■63■
「中沢カズヒロが東京でバンドやっててCD出してるらしいで」
高校の同級生、ショウジローが電話口で言いました。
東京で挫折した僕に的確なアドバイスをくれた彼、
ショウジローは神奈川の大学を出て地元高知で高校教員になっていました。
上田「へぇ~、スゴイね~」
「バンド名は?」
ショウジロー「【ザ・チャン】!」
上田「チャン?・・オモロイ名前やね~」
「しかし、どっかで聴いた事あるような・・・」
「野人」のような同級生ナカザワがCDなんか出すとは・・
6月梅雨入りした頃でした。
いつもBGMにしていた「FM802」で、DJヒロ寺平が軽快に曲を紹介しました。
「今月のヘビーローテーションはこの曲!」
「ザ・チャン~今日の雨はいい雨だ~!」
「♪~~」
上田「ん?、今、チャンって言うた?」
藤「チャン、言うたで」
上田「何ぃ~!?」
FMから流れてくるその軽快な楽曲に耳を疑いました。
それから間もなくして、
ライブハウス「WO’HALL」の津島支配人がCUTに訪れました。
津島「今度FM802の公開録音ライブがあるけど、来る?」
「ザ・チャンっていってたなぁ」
上田「行きます!行きます!」
高校の同級生でヘアテックの顧客でもあった
「劇団赤鬼」のシモムラ(あだ名ヘモ)を誘って観に行きました。
「WO’HALL」入口でPASSをもらい、少し緊張しながら足を進めました。
もう既にライブは始まっていて、しかも大盛況でした。
舞台上ではやはり間違いなく、「野人中沢」がベースを弾いていました。
上田「やっぱり中沢やな、アレ」
ヘモ「間違いないワ!スゲ~~」
ライブが終了して司会DJとボーカルのトークに移り、他のメンバーが舞台裏にハケました。
ヘモと一緒に急いで裏に回りこみました。
スタッフの一人をつかまえました。
上田「チャンのナカザワ君を呼んできてもらえませんか?」
スタッフ「関係者ですか?」(疑い)
上田「そうです!」(ウソ)
キョロキョロしながら出てきたのは、
間違いなく高校時代の同級生「野人中沢」でした。
中沢「おーっ!!どうしてこんなとこにいるの~!!」
中沢の第一声は高校時代そのままの地声のデカさ・・
上田「お前こそ何で~?」
ミュージシャン・劇団員・散髪屋、
異色の3人は舞台裏通路で久しぶりの再会にハシャギました。
スタッフ「公開録音中なのでお静かに!!」(キレかけ)
何度か叱られた後、場所を玄関ロビーに移しました。
中沢「で、ヘモは何してるの?」
ヘモ「劇団やってんねん」
上田「コイツの劇団赤鬼、今結構売れてるんよ~」
「なかなかスゴイで」
ヘモ「中沢のほうがスゴイわ、ビックリした!」
中沢「まさか高校の同級生に会えるとは思わなかったよ・・」
上田「人生オモロすぎるな~」
しばらくの間、楽しいひとときを過ごしました。
そして後日、
久しぶりの男がお店を訪れました。
「上田ぁ~~、元気してたかぁ~?」
ヨシモトの漫才師、ショウショウの羽田昇平です。
上田「うぉーっ、健ちゃんやん!久しぶりやな~~」
昇平「上田、お前出世したな~、難波で店長か!?」
上田「健ちゃんこそ、なんば花月に出てるやろ!」
「そうそう、前にTVでもチラッと見たで!」
昇平「チラッとっていうなーー!」
「それより腹減ったから食いに行こうや」
上田「おう、行こ行こ」
近くのトンカツ屋に連れて行きました。
上田「健ちゃんトンカツ好きやったやろ?」
昇平「よう覚えとるな・・、中津の洋食屋、まだやってるかな~」
久しぶりの再会、
そしてお互いに今現在も頑張っている事が嬉しく思い、長い時間飲み食いしました。
昇平「上田!まだ付き合え!」
「次はオレに任せろ!スナックや!いきつけやから」
千日前の雑居ビル3階の小さなスナックに連れて行かれました。
健ちゃんが扉を開けた瞬間、
店内のお客さんから大きな拍手と歓声があがりました。
「昇平ーーッ」「昇平ーーッ」
このスナックでは随分と人気者です。
健ちゃんはステージに上がり、モノマネや上手な歌を披露しました。
お客「おまえも芸人やろ!?何かやれ!」
上田「芸人ちゃいますワ!ムリムリ」
健ちゃんはひと通りのネタをやり終え、カウンターに戻ってきました。
上田「そうそう、福嶋が八幡浜で店出したワ」
「思ったよりしっかりしてて、頑張ってんで~」
昇平「知ってるワ、オフクロさんがやってる『スナックこけし』」
「30周年イベントとか言うてな、漫才で呼ばれたワ」
「行ってビックリ、八幡浜市民会館満員御礼や!」
「アイツのオカン、何モンやねん!」
上田「たしか菅原都々子のお弟子さんって言うてたな~」
「ほら、『月がとっても青いから~~』の・・」
昇平「オフクロさん、美容院にスナック・・」
「女手ひとつでアイツを育てて・・」
「オフクロさん大事にせぇ!って言うてきたったワ」
スナックは健ちゃんの「ツケ払い」でした。
外に出ると通行人から声を掛けられます。
通行人「昇平や!」
通行人「あれ昇平ちゃう?」
やはり、なんば花月の舞台に立っている健ちゃんは有名人でした。
通行人「横のヤツ誰や?」
通行人「あの横のヤツは相方?」
チラホラ聞こえてくる声はコワイものでした。
健ちゃんが「一休さ~~~んっ!!」と仮想の馬で走りました。
通行人「お前も何かやれーー!」
上田「できるかーーー!!」
ミナミの暗く淀んだ空からは雨が落ちてきました。
みんなそれぞれ頑張っている。
「今日の雨はいい雨だ」
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ザ・チャン「今日の雨はいい雨だ」
ショウショウ昇平と・・
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