原広司
MAY 1986
RC+1F / 595m2
http://tasaki-museum.org/
星野リゾートから直線道路を抜けたところに建つこの美術館は、原先生の転機となった作品であり、当時建築学会賞も受賞しています。往年の名建築ということで期待していましたが、その姿を見た時は、正直驚いてしまいました。それはまるで、時代から取り残された廃墟のようでした。
中庭を囲むように配置されたプランニングやその雰囲気は、今でも十分魅力的であり、おなじみ雲型屋根のディテールも健在です。自邸やヤマトインターナショナルといった代表作を彷彿させます。しかしメンテナンス不足は歪めず、建材そのものの耐久性にも限界があるのか、かなり痛々しいという印象を持ちました。中庭の手入れが不十分なのも残念です。
築後28年というのは、決して短くない年月です。それでも「味のある建築」として使い続けられている建築は沢山ありますが、この美術館がそうであるとは、とても言えないでしょう。なぜこのようになってしまうのか?デザインの問題なのか?プログラムの問題なのか?
そして、つい先程見た軽井沢千住博美術館を思い出しました。今をときめく最先端デザインの美術館が、果たして28年後どのような姿になっているのか、ちょっと想像できませんでした。時代の寵児としての輝きを失った時、建築の本質が見えてくる。設計者が亡くなった後も建築は存在し続ける。そんなことを考えました。