「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「無意識の彷徨」 (21)

2007年05月11日 20時06分05秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47422983.html からの続き)

  
○警察署・外景

  ---フェイドイン。


○同・廊下


○同・心理課

  裕司、ソファに横になり片手の甲を目の
  上に当てている。
  なつみと友辺が見守っている。
裕司「………」
友辺「……君はお母さんを見捨てたんじゃな
 かったんだ。子供の力ではどうしようもな
 かった。精一杯のことをしたんだよ……
 (労る)」
  裕司、唇を噛みしめる。
なつみ「目の前の恐怖に対して、裕司くんは
 感情を消し、現実から自分を切り離すこと
 で身を守った……(慰謝する)」
裕司「………(涙が滲む)」
なつみ「そして最愛の人を失った苦しさから
 免れるために、お母さんの以前の記憶も消
 してしまったんだと思う……」
裕司「……僕は、母を嫌いだったんじゃない
 んですね……?(確認するように)」
なつみ「あなたはお母さんを心から好きだっ
 たのよ……(愛情深く)」
裕司「……母も、僕を……」
なつみ「(裕司の手を包み、深く頷く)その
 とおりよ……ご自分の命に代えるほど…
 …」
友辺「女性の力で、9才の子を体ごと放り投
 げたなんて……」
裕司「……母が、僕を助けてくれた……お母
 さんが僕を………(涙が止めどなく溢れて
 くる)」
  なつみ、裕司を抱く。
友辺「………(見守る)」
  裕司、なつみの腕のなかで嗚咽する。
  背中が大きく震える。
なつみ「………(裕司を強く抱きしめる)」
裕司「………お母さん……!(涙)」
  
(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47496171.html
 
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「境界に生きた心子」 ドラマ企画案の件

2007年05月10日 17時45分53秒 | 「境界に生きた心子」
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46383043.html からの続き)

 3月30日の記事に ドラマ企画案のことを書いてから、

 担当プロデューサーの ご家族が入院したり、

 ゴールデンウィークをはさんでしまったりで

 打ち合わせがすっかり延びていましたが、やっと 会うことができました。

 前回 プロデューサーと顔合わせした時点では、

 プロデューサーは 僕の企画案と簡単なストーリーを 見ただけで、

 まだ 「境界に生きた心子」自体は 読んでませんでした。

(ボーダーについても 理解していなかった。)

 今回 拙著を読んでいただいたのですが、その結果、

 TVドラマにするには 重すぎて扱えない ということになってしまいました。(;_;)

 観ていて辛くなってしまう というのです。

 TVはエンターテイメント(ただ面白おかしいとか お涙頂戴というのではなく)なので、

 ボーダーは題材的に難しい と言っていました。

 プロデューサーは、「私の頭の中の消しゴム」(若年性アルツハイマーの映画)のように

 感動の話にできないかと 考えていたようですが、

 ボーダーは内容が違うので どう描いていいか分からない ということです。

 ドラマ化に向けて やっと第一歩を スタートできたと思いましたが、

 結局 最初のハードルで頓挫してしまいました。

 まあ、ことほどさように ドラマ化というのは壁が厚いのです。

 仕方ないことです。
 

 そのプロデューサーは、僕の以前の別の作品も 見てくれたのですが、

 ホスピスをテーマにした 「生死命(いのち)」というマンガのほうに

 かなり関心を持ってくれました。

(参考: http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/24725922.html)

 シリアスな話なので NHK向きだが、自分はNHKと繋がりがないので

 別の知り合いのプロデューサーを紹介する、ということになりました。

 勿論そのプロデューサーが どう思うか分かりませんが、

 「境界に生きた心子」も 見てもらいたいと思っています。
 

 また次の機会を求めながら、じっくりやっていくつもりです。
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47751954.html に続く)
 
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「無意識の彷徨」 (20)

2007年05月09日 21時14分36秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47399540.html からの続き)
 

○フラッシュバック

 〔前の裕司の声が被さる。〕
  両手を突き出して必死に飛び出す裕司。

○心理課

  裕司、猛然と立ち上がり、両手を突き出
  してなつみに飛びついてくる。
なつみ「あ……!?」
友辺「何をする!!」
  友辺、反射的に裕司の胸ぐらを掴み、背
  負い投げをかける。
  裕司の体がふわりと宙に浮く。

○フラッシュバック

  9才の裕司の体が宙に舞う。

○心理課

  床に投げられる裕司。

○フラッシュバック

  裕司、草むらの中に落ちる。

○心理課

  仰向けになり、驚愕した裕司の顔。
  天井が回るように見える。

○フラッシュバック

  空中にいる裕司。
  周囲の景色がぐるりと回る。
  警報機と電車の音が鳴り響く。

○心理課

  愕然とした裕司の顔。
9才の裕司の声「……お母さぁん……!!」
  警報機と電車の音が重なる。

○回想

 〔以下はロングも用い、裕司と則子の位置
  関係を描く。〕

  点滅する警報機。
  線路上にいる裕司と則子。
  足を抜こうとするが動けない。
  電車が近づいてくる。
裕司「お母さん! 危ないよ……!!」
  裕司は必死にブーツを引っ張り則子を助
  けようとする。
  ヒールはがっちりと線路に挟まって抜け
  ない。
  轟音とともに迫ってくる電車。
  泣き叫ぶ裕司。
則子「裕司! 逃げて……!!」
裕司「(泣きながら)いやだ!! お母さん…
 …!!」
則子「逃げなさい……!!」
  裕司を引き離そうとする則子。
  必死でヒールを線路からはずそうともが
  く裕司。
  目の前に突進してくる電車。警笛。
裕司「お母さぁん……!!」
  裕司、無我夢中で則子を突き飛ばそうと
  両手を突き出して押す。
則子「裕司……!!」
  小柄な則子が、無我夢中で裕司を体ごと
  放り投げる。
  宙を舞う裕司。
  裕司の視界で則子と周りの景色がゆっく
  り一回転する。
  草むらに落ちる裕司。
  額に傷を負うが、必死で顔を上げる。
  瞬間、電車と則子が接触する。
  木っ端微塵に打ち砕かれる則子。
  裕司に真っ赤な血飛沫が吹きかかる。
  激しく軋む急ブレーキの音と共に走りす
  ぎる電車。
  凍りついた裕司の表情(能面のように見
  える)。
  フェイドアウト---。

(続く)
 
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「無意識の彷徨」 (19)

2007年05月08日 22時42分49秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47369496.html からの続き)
  

○夜空
  

○街景/昼
  

○警察署・外景
 

○同・心理課・窓の外

  窓から部屋のなかが見える。
  立っているなつみと、椅子に座っている
  裕司。
  

○同・中

  なつみが裕司に催眠療法を行っている。
  テーブルはどかされ、なつみは裕司の横
  に立っている。
  軽く目を閉じている裕司。
  友辺がそっとドアを明けて入ってきて、
  脇に控える。
なつみ「………裕司くん、歳はいくつ?」
裕司「(子供の言い方で)……んとね、9才
 ……」
なつみ「今どこにいるのかな?」
裕司「……踏み切り……電車の……」
なつみ「(裕司に)何か見える?」
裕司「……う、ん……お母さんが……」
友辺「………」
なつみ「お母さん、どうしてる?」
裕司「(眉をひそめる)………足が……抜け
 ない……」

○フラッシュバック

 〔以下、フラッシュバックでは則子・裕司
  をロングで見せない(則子と裕司の位置
  関係を描かない)。
  則子のアップで畳みかけるように。〕
  線路にブーツの踵を挟まれ動けない則子。
  必死で足を抜こうとする。
  能面のような裕司(9才)の顔。

○心理課

裕司「……ああ……(顔が恐怖に歪む)」
なつみ「どうした? 何があったの?」
  裕司の体が震える。

○フラッシュバック

  裕司の能面のような顔。
  足を抜こうとする則子。
  電車の警笛が聞こえる。
  はっとして振り返る則子。
  警報機。向かってくる電車。
  則子、ますます焦ってもがく。
  警報機。電車が轟音をたてて迫る。
  警笛。急ブレーキの音。
  断末魔の則子。
  目の前に突進してくる電車。
  無表情の裕司。

○心理課

裕司「ああ……ッ(両手をもがくように動か
 す)」
なつみ「裕司くん……!?」
  緊張して見ている友辺。
裕司「お母さん……!!」

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47422983.html
 
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「無意識の彷徨」 (18)

2007年05月07日 21時24分23秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47340651.html からの続き)
 

○なつみのマンション・外景/夜


○同・リヴィング

  ブランデーグラスを手に、ソファに座っ
  ているなつみと友辺。
  なつみは、友辺の肩に体を寄せかけてい
  る。
  気持ちが揺れている様子のなつみ。
なつみ「……裕司くんの心を踏みにじること
 にならないかな……」
友辺「え……?」
なつみ「催眠ていうのはね、人の心に土足で
 入り込むようなものだと思うの……」
友辺「ていうと?」
なつみ「だって裕司くんはやっとの思いで記
 憶喪失になって、持ちこたえてるようなも
 んでしょ? それを無理やり引きずり出す
 んだから……本当に大変なのはそのあと…
 …」
友辺「俺たちがせっつかせるからか?」
なつみ「それもあるけどね……今の裕司くん
 は自分の過去が分からないことで不安定に
 なってる……自傷行為もあるし、事実を知
 る緊急性があると思う。他の心理療法では
 何年もかかったりするから」
友辺「やるしかないわけか……(不本意なが
 ら)」
  なつみ、ブランデーを飲み干す。
友辺「……俺も、立ち会っていいかな……
 ?」
なつみ「……そうね……うまく催眠状態に入
 れる段階になってからなら……何日か か
 かるけど……」
友辺「わかった……頼むよ、なつみ……」
なつみ「………(友辺の肩に頭をもたせ掛け
 る)」
友辺「………(なつみの肩に手を掛け抱き寄
 せる)」
なつみ「………」
  二人、抱き合う。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47399540.html
 
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「無意識の彷徨」 (17)

2007年05月06日 20時22分11秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47313453.html からの続き)

  
○樹木

  幹にとまった蝉がしきりに鳴いている。
  

○警察署・心理課

  なつみと裕司。
裕司「(顔を伏せて)……自分で自分が恐い
 んです……! 僕は多重人格じゃないんで
 すか……!?」
なつみ「裕司くんに別の人格があるのかはま
 だ分からない。でもね裕司くん、多重人格
 だから犯罪に関わるなんてことはないんで
 すよ。マスコミなんかで誤解されてるけど、
 本当は多重人格の人は優しくて傷つきやす
 い人たちが多いんです」
裕司「……でも、意識がない間に、自分が一
 体どんなことをしてるのか……!?」
なつみ「それを、知りたいと思いますか?」
裕司「………(当惑)」
なつみ「あなたの人生のなかで抜け落ちてい
 る空白、それを埋めることで自分の姿が見
 えてくると思います」
裕司「……どうやってそんなことを……?」
なつみ「催眠によって記憶を呼び起こすとい
 う方法もあります」
裕司「……催眠術をかけられるんですか…
 …?」
なつみ「裕司くんが私を信じてくれるなら
 (裕司の目を見つめる)」
裕司「……でも、また大変な記憶が出てきて
 しまったら……?」
なつみ「もしかすると、そういうことがない
 とは言えません。このままのほうがいいで
 すか?(穏やかに)」
裕司「……いや、このままじゃ……(困惑し
 て)」
なつみ「恐いものは見ないほうがいいか、本
 当のことを知りたいか、裕司くん自身の選
 択なんですよ」
裕司「……でも……(逡巡)」
  裕司の気持ちをありのままに包むなつみ。
裕司「………(葛藤)」
なつみ「………(見守る)」
  裕司、顔を上げてなつみの目をしっかり
  見つめる。
  裕司の意思を見て取り小さく頷くなつみ。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47369496.html
 
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「無意識の彷徨」 (16)

2007年05月05日 19時59分07秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47271441.html からの続き)
 

○同・心理課

  なつみのデスクの電話が鳴る。
なつみ「(受話器を取り)はい心理課です」


○同・捜査一課

田所「(電話で)田所だ。いつまでモタモタ
 やってるんだ? 調べがラチあかないんだ
 よ、上からもうるさく言われてな!」


○同・心理課

なつみ「あの……」
田所『(なつみに余地を与えず)捜査のジャ
 マするために心理屋を雇ってるんじゃない
 んだ。立場ァわきまえろ!』
なつみ「僣越かもしれませんけど、容疑者に
 も人権があります。心を傷つけていいとい
 うことはありません」
田所『出たな、金看板の“ココロ”が。だっ
 たら被害者の“ココロ”も分かってるんだ
 ろうな?』
なつみ「………」
田所『それに共犯者は今もそこらをウロつい
 てるんだ。いつまた次のガイシャが出るか
 分からんのだぞ!』
なつみ「でも、面接には時間がかかりますか
 ら……」
田所『犯罪は待っちゃくれないんだよ! 催
 眠術でもかけて、チョチョっと記憶を引っ
 張り出すくらいできるだろう!? いいな
 !!』
  ガチャッと一方的に電話を切る田所。
なつみ「………(荒いため息)」

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47340651.html
 
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「みどりの日」に昭和を思う

2007年05月04日 21時36分27秒 | Weblog
 
 今日5月4日は、今年から「みどりの日」。
(関連記事 http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47166172.html )

 九段下にある昭和館で、「手塚治虫のマンガの原点--戦争体験と描かれた戦争」を観てきました。
 手塚治虫さんの原体験でもある「昭和戦争」(読売新聞)を解説しながら、手塚作品と戦争の関わりを紹介する展示会です。

 僕のお袋・稲本みどりは、手塚さんと同い年です。
 今年から「昭和の日」になった4月29日は昭和天皇の誕生日ですが、手塚さんの誕生日は11月3日で、明治天皇の誕生日だったということです。
 今年は手塚さんが生まれてから80年。
 80は僕の親父の享年でした。

 ちなみに、手塚さんの通った小学校は現在の大阪・池田小学校で、反社会性人格障害の宅間守が凶悪事件を起こした所です。
 何だかそんな細々とした“つながり”が色々ありました。

 昭和館のすぐ近くに靖国神社があるので行ってみると、境内の遊就館という軍事博物館に、本物の大砲や機関砲が展示してありました。
 砲弾を受けた無残な傷跡や損壊された部分もあり、目の前で実際に手に触れたりすると、映画などを観ているだけでは分からない生々しさが伝わってきます。

 僕の親父は、学徒出陣で実際に参戦しています。
 お袋も、学童奉仕で軍需工場で働いたそうです。
 僕は親から直接、戦争体験を語り聞くことができた最後の世代です。

 手塚治虫展にも、戦争当時の物資や遺留品などが陳列されていました。
 空襲の火災による高熱で変形した分銅やガラスなど、庶民の悲惨な体験が思い起こされた次第です。

 手塚さんは直接,間接に、自分の戦争体験を多くの作品に描いており、
 戦争に対する恐怖や怒りが表現されています。

 数々の直筆原稿も展示されていて、手塚さんの幼少時の動画(8ミリ?)も初めて目にしました。
 “昭和の巨人”手塚治虫ですが、多くの貴重なものを見ることができた一日でした。
 
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「無意識の彷徨」 (15)

2007年05月03日 20時07分58秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47247327.html からの続き)
 

○街路

  友辺、周囲に注意しながら歩いている。
  懸命な様子が窺える。

  
○住宅

  玄関先で家人に聞き込みをしている友辺。
  

○事件現場近くの公園

  歩いてくる友辺。
  子供たちがわいわい騒いでいる。
  友辺、気になって見る。
  子供たちは草むらからゴーグルを見つけ
  たらしい。
  ゴーグルは壊れて血が付いている。
子供A「血だよ、血!」
子供B「違うって、そんなの」
  はっとする友辺。

○インサート

 〔事件直後、現場で目撃者のOLに事情を
  聴取しているシーン〕
友辺「犯人の年恰好は?」
OL「……二十歳くらいで……そう、ゴーグ
 ルをかけてる人がいました……」

○公園

  友辺、子供たちのほうへ近づいていく。
友辺「(腰をかがめて、わざとらしい作り笑
 顔をしながら)ねえ僕たち、それ、どうし
 たの?」
  友辺を見上げ、ぽかんとする子供たち。
 

○警察署・取調室

  田所・友辺、裕司を取り調べている。
田所「(不機嫌そうに)お前、自分の母親ま
 で見殺しにしたそうだな」
裕司「………(苦渋)」
友辺「田所さん、それはいま言わなくても…
 …」
田所「お前は自分に都合が悪くなると意識が
 なくなるそうじゃないか。便利な奴だ。今
 度のヤマでも罪意識から逃げるために記憶
 を消したんだろう?(恫喝)」
裕司「(泣きそうに)……そうなのかもしれ
 ません……でも……」
友辺「たしかに、『誰かを見捨てて逃げた気
 がする』っていうのもお袋さんのことと繋
 がってる。被害者の返り血がお袋さんの血
 と結びついて、無意識の防御システムで意
 識を失ったとも考えられる……」
田所「そうすりゃあ全部つじつまが合ってく
 るんだ。すんなり認めちまいな!」
裕司「………」
友辺「でも彼は覚えてないんですよ」
田所「チッ、面倒な野郎だ!(机を蹴とば
 す)」
裕司「………(身の置き所がない)」
田所「(皮肉めいて)……ジキルとハイドか
 ……夜中に人を殺し歩いて朝になると覚え
 てない……お前もそういう奴なんだろう
 ?」
裕司「………(拳を握りしめて耐える)」
田所「(裕司をなめるように見て)別の人間
 になって何やってんだ、あぁ? いい加減
 に思い出さないか!」
裕司「………(体が震える)」

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47313453.html
 
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「無意識の彷徨」 (14)

2007年05月02日 18時08分03秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47225206.html からの続き)
 

○街景

  警察署・遠景。
 

○警察署・応接室

  裕司の伯父,伯母の和信と俊子が来てい
  る。
  応対しているなつみと友辺。
俊子「(心を痛めて)………裕司は、母親の
 踏み切り事故があった2時間くらいあと、
 踏切から2~3キロ離れた道にしゃがみ込
 んでいたところを保護されたんです……
 母親の血を浴びた姿で……」
友辺「やっぱり踏み切りの事故は事実だった
 んですか……」
なつみ「今まで裕司くんに事故のことは話さ
 れなかったんですか?」
和信「……母親のあんな悲惨な死に方……本
 人が覚えてないのを、無理に言って聞かせ
 ることはないと思って、ずっと口にしない
 できたんです……それをわざわざ掘り返す
 ようなことをしてくれて……!(怒りを噛
 み殺す)」
なつみ「(恐縮するが)……いきなりこんな
 重大なことが出てきてしまうなんて、私も
 予期できませんでした。申し訳ありません
 ……でも、これは必要な過程だと思うんで
 す」
和信「知らずにすむことは知らないほうがい
 いんだ!」
なつみ「でも、裕司くんの心の影の部分に光
 を当てていかなければ、これからもまた繰
 り返し記憶をなくすことになるかもしれま
 せん」
俊子「……どうして、何度も記憶喪失になる
 んですか……?(不安げに)」
なつみ「成長してからも裕司くんは、恐怖や
 危機が身に振りかかると自動的に意識をな
 くして記憶に停めないという、防衛システ
 ムができ上がってしまったのではないかと
 思います。心理学では『抑圧』『解離』と
 いうメカニズムで説明してるんですが…
 …」
俊子「でも、昔の母親のことも覚えてないな
 んて……」
なつみ「裕司くんは、お母さんとの愛情がな
 かったんじゃないかと思っているようです
 が、何か心当たりは……?」
和信「そんなものはありません! ちゃんと
 普通に暮らしてる親子でした(怒りをあら
 わにする)」
なつみ「ただ、子供にとっては、端から見て
 普通だという客観的な事実ではなくて、愛
 を感じてないという主観が事実になってし
 まうんです」
友辺「……そのために、事故のとき母親を見
 捨てるようなことを……?」
なつみ「(遺憾な思いで)考えられないこと
 ではないかもしれません。その結果、裕司
 くんは恐ろしさと同時に、自分がお母さん
 を見殺しにしたという罪の意識から逃れる
 ため、記憶を消し去ったということも…
 …」
和信「あなたは裕司と母親の関係を台無しに
 したいんですか!?」
なつみ「(一生懸命に説得しようとする)そ
 うではなくて、裕司くんが何故そう思うよ
 うになってしまったのかという理由が大事
 なんです」
俊子「(目頭を押さえ)……それが、あの子
 の病気の原因なんですか……」
なつみ「裕司くんは病気ではありません。何
 か深い傷を負っているんです。お母さんと
 の間に何があったのか、それを探らなけれ
 ば彼の心は癒されないと思います」

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47271441.html
 
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「無意識の彷徨」 (13)

2007年05月01日 21時06分58秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47053023.html からの続き)
 

○警察署・外景

  ---フェイドイン。

○同・医務室の外

○同・医務室の中

  ベッドに寝ている裕司。
  ベッドサイドになつみと友辺、心配そう
  に見守っている。
  裕司はなつみと友辺に背を向け、体を海
  老のようにしている。
なつみ「(神妙に)……お母さんが事故に遭
 った現場にいた……そのときのことを思い
 出したんですね……」
裕司「(涙ながらに)………僕は……母親が
 目の前で轢かれるのを、ただぼうっと見て
 ただけなんです……驚きも悲しみもしない
 で……」
なつみ「………(心を痛め)」
裕司「……僕は母を見殺しにした……何故か
 ずっとそんな気がしてた……だけど、やっ
 ぱり事実だったんです……!(自責)」
なつみ「何か事情があったのかもしれない…
 …(労るように)」
裕司「(かぶりを振る)……こんな大事なこ
 とさえ覚えてないなんて……僕にとって、
 母親の事故は、記憶にも残らない程度のこ
 とでしかなかった……!」
なつみ「……幼い裕司くんにとって、目の前
 のお母さんの死は、記憶に留めるのさえ耐
 えられないようなでき事だったんじゃない
 かしら……」
  なつみ、裕司の肩に手を掛ける。
なつみ「小さい子供はね、裕司くん、あまり
 にも恐ろしい、受け入れがたい体験をする
 と、トラウマ……心の傷から自分を守るた
 めに、無意識の防衛機能として記憶を消し
 てしまうことがあるの……」
裕司「……え……?(混乱)」
友辺「う~ん……確かに俺たちでも、嫌なこ
 とはなるべく忘れたいっていうのはあるけ
 ど……?」
なつみ「大人と違って子供の場合は、本当に
 その体験自体が抹消されてしまうの。『僕
 はここにいないんだ。こんなことはなかっ
 たんだ。だから辛くないんだ』と無意識に
 言い聞かせて」
裕司「……じゃあ……それ以前の母の記憶も
 ないっていうのは……? 受け入れがたい
 ような母親だったんですか……!? 幼児虐
 待とか……!?」
なつみ「先走りしないで……」
裕司「……そんな母親だから、助けようとし
 なかった……? それを丸ごと忘れるため
 に記憶を消したんですか……!?」
友部「でも待ってくれ、踏み切り事故が本当
 に現実だったと言えるのか?」
なつみ「これだけ鮮明に呼び覚まされた記憶
 は事実に違いないと思う……細かい部分は
 別としても……」
裕司「(頭を抱える)……思い出さなきゃよ
 かった……!! どうしてこんな面接なんて
 したんですか……!?」
友部「(なつみに)だから子供のときのこと
 なんかいいと言ったんだ! 記憶がなくな
 るにはそれだけの理由があったんじゃない
 か……!?」
なつみ「(心苦しい)辛いのは分かります…
 …でも、失ったものを取り戻すには……」
裕司「(耳に入らず)……僕は母を殺したん
 だ……自分の母親を……!! ああ……!!
 (机に自分の頭を叩きつける)」
なつみ「裕司くん……!?」
  裕司、何度も激しく頭を打ちつける。
友辺「やめろ!!(裕司を止める)」
  裕司の額は裂けて血が流れる。
裕司「……ああ……!!(嘆)」
なつみ「裕司くん……!(裕司を抱く)」

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47247327.html
 
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