以下、△3五歩▲同歩△3六歩▲2五桂△5六歩▲同歩△3七歩成▲同銀△4五銀と、手順を尽くして4五に銀を進出させて中央突破を狙う。

 先手としては、6八に金を締まり金銀3枚が玉を守っているとはいえ、後手の穴熊と比べると心持たない玉型。更に、銀や桂は2、3筋に誘い出された状況では歩得とは言え、先手が勝つのは大変に思える。
 相手が歩切れなので、▲5七金上と徹底防戦したいが、△1二角と数を足され、▲6五角と対抗しても△2三金(△6四歩は▲同飛で大丈夫)で押さえ込むことは出来ない。
 また、▲4八銀と働きの弱い3七の銀を引き付けるのが本筋の指し方ではあるが、これとて、本格的な戦いは避けられず、先手の望む戦局にはなりそうもない。
 そこで、清水女流六段は▲9五歩と後手の穴熊の嫌味を攻める。実践的な手だ。


 しかし、香川女流三段の次の一手を見て、思わず唸ってしまった。

「その2」に続く
コメント (6)
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