いせのうみの あまのつりなわ うちはへて くるしとのみや おもひわたらむ
伊勢の海の 海人の釣り縄 うちはへて くるしとのみや 思ひわたらむ
よみ人知らず
伊勢の海の海人が釣り縄を長く延ばして延々と手繰るように、私も長い間苦しさのみを感じて、あの人を思い続けるのでしょうか。
「釣り縄」は、釣り針をいくつも付けた縄でしょうか。「くるし」は「(縄を)繰る」と「苦し」の掛詞になっていて、海人が長い釣り縄を延々と手繰っているように、自分も苦しい恋情をいつまでも抱き続けるのか、と詠んでいます。「うちはへて」は漢字で書けば「打ち延へて」。織姫と彦星の恋を詠んだ 0180 にも登場していますが、音感的に印象に残る言葉ですね。
たなばたに かしつるいとの うちはへて としのをながく こひやわたらむ
たなばたに かしつる糸の うちはへて 年の緒長く 恋やわたらむ
凡河内躬恒