龍の尾亭<survivalではなくlive>版

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「文化」は入試評論文にどのように登場するか(1) <学びネットワーク研修会>

2016年03月27日 12時28分06秒 | メディア日記
大前誠司氏の学びネットワークで「文化」についての研修会が昨日実施された。

名称:学びネットワーク研修会
演題:「文化」は入試表論文にどのように登場するか
日時:2015年3月26日 10:30~17:30
場所:お茶の水スター歌詞会議室カンファレンスルーム2

とても面白かった。3年生の現代文を担当していると、現場でも日常的にこういう話をしたいけれど、とてもそんな余裕はない。こういう研修会できわめて良質なまとめの講座をしてもらえるのは非常にありがたいと思う。
高校教師で現代文を教えていれば、断片的には知っていることばかりだ。
国民国家、文化相対主義・多文化主義とピジン・クレオール、ヘブライズムとヘレニズムの近代における意味、デカルト(主義)二元論と「神」の関係、植民地
政策と分割統治手法、日本の近代における伝統の創出などなど、現代文の入試問題には常にちりばめられている課題^キーワードである。

大学入試現代文を担当していれば、ちょっとした用語集的な説明ぐらいはお手の物だろう。

だが、じっくりとそれを現代の「枠組み」の風呂敷を広げてきちんと再配置し、知的な基盤にする訓練を、私たちは生徒に対しても自分自身に対しても十分できているとは言い難い。

こういう講座は一見、生徒が受講するような「教養講座」に見えるかもしれないけれど、むしろこういう「教養」を、この講座の大前先生のように生徒に提供できる高校教師がどれだけいるのか、と考えると、本当に意義深いものだと思う。
個人的には最高に楽しかった。

以下はその個人的なメモ。
受講していない人には役に立たないかもしれないけれど、あまりに楽しかったことは、忘れないためにメモを整理しておく癖があるので、忘備録代わりにアップしておく。

もちろん内容はおおむね当たっていると思うけれど不正確なところもあり、私の認識の限りにおいての講座内容です。

あしからず。

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学びネットワーク内容系研修会「文化」(2016年3月26日) 講師大前誠司
(その1)


(1)学びネットワーク研修会 内容編「文化について」講師:大前誠司(2016年3月26日)

講師自己紹介

3年前からフリーで田園都市沿線で「あざみの塾」をやっている。いわば予備校を引退したあと、自分の理想型の授業を目指している。
生徒にたいしては学校(の授業)を無視しないという形で。
先生方対象としては、「学びネットワーク」という形で。

生徒を対象に現代文を教える時には3つ(厳密には4つになる)の授業をやる。

①構造
②内容
③解く

+(④コラムの説明ー天声人語と春秋ー)※

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この④コラムの説明は、毎日短時間、塾に来ている生徒を全員集め、音読させてから私(大前)の視点でコメントするというもの。実は「現代学入門」という講座もあり、これは生徒にその週のトピックについてプレゼンさせるというもの。それの教師版だ。
これは実は読解の役には立たない。コラムは随筆だから。ただし、センター現代文大問2(小説)の語句や慣用句の役に立つというのでやっている。この小説問題の問1は、誰も勉強の仕方を示さないし、これをやれば大丈夫といった語句集もない。だいたい「具合が悪い」とかが出るわけだから。
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①構造と②内容は筆者に向き合う
③は出題者と向き合う。

受験では③がもちろん大事だが、今日は②をやる(①は去年の夏の研修会で読解の構造を解説した※注)


※注--------------------------------------
 詳細にわたる資料がそのときに配布されました。文章構造の読解にとても役に立つ資料です。ぜひ学びネットワークに参加して、この資料を見せてもらうことをお勧めしておきます(
島貫)
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①の構造について触れておくと、構造把握とはいわば読解の「文法」のようなものだ。無意識に使っている読解のルールを効率的に意識化して使うということ。
たとえば、私は年度当初に38ページにわたる構造資料を生徒全員に配布する。
生徒は
「これ全部覚えるの~?」
と嫌がるが、そうではない。無意識にみんなやっていることを意識化するための「文法書」のようなものだ。

語弊があるかもしれないが、現代文は「大雑把」に読むことが大切だと考えている。内容を把握するということ。そのためにはどこが強調されていて、それがどんな主張を導いていくのか、が分かる必要がある。

(たとえば1例として、疑問の表現がある。一番に注目すべきは疑問の表現だ。これは言語が変わっても通用する。小学校の教科書でも驚くほど使える。)いわば文章を読むための戦術書だ。これは最初の1ヶ月ぐらい授業でやる。


それに対して③の解くという作業は、①がマクロな構造読解だとすれば、こちらはミクロに読んでいく。すべてがヒントになる。これは一年間続けていく。大雑把に読む(①構造)ための細かさ(③解く)ということ。

だが今日は②内容の話。なぜこれをやるかというと

「そもそも現代文なんて知ってる話が出れば分かりますよね」

と知り合いに言われたのがきっかけ。その通り。そういうことを実現するためにやっている。

「あ、この文章はつまりあの話ね」

となるため。

そもそも(大前センセは「そもそも」が大好き、原則に立ち返って論じるって姿勢が現れています)、現代文の試験に取り上げられる現代の評論は、「当たり前」を疑ってよりよい自分、よりより世界を実現することを目指して書かれている。そういうスタンス。

だから、「現代文」はすべて「当たり前」を疑っている。


(この前小四の娘の教科書にある説明文を読んだら、こんなにつまらない文章があるのかというほどつまらなかった。それは当然。私にとって全部当たり前のことしか書いていないのだから。)

②内容 はだから「当たり前」を教える。

大学の先生が批評し批判すべき「当たり前」は、高校生にとっては少しも当たり前ではない。

大学入試の「現代文」は大学の先生が疑っている「当たり前」の話だから、その「当たり前」を高校生が分かっている状態にすることが重要。

(それはつまり、私は女子高生のファッション雑誌が読めないということと同じ。もちろん字は読めるし、文章も簡単だが、「当たり前」が圧倒的にすれ違ってしまう)

①構造は①ヶ月。これはいわば仕込みの時期

②内容
③解く

は一年間かける。

(「普通こうだよ」←おまえの普通は普通じゃない!)

では、②内容をどう読解に使うのか?

まず、文章は最初と最後が大事。とくに冒頭に注目すると


例---------------------------------------------------------------------
ある地域で開発の話が持ち上がったとき、自然保護を訴えようとするなら、なぜその自然を守るかという論理が必要になる。

たとえばそんな冒頭の文章があったとする。構造(①)の注目点は2つ、内容(②)の注目点は一つ。

構造1<疑問文>「なぜその自然を守るか」
構造2<強調>「必要になる」

内容1「自然」←文章中に「自然」ということばが出てくると、基本

「人間/自然の切り離し」が批判され、「つながり」が主張されていく。

つまり、「自然」について現代文が論じるとき、これから論じられることについての予測の選択ができることが重要。

予測の選択→予測の選択→予測の選択→

といって文章読解は続いていく。これが大切。(※注スピノザのいう適切な観念の連鎖、だね)

「自然」ときたら「人間/自然の切り離し」を批判、と考える。
例終了-------------------------------------------------------------------------

もちろん、予測ははずれる。だからこれは暗記しても意味は薄い。だが、我々は普段無意識にそうやって文章を読んでいる。
ところが高校生にはその批判すべき「当たり前」がピントきていない。

そして内容は第一段落が勝負。

だから、そこで次を予測させることが大事になる。


②内容のポイント

「これから論じられることについての姿勢を造る」

これが重要。知識ではなく、現代という枠組みの理解だ。

よくセンター試験は、受験現代文では「自分勝手に読むな」と言われる。
あるいは文章に書いてあることだけを読め、とも言われる。

だが、読むというのはそんなことではない。近いけれども。

つまりそれは「思考停止」を推奨しているのではなく、

「自分の知識と文章の展開とを照らし合わせながら読む」

という話だろう。

現代文は現代という枠組みの中で疑問や批評を論じている。
高校生にその現代の枠組みがない、のが問題。だから②内容をやる。
それは読解の前提として、課題の配置や方向が見えてくること、でもある。


例1ーーーーーーーーーーーーーーーーー
地球温暖化を実感している人はいない。にもかかわらず「温暖化」を保留なしで語ることは危険だ。もちろんそういうバカ文章もあるし、バカ教師もいるが、そういうバカ生徒ではいけない。

「温暖化で沈む島」と「(こういう研究や論文において)温暖化で沈むと言われる島」の違いが大切。

例2
北朝鮮問題もそう。メディアだけで知らされている。私たちはそれを実際には知らない。そういう前提にしてはいけない前提がある。

例終了ーーーーーーーーーーーーーーーー


確認 内容②の講義は文章の先読みツールとして内容をつかって欲しい、ということ。

(ここまでが講義の前振り。次から内容講義開始です)