龍の尾亭<survivalではなくlive>版

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上橋菜穂子『鹿の王』(上)を読了。

2014年12月22日 10時25分05秒 | メディア日記
上橋菜穂子の本は好きなのだが、読み進めるのに時間がかかる。様々なものが中に入っていて、それを拾っていくうちにストーリーを楽しむことを忘れてしまう(笑)
つまり、主人公はヒトではなく何か別のモノだ、ということなのだろう。
普通なら、物語はあくまで主人公のものであり、それは通常人間であったり、擬人化された者たちであったりする。
だが上橋菜穂子の作品の「主人公」はなにかもう少し別のところにある。
もちろん主要な登場人物は物語を進める仕事をするのだが、そこで捉えられようとしているのはその人物たちそのものではない。また、 彼ら人間の登場人物が向き合う動物や生き物それ自体が主人公、というわけでもないのだ。
焦点が当てられているのはむしろ彼らの生きている「状況」であり、彼らを生かしている「環境」そのものだ。

それは通常「歴史」と呼ばれているものとも少し違う。
「それでは人間の匂いがツヨすぎる」
と、上橋菜穂子的存在なら呟いてみせるかもしれない。

ともあれ日本は彼女たちという語り手を持ったことを間違いなく世界に誇ってよい。
この冬、ぜひ一読をお勧めしたい一冊。

『満願』米澤穂信はどうか?

2014年12月19日 22時58分05秒 | メディア日記
これは
このミス2014年間第一位
週刊文春ミステリーベスト10第一位
ミステリが読みたい2015年版第一位
山本周五郎賞受賞
という国内4冠。

わたしは個人的に
『その女アレックス』
の方に一票ですが、好みは分かれるかな。
もったいないほど贅沢にアイディアも描写も投入されている。
個人の短編集としてはほんとうに凄いと思います。

ただ、わたしは石川淳的に、小説とは「長編小説」(長さの問題でもないんだけど)ではなくのこと(石川淳自身の才能がどちらに向いていたか、もまた別の話)だと思っているのでアレックスの方に肩入れしちゃいます。

読んで損はない一冊。
ただ、文庫を待っても良い、かな?



吉田量彦の新訳『神学政治論』(光文社文庫)が超絶お薦め。

2014年12月19日 12時04分27秒 | メディア日記
ここで夏に紹介した
吉田量彦訳の『神学政治論』(光文社文庫版)
を通読終了。とっても面白くて読みやすいんだけど、前半の聖書読解部分をちゃんと読むと時間がかかる。

特にスピノザに興味のない一般の人は、下巻の13章以降を読めば十分かもしれません。

訳者の吉田量彦氏が言うように、この本は間違いなく21世紀の「実用書」です。

むずかしい政治の理論を読むより、よほど役に立つ。つまり、政治が身近に感じられる。
下巻だけでいいですから、ぜひともお薦めしたい一冊。

『新・戦争論』池上彰・佐藤優を読む

2014年12月19日 11時45分45秒 | メディア日記
あとがき(佐藤勇人)に引用されている、

「あなたたちは真理を知り、真理はあなたたちを自由にする」(「身体ヨハネによる福音書」)

が身にしみてくる2014年の年末だ。
真理がどこかに動かずにある(いる)とは思わないが、自分たちに全く意識できない場所にあるとも考えたくはない。

この二人がいう外交における「インテリジェンス」(情報誌=諜報)は、グローバル化した現代では私達が自分の給料や年金、医療、食料を考えるにも必要な技術になってしまった。

そうであるなら、瞳を閉じてばかりもいられないよね、ということだろう。

中でも中東とイスラエルの話、中国西部のナショナリズム&イスラムの問題は抜群に面白かった。

それから、和解は暴力の後にしか来ないし、国や状況によって死ななければならない人数が違う、という指摘もリアリティがある。

日本の「今」をつい考えちゃう。

今の日本の政治については「(安倍晋三たちの政治は)語るに足りない」というスタンスで、スルーしているところもある。
ある種の「戦略」もあるのかな。やりだしたら全部だめってことか(笑)

先に読んだ友人が「物足りない」、と感想を漏らしていたのはその辺かも。

にしてもいろいろ勉強になりました。ベストセラーになるだろうから、私が書くまでもないけれど、リハビリ読書には好適でした。

『NHK番組改編事件 制作者9年目の証言』永田浩三・長井暁を読む

2014年12月19日 11時26分35秒 | メディア日記
年末にきて、本が読めるようになってきた。
もちろん、時間がないのではなく、切り替えがきかないだけのことなのだが、仕事もプライベートも一段落ついて、やっと本に手が伸びだしたというところか。

で、今日の一冊目はこれ。
正直、以前は、政治家がメディアの報道に圧力をかける、なんてことはあり得ないし、あってはならないし、そしてさそんなことは政治家だってなかなかできないだろう、と高をくくっていた。
しかし、このあたりからそのメディアの報道に対して政治家は抑制的に行動する、という(想像上のものではあるにせよ)前提がなし崩しになり始める。

今でまはもう、大手のみ既存メディアはフリーハンドを持っていないことが白日の下に曝された感がある。

しかし、政治と報道の関係は続いていくし、日本のメディアは、自由でもなければ、北朝鮮のような単なる御用広告塔でもないだろう。

私たち日本に住む者たちは、単純に他人任せで期待したり失望したりすることを止める程度にはいろいろな意味で豊かになったのではないか。

そういう意味で、この検証は極めて重要な意義を持つ。他に永田浩三氏の近刊もあるはず。

じっくり腰を据えて、たにんごととしてではなく政治が扱う「暴力」=「権力」に瞳を凝らす必要があるだろう。
だからもちろん言いたいのは、政治家はそういうものだしマスコミも厳戒があるし、その中で我々はどうしたいか?という話をするための準備本、ということです。

権力は単なる「悪」ではなくて「暴力的」でもある、ということだとすれば、私たちは「知」を働かせ続けるためにどんな努力をはじめとするすべきなのか?

考えるべきこと、できることはあるはず。
正しさだけを声高に語れば済む話ではなく(それも大事ではあるけれど)、暴力と対峙する「身体感覚」を身につけていかねば。


直ちに読むべし『その女アレックス』

2014年12月18日 21時09分37秒 | メディア日記
ひさしぶりに文字通り「巻措く能わざる」エンタテインメント本に出会った。
この本、あらすじの説明はできません。もうすでにそれが説明になっていることを恐れるけれど、まあそれはしょうがない(笑)

とにかく読んでみてください。いかにもフランス小説らしい感じの小説です。にもかかわらずなぜかどこか微かに「こち亀」を連想させるところがまた面白い。

腰巻き惹句の「史上初の6冠」「今年最高の話題作」がガセじゃないことは、読めば納得。年末年始の読み物に迷ったらぜひ!

文春文庫『その女アレックス』ピエール・ルメートル

金沢の秘密保護法反対集会を、選挙違反の恐れあり、と選管が指摘?

2014年12月09日 00時29分48秒 | 大震災の中で
この選管のコメントは問題あり。「自主」規制もここまできたか、という印象です。
煽るつもりは全くない。
でもね、控えめな感想だけど、この国はかなりヤバいところまできているかもしれない、と思うよ。
今飛ぼうとしたら削除されてる。
誤報ならいいんだけどな。
(その後午前5時に再度アップされていました)


(引用開始)
秘密保護法:反対する街頭活動を中止…公選法抵触の恐れ
毎日新聞
 金沢弁護士会が、10日に施行される特定秘密保護法に反対する街頭活動を計画したところ、石川県選管から「衆院選期間中の政治活動を規制した公職選挙法に抵触する可能性がある」と指摘され、中止していたことが8日分かった。弁護士会執行部で見解が分かれたが「慎重なメンバーに配慮した」(飯森和彦会長)という。

 弁護士会では金沢市武蔵町の繁華街で10日夕に約1時間、複数の所属弁護士が行政機関による恣意(しい)的な運用の危険性などを拡声機で訴えるほか、ビラを配り、横断幕も掲げる予定だった。

 ところが11月、県選管に照会したところ、再考を促されたという。公選法では衆院選公示日から投票日まで団体による政治活動が規制され、違反した場合、100万円以下の罰金が科される。

 県選管は「特定の主張を拡声機や横断幕を使って訴えることは特定候補の選挙活動と誤解されかねない。ビラ配布も適切ではない」とコメント。総務省選挙課も「一般的に特定の主義・主張を訴えることは政治活動に該当する」としている。

 特定秘密保護法の成立から1年の6日には全国各地で反対のデモ行進や市民集会があったが、特に問題化していない。【中津川甫】