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クルマを所有するようになって44年経つが、今日までクルマのデザインや色を真剣に考えたことはなかった。
ところが、コペンを所有してからは、生まれ初めてクルマのデザインと色を意識するようになった。
昔読んだ意地の悪い評論に、
「真性のナルシスト(もちろん悪口です)は、他者の視点を持たないので、外見や身なりに全く頓着しない」
という一説があった。その時は一理あるのか、と思ったが、よく考えてみれば他者の視点を持たない者は自分を独我=主観の中でまどろませるしかないのだから、それは外から見れば究極の醜悪=違和感しか生まないだろう。
他者の視点を意識しなければ自己愛すら成立しない。
さて、そういう意味ではようやく自分が身につけるクルマがどう見られるかを意識するようになった、といえるのだろうか。
ま、理屈は知らんけどイエローコペンはとにかくキュートなのだ(笑)
軽のオープン黄色コペンは迷惑なほど目立つ。
もちろん、ロードスターに乗った経験から言えば、思うほど人は他人の車に関心など持たない。だがいったん意識した時には、
「なんだこいつは」
となる確率は普通の車よりは間違いなく高いだろう。
街でクルマの流れを見るともなく見ているときにこのクルマを認めたら、自意識過剰か?と思う可能性も否定できない。
スポーツ系という大義名分があるホンダのS660なら話は別だが(笑)
まあしかしイエローコペンはとにかく可愛いのである。
その可愛いクルマに初老の男が乗って良いのか問題の結論はまだオープンだ。
だが、発売から20年経ったら故障や修理などそれなりのリスクを背負う。
それを踏まえても乗りたいというスタンスは、一応「モノ好き」カテゴリーには入れてもらえるかもしれない。
とにかく、今まで車を乗ってきてその色やフォルムが気に入ったというのは初めてだ。
今までは多くの場合、ディーゼルターボでトルクフルであること、4WDで雪道も気にせず走れること、ステーションワゴンで荷物が載せられること、ワンボックスで人がたくさん乗れること、コンパクトで燃費が良いことetc.機能で選んできた。
ロードスターに惚れたときはオープンクルージングの爽快さがあること、という感性的価値に軸が移ったけれど、まだ機構として屋根が開くか開かないかという機能の問題でもあった。
このコペンはもはや違う。
屋根を開ける(厳密には閉める)のにも一苦労で、乗れば至る所が軋んでガクガクブルブル。
新型に乗ったほうが乗り心地が良いに決まっている。性能だって新しい方がいいのだろう。
それでも、古い車にはそれにしかない魅力がある。
このクルマでいえば、一つにはデザインの可愛さであり、2つ目はマニュアル車を操る楽しさであり、3つ目はFF軽量スポーツのハンドリングの前輪がグイグイ引っ張る感触だった。
旧車というにはまだまだひよっこだが、こういう楽しみに目覚めたのは、まことにありがたい。
これからその魅力について、ぼちぼち書いていこうと思う。