漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 579

2024-11-15 05:03:48 | 貫之集

さつきやま こずゑをたかみ ほととぎす なくねそらなる こひもするかな

五月山 木ずゑを高み 時鳥 鳴く音そらなる 恋もするかな

 

五月の山は枝が伸びて梢が高いので、時鳥の鳴く声もひときわ空高く聞こえて来る。私も心が上の空になるような恋をしていることよ。

 

 初句から第三句「鳴く音」までは次の「そらなる」を導く序詞。「そら」は時鳥の声が響く「空」と、気持ちが「(上の)空」との両義になっています。そうした技法も含め、やや理屈っぽい感じがしますね。
 この歌は 古今和歌集(巻第十二「恋歌二」 第579番)に入集しています。単なる偶然でどうでも良いことですが、古今集でも貫之集でも579番ですね ^^;;


貫之集 578

2024-11-14 04:25:11 | 貫之集

こひにのみ としはすぐせと ほととぎす なくかひもなく なりぬべらなり

恋にのみ 年はすぐせと 時鳥 鳴くかひもなく なりぬべらなり

 

恋にもに年月を過ごせと言わんばかりに時鳥は鳴いているのに、その甲斐もなく恋は終わってしまいそうだ。

 

 第二句は「年はすぐせ」と読む説もあるようです。そちらですと、「一途に恋して年月を過ごして来たけれども」といった解釈になるでしょうか。


貫之集 577

2024-11-13 06:30:19 | 貫之集

としつきは むかしにあらぬ けふなれど こひしきことは かはらざりけり

年月は むかしにあらぬ 今日なれど 恋しきことは かはらざりけり

 

年月がたって、昔の面影もない今日ではあるけれども、恋しいことにはまったく変わりはないのであるよ。

 

 この歌は拾遺和歌集(巻第八「雑上」 第471番)に入集しています。貫之歌は古今和歌集同様、拾遺和歌集にも百首以上入集していますね。

 


貫之集 576

2024-11-12 04:38:15 | 貫之集

いにしへに なほたちかへる こころかな こひしきことに ものわすれせで

いにしへに なほたちかへる 心かな 恋しきことに もの忘れせで

 

昔の思い出の日々にやはり立ち帰ってしまう心であるよ。恋しいという気持ちを忘れることもなく。

 

 今は関係が壊れてしまったけれども、恋に満ちていた日々を繰り返し思い出してしまうという歌。「なほ」の二文字が歌の一層の深みを与えていますね。
 この歌は古今和歌集(巻第十四「恋歌四」 第734番)に入集しています。


貫之集 575

2024-11-11 05:04:53 | 貫之集

いそのかみ ふるののみちの くさわけて しみづくみには またもかへらむ

いそのかみ 布留野の道の 草わけて 清水くみには またも帰らむ

 

布留野の道の草を分けて、もう一度昔を思い出して清水を汲みに帰ってみよう。

 

 「いそのかみ」は「布留」にかかる枕詞。「布留」は地名ですが同音の「古」に通じ、昔を思い出す意を含んでいます。思い出すのは、もちろん当時愛した人のことでしょう。316古今集 0679 にも、「いそのかみ ふる」を含んだ貫之歌が見られますね。