仕事に間が空いたので、映画を観てきた。
仕掛人藤枝梅按
ブルージャイアント
対峙
エブエブ
と、タイプの異なる映画を立て続けに見たのだが、今日はエブエブのことを書く。
映画についてはこちらを。
とにかく愉快な映画だった。
経営しているコインランドリーの税金申告手続きに苦しみ、離婚の危機に瀕し、娘が助成の恋人をパーティーに、連れてくるというので父親(娘の祖父)の反応に悩み、人生に押しつぶされそうな中年女性を、カンフー女優(その程度の認識で済みません)のミシェール・ヨーが演じるというだけで面白そうなのに、設定が並行宇宙(マルチバース)の分岐に寄って請じているありとあらゆるキャラクターを主人公が「演じる」というのだから、訳の分からないカオスな面白さが保証されているようなものだ。
実際、メチャクチャな設定を上手に映像化していて、しかもあらゆることを「主題」とするのではなく、ひたすらパロディのように(しかし、もちろんパロディが主題でもない)連写していくどたばたコメディの速度が、決して、見る側を圧倒するのではなくウェルメイドに誘ってくれるのだ。
ウェルメイド、といえば、ありきたりのフレームに上手にお話を載せて安心して観客を慰撫してくれる作品を褒めつつもいささか揶揄することばであることが多いのかもしれない。
しかし、そういうこととも無縁だ。
これは本当にADHDのための作品(つまりは自分のための作品)だ、と思った。
辻褄は、主人公が主人公で「ある」ことに拠って保たれている。
設定によって保たれているのではない。物語によってささえられているのでもない。
この作品はだから、いかに賞を獲得しようとも、その症の重さにおいてかたられる必要はない、ともいえる。
拡散し、スライドし、様々な場所と時間、そして様々な私でありながらも、それらはつながりを保たずに繋がっている、そんな感覚を甦らせてくれる。
傑作なのかどうかは、分からない。
この映画が称揚される時代が幸せなのかどうかも分からない。
でも、ビンセント・ギャロの『バッファロー'66』以来の、これは
「オレの映画だ」
という感触を得た。
すぐに見直そうとは思わない。すでにおなか一杯である。とりあえず劇場で見直すなら断然『BLUE GIANT』だろう。あの映画は何度でもサラウンドで鑑賞したい。
それでも、エブエブは「オレの映画」だ。そう思う。
理解しがたい作品でしたが、どこが評価されたのかが気になってWEBを閲覧しましたが、やはり当方に理解の埒外でした。(;^_^A
> エブエブは「オレの映画」だ。
なによりでした。^^
正直、予想外に受けすぎてしまったエンタメB級映画、という側面はありますよね。
もののはじめのiinaさん心にはこの映画、今ひとつヒットしなかった由、残念ですがそういう風に好みの分かれやすい映画だと私も思います。
私は大昔に観た、
ビンセント・ギャロの
『バッファロー'66』
を想い出したりしました。ふたつの映画はほぼ関係ないので、私の頭の中の結びつきに過ぎませんが。
また素敵な映画に出会えますように!