エルソル飛脚ブログ ~Run 4 Fun~

四万十川周辺をチョロチョロしている飛脚の記録です。

大阪物語2020 「あしあと」(2)

2020年04月02日 | エルソル大阪物語~番外編

~2~

高島屋は難波の玄関口。

高島屋は南へ向かう南海電車に直結している。

南海電車はもうモスグリーンでなくなったのだろうか・・

急行で15分、羽衣駅に到着。

懐かしの羽衣商店街。

この横断歩道を渡ると、私が最初に住んだ文化住宅はすぐそこ。

あった!まだあった!

外付けの階段を揺れながら上る。

今回ここを訪ねた目的は、単に懐かしむだけではなくて人に会うため。

西岡おばさんは元気にされているだろうか・・

2階の真ん中の部屋は私が住んでいた部屋、その向こうが西岡さん夫婦・・

ベランダに鉢植えが無くなっている・・

どころか、何処にも人の気配がない。

ダメもとで玄関のブザーを鳴らしてみる。

部屋の中で無機質に音が響いている。

いつまでも昔のままというわけにいかないことぐらい承知である。

朝から目にしたこれまでの光景は、それだけの年月の重みを自分に知らせている。

意味もなくもう一度ブザーを鳴らす。

すると、階段下から中年女性が声をあげた。

「何かその建物に御用ですかー!?」

ショートヘアを茶髪に染めた女性の強めの口調から、自分が不審者だと思われていると自覚する。

マスクを外して堂々と答える、

「こちらに住んでいた西岡さんに会いにきたのですが・・」

知り合いなのか、女性の表情はすぐに緩んだ。

「あ~西岡さんな~、半年ぐらい前に引っ越ししはったよ」

「そうですか、それは残念、高知から会いにきたのですが・・」

「えーーっ、高知!?それはエライこっちゃー!」

両手を広げるオーバーアクションはいかにも大阪らしい。

「ここはな、家主が取り壊す言うて、西岡さん出て行かなアカンなってんよ」

「まあな~、築51年らしいからなあ~、しゃーないわ」

「西岡さんな、近くに居てるよ~、案内しよか~、ちょっと待ってな」

私の返事を待つより先に女性は急いで近くの家に潜り込んだ。

その家はどうやら美容院らしく、降ろされたロールカーテンの隙間からシャンプーブースが見えた。

「お待たせ、さあ行きましょか~」

「あの、美容師さんですか?私、理容師です(笑)」

「えーーっ、そうかいなー!なるほど!月曜日か、休みやもんな~」

女性は自転車を押しながら一緒に歩いてくれる。

人懐っこさは、やはり客商売からくるもので同業者に通じる雰囲気が感じられた。

「西岡さんええ人やで~、今でも猫のエサやりに時々顔出してはるわ~」

国道沿いをしばらく歩き、浜寺公園側に曲がった団地に案内された。

「ここやで、居たらいいんやけどな~」

女性は団地の階段を上り、インターホンを鳴らした。

「は~い」

「西岡さーん!彼氏連れて来はったでーっ!」

重たそうな鉄の扉が開くと懐かしい顔が現れた。

「西岡さん!お久しぶりです!またまた高知から出てきました!」

「あ!上田君やな!どないしたん急に!」

「いやな、アタシが連れて来てん!、アパート訪ねてはってな、高知からっていうからな」

「ほなアタシは帰るわ!どうぞゆっくしていってください(笑)」

「ありがとうございました!」

深々と頭を下げた。これも人の縁だ。

「上田君、まあ入っていき!」

奥の部屋で布団に寝たままのご主人がこちらに顔を向けた。

「アンタ!あの、ホラ、前に隣に住んどった高知の兄ちゃんやで!」

「居たやろ~、散髪学校の可愛らしい兄ちゃん!」

「あ、アンタの母さん一回来たでな、ごっつい綺麗な人やったわ~」

西岡さんの足元に小さな犬がまとわりついた。

「この犬な、拾ってん、毛ぇも抜けて弱ってってんで~、眼ぇも片方潰れててんで~」

「最初はえらい吠えてな~、人間不信ってやつやな~、あ、コーヒー飲んでいき!インスタントやけどかまへんか?」

優しい。

右も左も分からなかった若い頃、こんな人達に囲まれて過ごせたことは奇跡であり財産だ。

結局、西岡さんの身の上話を聞かされながら時間は過ぎた。

「また大阪来たら寄りますわ!お元気で!」

団地の裏は浜寺公園。

浜寺公園は臨海地区にあるとても大きな公園。

その昔は海水浴場だったようで、リゾート感の匂いが残る。

長い松原は大阪の癒しで、時が止まったかのような空気が漂う。

先に会った長澤先生の話によると、今現在は高級住宅街として少しずつ開発されているようだ。

もしももう一度大阪に住むことがあるなら、迷わずここで暮らすだろう・・。

素晴らしい公園、ジョギングに出会えなかった当時を残念に思う。

公園の向こうは用水路。

田舎への手紙なんかは、よくここで書いたものだ。

羽衣駅から二つ目の諏訪ノ森を目指す。

諏訪ノ森。

ここは東京から帰って関美で助教師したときに住んだ場所。

駅前から足跡を辿る。

記憶のまま歩くこと15分、突然足跡が消えた。

新しい家が立ち並び、もう全く面影がない。

どうやら区画整理もされたようで、見える景色は全て初めて見るものだった。

この地を訪れたのは約30年ぶり、仕方ない、これも当たり前でもある。

しばらくウロウロしてみたが、知ってるお店も一軒も見当たらなかった。

駅に戻り、南海本線で一度難波方面に向かい、天下茶屋駅で南海高野線に乗り換えUターンするように南に向かう。

急行停車駅北野田で降りる。

大体の場合、急行の停車駅には街がある。

北野田の大きなスーパーで花を買った。

次に向かうのは、その北野田から二駅向こう、萩原天神の駅近くの立ち飲み居酒屋。

難波ヘアテックで店長した時、最初のスタッフだったヨシコ。

理美容師を諦め、今は友人と居酒屋を二店も共同で経営しているらしい。

数年前、SNSで繋がったが、メッセージで会話を交わすことは少なかった。

SNS情報では先日に7周年を迎えたらしく、買った花はそのお祝いだ。

立ち呑み居酒屋「くりゅう」。

少し開いた小窓から漏れる明るい笑い声、間違いなくヨシコだ。

扉を開ける。

カウンターに常連がひと組、壁際のゲームに夢中は若者達がひと組。

「いらっしゃいませ!」

出迎えてくれたショートヘアの女性はヨシコではない。

もう一人の女性と目が合った。

私はゆっくりとマスクを外した。

「あーーーっ!お久しぶりですぅー!」

ヨシコだ!

相変わらず明るい。

「来たでー!とりあえずコレ、お祝い!7周年おめでとう!」

「やっと来たけど、一杯飲んですぐに帰るわ!」

「次、ミナミでヘアテックとコラージュの連中と8時に居酒屋やねん!」

「あ、もう絶対に遅刻やな」

「まあええわ!ヨシコ!やっと会えたわ~!」

調理の手を止めたヨシコが、

「その節は大変お世話になりました・・」と両手を前に揃えて頭を下げた。

「あ、昔散髪屋してた頃の師匠ですぅ」

カウンターの常連客に説明するヨシコ。

「あの時、自分も27歳やったから、若かったから、厳しくしてゴメンな」

「いや~、ワタシも19歳やったから・・・、たぶん店長大変やったと思いますわ~」

「大変やったわ!!」

店内の常連達が一斉に笑う。

「夜遊びして仕事中に寝るし!コーヒーの空き缶を灰皿にするし!」

「お店終了後にレッスンせーへんし!前髪スプレーで立たせるまで朝の掃除に入らへんし!」

店内の常連達が大爆笑に変わる。

「でもね!顔剃りが上手いんよ・・・これが、メチャ上手い・・」

「ホンマ、技術はもってたな・・」

まんざらでもない顔のヨシコ、

「でも国家試験落ちましたけどね」

「そーそー!お前な!ウチのグループで国家試験落ちたのお前だけやぞー!(笑)」

「うう、、(笑)」

手際よく次から次へと客の注文を調理するヨシコ。

常連に愛され、面倒見の良さそうな友人にも恵まれ、もうちゃんとした商売人になっている。

「いかん・・もう行かなあかん!」

「ゴメン!早いけど・・、またいつか、いや近いうちにくるわ!」

最後に声を大きくして、

「スミマセン!!ふしだらな娘ですが!!これからも可愛がってやって下さい!!」

深々と頭を下げた。

「ふしだらって・・(笑)」

急ぐ、

難波に戻る。

「ゴメン、ちょっと遅れるわ!」

長い一日の最後はミナミの居酒屋。

ヘアテック、コラージュのミニ同窓会。

私の久しぶりの大阪に合わせて集まってくれる。

地下の居酒屋は宮崎地鶏がメインのお店。

「お待たせー!!」

コラージュの吉富店長、磯山君、上山君、ヘアテックの藤井、田中君、懐かしい顔がならぶ。

少し遅れてヘアテックの佐藤君が現れた。

気の置けない仲間達、吉富店長とはヘアテック・コラージュの起ち上げからの同志だ。

バラバラになった皆は大阪でも集まるような事は無いらしく、久しぶりの再会を喜んだ。

佐藤「上田店長の教えが今の自分の基礎になってます」

  「カットの姿勢、シェービングの姿勢、もう何ちゅうか教科書ですわ」

そうそう、そんな話、私ももう50を過ぎている、こんなご褒美のような話をもらってもいいだろう・・

佐藤「ただね!ただ・・!成人式行かせてもらわれへんかったんが納得いかへん!(笑)」

  「田中君(後輩)は行かせてもらったのに!オレんときはダメやった!(笑)」

磯山「そりゃあ【時代】や!」 吉富「【時代】や!」 藤井・上山(笑)

田中「でも僕、佐藤さんのおかげで万馬券当てて、それでスーツ買って成人式に出ましたよー(笑)」
  
  「シルクジャスティスですわー」

佐藤「おったな、シルクジャスティスな(笑)」

そうそう、このノリ。

褒めて落として、落として褒める、これが大阪だ。

吉富「また機会あれば、今度は今日来られへんかった人も集めてもう一回やりましょ!」

ハイチーズ!

「ラーメン行こうや!」

ラーメンに参加するというこは終電を逃すということ。

皆、私のわがままに付き合ってくれた。

神座ラーメン

それから何処のお店に行ったのか記憶がない。(もう酔っ払い)

どうやら入店後すぐ、ソファーで爆睡したらしい。

どうやってホテルに帰ったのか、全く記憶がないが、そのまま深い眠りについた。

この日の歩数は、スマホアプリによると2万8千歩を越えていた・・・。

~2~


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