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( 「ジャン・クリストフ」 )
「 僕にとっては、 また、
真理を担いうるだけ 丈夫な腰を 持ってる者にとっては、 真理がいいのだ。
しかし その他の者にとっては、 それは一種の残酷であり 馬鹿げたことだ。
自分自身よりも 真理を愛さなければいけないけれど、
真理よりも隣人を いっそう愛さなければいけない。
われわれわは もっとも真理のうちで、
世のためになり得るものをしか 明言してはいけない。
他の真理は それをわれわれのうちに しまって置くべきである。
隠れたる太陽の 柔らかな光のように、
それはわれわれの あらゆる行為の上に 照り渡るだろう。 」
「 彼の芸術観に 革命が起こってきた。
彼の芸術観は いっそう広い いっそう人間的なものとなっていった。
彼はもはや、
単なる独白であり 自分一人のための言葉である 音楽を欲しなかったし、
専門家ばかりを相手の むずかしい組み立ては なおさら欲しなかった。
彼は 音楽が一般の人々と 交渉することを欲した。
他人に結びつく芸術こそ、 真に 生きたる芸術である。 」
「 現代の 多くの音楽家の 音楽に見るような、
一階級だけの方言にすぎない その芸術的な言葉を、
極端に避けようではないか。
『芸術家』 としてではなく、
人間として話すだけの 勇気をもたなければならない。 」
僕は、 “元の自分” に 戻ってきた気がしました。
人間は成長するにつれ、
少しずつ 本来の自分に 戻っていくのではないでしょうか。
〔 「ジャン=クリストフ」 ロマン=ロラン (岩波文庫) 豊島与志雄 訳 〕
(次の記事に続く)