みずもあらず みもせぬひとの こひしくは あやなくけふや ながめくらさむ
見ずもあらず 見もせぬ人の 恋しくは あやなくけふや ながめくらさむ
在原業平
見なかったというわけではなく、見たというわけでもない人が恋しくて、今日はただ、訳も分からず物思いにふける一日を過ごすことにしよう。
詞書には「・・・車の下簾より、女の顔のほのかに見えければ・・・」とあり、「ほのか(=はっきりとではなく)」に顔が見えただけの女性に恋心を抱いてしまったという状況を、「見なかったわけでも見たわけでもない」「あやなくながめる」と詠んだ歌ですね。詠んだというだけでなく、この歌をその女性につかわしたということですから、これまた「平安のプレイボーイ」業平の面目躍如というところでしょうか。 笑