「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

転倒してしまったAさん (2)

2011年02月05日 20時51分10秒 | 介護帳
 
(前の記事からの続き)

 Aさんは今 どうしているでしょう? 

 でも介護を始めて 間もなかった僕は、 Aさんには 大切なことを教わりました。

 暴力的になるのは、 例えば 怯えた動物が 相手を攻撃するように 〔*注〕、

 Aさん自身が 一番不安で、 どうしたらいいか 分からないのだということ。

 そのAさんの気持ちを 理解していれば、

 Aさんを恐がったり 厄介者扱いするのではなく、

 こちらの心構えや態度も 自ずから変わってくるということ。

 「不安なんですよね」 「大丈夫ですよ」 「気持ちが分からなくてすみません」

 などの言葉が 出てくると思います。

 そんな 介護の基本の姿勢を 教えてくれたAさんでした。

〔*注 : 「風の谷のナウシカ」 で、

 キツネリスのテトが ナウシカと初めて会った シーンです。

 キツネリスは 肩に乗るような 小型のかわいい動物ですが、

 性格は凶暴で 鋭い歯を持っています。

 ナウシカが テトを優しくあやしても、 テトはナウシカを威嚇し、

 指に噛みつきます。

 一瞬 顔をしかめるナウシカですが、

 静かに  「大丈夫、恐くない」 「恐くない」 と言って、 テトをなだめるのです。

 やがて テトは気を鎮め、 逆立った体中の毛が ふんわりと治まりました。

 Aさんの場合も 、それと同じことだと 思うのですね。

 暴力的な行為を受けても、

 それは不安な気持ちから 出ているのだということを心得ていれば、

 受容的な対応が できると思うのです。
 
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