J3第28節 ガイナーレ鳥取×いわきFCの試合のこと
前半は、鳥取も非常にしっかりした守備をして、0-0で終えている。実際、タイミングのよいシュートまでつながることが何度もあった。
だが、後半に40点以上Goalを得ているいわきFCがは後半の立ち上がりすぐに11有田が、19岩渕のシュートがこぼれたところを押し込み、続いて谷村がキレイに右隅に流し込んで2点。コーナーからのヘディングで鳥取が一点返すと、日高の左からのクロスを、ファーに詰めていた11有田がトラップして鮮やかに決めきった。
ファンならずともいわきFCの後半の強さをしみじみと感じさせる試合になった。
特に11有田は、必ずゴール前の要所に顔を出してきて決めてくれる、頼もしいFWに成長してくれた。
思えば、終了間際に出場すると、ファーストタッチでゴールするという切れ味を見せてくれたところから、どんどん自信をつけて、次節(29節終了時)でも得点を重ね、J3の今シーズントップの14得点を上げることになる。
今のいわきは強い。J2ライセンスが取れれば、本当にJ3を今年の一シーズンだけで終えてしまいそうだ。
この圧倒的なフィジカルに支えられた速度とそして厚みのある攻撃と守備が、J2でいったいどこまで通用するのか、想像するだけでわくわくしてくる。
単に昇格が目標、ということではなく、その次の活躍を待望したい、そんなところにまでファンを連れて行ってくれることに感謝、である。
J3第27節いわきFC×カマタマーレ讃岐の試合(もしくはサッカーの強さとは)
結果は、いわきFCが4ー1で勝利して勝ち点60となり首位をキープ、カマタマーレ讃岐は20で17位となった。
だが、前半0-0で折り返したところまでは、首位と17位の試合とは思われないほど、讃岐は首位いわきFCを苦しめていた印象がある。
最終的にはいわきがシュート17、讃岐が7といわきが倍以上のシュートを放っているが、いわきは対松本山雅戦などでは23本を打ちながらスコアレスドローに終わっている。シュートが多いのはいわきの攻撃スタイルではあるけれど、だから強いというわけでもない。
むしろ、前半戦ではいわきは讃岐に苦しめられているという印象すらあった。
攻めているのに点数がとれないというのではなく、むしろ讃岐の攻撃を堪え忍んでいた感がある。少なくても、首位と17位のギャップはそこには全く見られない。
このまま先取点を取られてがっちり引かれたら、厳しいのではないか?
いわきFCファンとしてはそんな気持ちにさせるところもあった。
ところが、終わってみれば4ー1の圧勝である。なにか不思議な気持ちになっった。
終了間際、アディショナルタイムで見せた讃岐のシンプルなゴールシーンを見ると、「ああ、いわきFCが点数を取られるときの幾つかある典型的パターンの一つだよね」という思いを抱かされる。
シンプルに中央から左にボールを出し、それを前にもっていって、いわきの選手が戻って態勢を整える前に、クロスをペナルティエリア内に飛び込んできた選手が決める……。
いわきFCが、コンパクトに前から詰めて攻撃的に守備を行い、ボールを奪った瞬間にほぼ全員が前にダッシュ。ショートカウンターからゴール前に人数をかけて、多数のシュートを撃つというスタイルをとる以上、奪われたらダッシュで戻るという瞬間に、ゴール前、人数が戻る前にやられてしまえば、このパターンの失点の危険は常に伴うのだろうと素人ながら想像がつく。
それでも最多得点&最小失点をリーグで保っているということは、いわきFCが自分たちの戦い方をやりきって結果を出しているということなのだろう。
とはいえ、そうである限り、常に被弾とは紙一重の状態が続く。
動きが一瞬でも鈍くなれば、怒濤の攻めは、素早い反撃に前に綻びていくだろう。
だとすると、サッカーの強さって何なんだろう?
そういう思いがわき上がってくるのだ。
いわきFCは強い。首位をキープしているのだから強いに決まっている。
だが、いくら強いからといって90分ボールを支配し、圧倒的な点数をどんなチームに対してもゲットできる、というものではない。
もし仮に前半讃岐に1つゴールが生まれていたら?その後ガチガチに引かれて守りを徹底されたら?
いわきFCが勝てないということも十分に考えられたのではないか?
そんな気持ちになる前半だった。
しかし、結果としては後半わずかな時間帯に怒濤のゴールラッシュでいわきQFCがあっという間に大勢を決してしまった。
いわきFCが90分間圧倒的な強さを示すことが不可能であるように、讃岐もあの前半のサッカーを後半45分続けることができなかったわけだ。
解説の人はよく「修正してくる」という言葉を使うように思う。
そういうこともあるのだろうが、細かい戦術の変化は素人の私にはわからない。
ただ、ここで前回触れた崩壊の「兆し」を予期する力のようなことが重要になるのかもしれない、と感じる。
漠然と守るのではない、自分のスタイルを持っていればそれが強みにもなるし、もちろん弱みというか限界も露出する。
だが、重要なのはその強みや弱みを消すことではないのだろうということ、といえばいいだろうか。
プラスマイナスあることは百も承知で、いわきFCはこのスタイルを1年間貫き通している。
敵は当然それに対応してくる。だが。
スタイルを貫くことで、崩壊の予期の範囲を限定できるという側面が間違いなくある。繰り返すが、基本的なサッカー選手としての能力のことはわからない。
だが、いわきFCが仮に強いのだとして、それが強いのだとしたならば自分たちのサッカーのスタイルを貫き通していること、が関わっているのではないか。だからこそ、崩壊の兆しを予期する瞳のフォーカスを洗練させていけるのではないか。
自分たちのスタイルを貫けるのは強いからだ。
という言い方ももちろん可能だろう。むしろそういうことなのかもしれない。
だが、自分たちであっても敵であっても、「崩壊」の「予期」を察知しそれを自分たちの「意味の網の目」に拾っていくのが強さだといえるのならば、いわきFCは強いサッカーをしはじめているのかもしれない、という気がしはじめている。
(この話、ぼんやりと続きます)