片山慎三監督作品『さがす』
出演:佐藤二朗、伊東蒼、清水尋也……
久しぶりに映画を観た。
ジェイソン・ステイサムやモーガンフリーマンのアクション物、あるいはテレビドラマ『最愛』(吉高由里子主演)とか、『鎌倉殿の13人』(NHK大河)とか、この夏は家でゴロゴロしている時、ぼちぼち映像エンタメを眺めて過ごした。
まあしかしドラマ2本を除けば、アクション物の多くは、眠くならない夜の暇つぶしに過ぎない(昼間からはほぼ観ない)。
7月いっぱいでparaviとU-NEXTのサブスクを止めて、ようやくAmazonPrimeに戻ってきたら、この『さがす』が目に付いた。
佐藤二朗がよかった。いつもTVのMCなどで観ている彼ではない。あるいは映画やドラマで存在感のある脇役をしている「佐藤二朗」でもない。
大阪西成の、風采の上がらないシングル父の中年男性を演じている佐藤二朗に、惚れた。
その失踪した父親の娘、中学生を演じる伊東蒼がまたいい。
彼女の走る姿がステキだった。映画って動いているものを撮るのがけっこう難しくて、アクション物とかどうなっているのか一瞬分からなくなることも多い。
この伊東蒼演じる女子中学生は、よく走る。それが気持ちよかった。
お話は特に深まっていく物語ではなく、大きな謎が解かれていくお話でもない。
動く絵が重ねられていくかんじ、とでもいえばいいだろうか。
サイコ野郎を演じる清水尋也も、視点をどこか定まらず漂わせている、その感じもよかった。
もちろん、貧困、安楽死、自殺願望、連続殺人、などなど、もし仮にテーマにしてしまうとてんこ盛りでまとまりがつかなくなりかねない。
そう観た人もいるのかもしれないね。
でも、それらが詰め込まれたわけではなく、ネットワークの中で緩くすれ違ったり出会ったりしながら、映像を多層化して見せてくれる印象だ。
なにより、西成という街のような(真偽は知らず)ストリートのロケもまた、切り取られたリアルとして、そのネットワークに参加しているのが分かる。
『ドライブ・マイ・カー』
とは全く違うけれど、映画を安心して観ることができる幸せを感じた。
ま、自分の基準は歴史的には『スナッチ』とか『鮫肌男と桃尻女』『バッファロー66』辺りですから、今の人の好みとは全く合わないのかもしれませんが。
とくに映画の見巧者でもないし。
隙間がある映像が、好き。速度のある映像が好き。
じっくり見ていると眠くなるんですよね(笑)
音楽も、そう。クラシックの「大伽藍」を思わせる大作は大抵寝てしまうのでした。
音楽も、そう。クラシックの「大伽藍」を思わせる大作は大抵寝てしまうのでした。
ともあれ、『さがす』はお勧めです。