日経アーキテクチュア
23 APR 2012
日経BP社
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「それができるのが組織事務所の良さだと思います。現代の建築家の多くは建築作品として個人の署名をしなくてはならないけど、組織事務所はそれをしなくてもいい。過度な自己表現は求められていない。場所と建築主と社会だけを純粋に考えることができる。それはとても大きなアドバンテージだと常々思っています。」
という本を読みました。伊東豊雄、隈研吾、内藤廣、藤森照信と続いたシリーズ第5弾で日建設計が登場という、なかなか洒落たセレクトだと思います。日本一の事務所とは比べものになりませんが、私も一応組織事務所に所属しているわけで、こういう並びにはニヤけてしまいます。建築というのは、どうしても著名なスター建築家の設計にスポットライトが当たりがちですが、それ以外の設計の方が圧倒的に多いわけです。
その昔、就職先を選ぶ時に恩師のアサイ先生には「お前はアトリエ事務所へ行けよ」と言われました。その本意は結局聞けず終いとなってしまいましたが、私は組織事務所以外は考えていませんでした。大谷弘明さんのテキストにもあるように、当時から匿名の可能性に魅力を感じていたような気がします。もうずいぶん長い間今の事務所で働いていますが、この選択は間違っていなかったようです。
最近は組織の中で活きる個人というポジションに興味があります。この本は作品集として見てももちろん面白いのですが、私はどちらかというと組織論として読みました。