小池党首の立党会見が行われ、会見の場で[脱しがらみ]の言葉が多用された。
[脱しがらみ]という言葉は、大衆受けするものであるとの分析に依っての使用であろうが、しがらみからの脱却は社会の混乱と荒廃の方が多いことを学んでいないのだろうか。しがらみとは、利益を受ける者(支持者)との癒着を指しているのだろうが、もし小池新党が政権を奪取し得た場合には小池新党支持者への配慮が必要となる新たなしがらみを生むこととなる。脱しがらみをマニュフェストに掲げた鳩山政権の失敗が思い起こされる。事業仕分けによる独立行政法人の整理と埋蔵金の発掘によって児童手当を増額する目論見が竜頭蛇尾に終わったことは、整理すべき独立行政法人の構成員と事業の受益者に民主党支持者がいた「しがらみ」が指摘されている。また、在沖米軍基地の国外(最低でも県外)移設は、支持者と安全保障のしがらみの狭間で迷走した挙句に日米関係をも危うくし、後に民主党政権下は空白の3年間と総括されている。[脱しがらみ]が社会の混乱と荒廃を示す好個の事例は、政権交代後に行政の主要幹部を交替させ従来のしがらみを断ち切るシステムの米韓で顕著である。韓国は、大統領選支持者への対北融和の新たなしがらみと在韓米軍に依存した国防体制の従来のしがらみの中で迷走しており、米国では「白人中産階級」の支持を受けたオバマケアの見直し公約が、選挙支持者と貧困層救済のしがらみに縛られて混乱している。
人気投票である総選挙では、従来のしがらみ打破を訴えることは選挙対策として不満層の取り込みに有効であろうが、そこから生まれる新しいしがらみが新政権を縛り、新しい受益者を生む結果にしかならない現実を我々有権者は理解しておかなければならないと思う。複雑な現代社会と国際関係においてしがらみからの脱却は、好結果につながることはないと思う。