「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「おくりびと」 (1) 〔再掲〕

2009年02月24日 09時16分13秒 | 映画
 
 米アカデミー賞外国語映画賞を  「おくりびと」 が受賞しました。

 昨年試写会を観て 深く感銘した僕は 大いに期待していました。

 日本映画として 本当に喜ばしいことですね。

 昨年のレビュー記事を 再掲します。

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 納棺師 (のうかんし)。

 遺体を清めて 柩に納める仕事の 映画です。

 ちょっと辛気臭くて、敬遠されそうな職業のように 感じられてしまいます。

 しかし、親族の目の前で行なわれる 納棺の儀式は、

 静謐で、厳かで、死者に対する 敬意に満ちていました。

 故人の肌を 遺族に一切見せないように、遺体を清拭し、

 寝間着から白装束に着替えさせる 一連の手技は、一糸乱れぬ職人技です。

 生きていたときのように 死に化粧を施す指先は、

 何よりも亡き人への 愛情が溢れてます。

 遺族にも一人一人 清拭をしてもらいます。

 それが 旅立つ人と残される人の、最後の心の交流になるでしょう。

 合掌の仕方など、ひとつひとつの所作が 厳格に定められていますが、

 時には臨機応変に、個人的な心尽くしが 振る舞われます。

 ルーズソックスを履きたいと言っていた おばあちゃんのために、

 足袋の代わりに ルーズソックスを履かせたり、

 大往生のおじいちゃんの顔一杯に 娘たちがキスマークを付けて 送ったり。

 悲しみのなかに 微笑ましさが漂います。

 映画の舞台は田舎でしたが、東京では納棺式など あまり知られていないでしょう。

 納棺は、元々は親族が 行なっていたそうですが、葬儀屋が執り行うようになり、

 さらに納棺の業者が 下請けするようになったということです。
 

 主人公の大悟 (本木雅弘) は、「旅のお手伝い」 という求人広告を見て、

 旅行会社だと思い 面接に行きます。

 ところが、出てきた社長 (山崎努) は、「旅立ちのお手伝い」 の誤植だな

 と言って、大枚を差し出して 大悟を雇ってしまいました。

 大悟の初仕事は、孤独死した 老人の遺体。

 死後2週間経っていて、悲惨な現場は 大悟にとって余りにショッキングでした。

 でも大悟は、社長の納棺の儀式を目にして、

 次第に納棺師の仕事に 気持ちが傾いていきます。

 ある遺族は、死に化粧を施された妻が 「今までで一番きれいだった」 と言って、

 涙を流して 社長に頭を下げました。

 ときには 遺族の喧嘩に巻き込まれたり、

 女性だと思った故人が ニューハーフで “あれ” が付いていたり。

 悲喜こもごものエピソードを、映画はユーモラスに描いていきます。

(次の記事に続く)
 
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