野党再編に対する連合の神里季夫会長の会見に疑問を持った。
疑問を持ったのは、神津会長が「玉木新党なるものに組織内議員が同調するような事態は私の許容範囲を超える」とした点である。玉木議員等が新党に合流しないのは、自分の支援組織である産別組合の主張(各議員の主張)と相容れない「原発0」が枝野新党の綱領案に盛り込まれたためであるにも拘らず、会長は「(連合に関連した議員の政治活動の全てが)私(連合会長)の許容範囲でなければならない」と宣言した傲岸・不遜なものであると同時に、連合会長自身を議員の生殺与奪の権利を持つ創価学会の池田名誉会長や習近平氏と同等の高みになぞらえているのでは?とも感じられるものである。労働組合活動とは無縁の生活を送っていたために、労働組合(連合)のトップは神のように偉いのかと勉強した。連合(日本労働組合総連合会)の歴史と現状は、1989年に社会党系の「総評(日本労働組合総評議会)」、民社党系の「同盟(全日本労働総同盟)」、中間派の「中立労連(中立労働組合連絡会議)」・「新産別(全国産業別労働組合連合)」の労働4団体の統一によって結成され、組合員は現在700万人とされている。連合した4団体の特色は、旧国鉄労組等のように雇用母体の経営状態とは無縁でいられるために労使対決路線に徹する総評に対して、総評以外の組合は雇用を維持するためには労使協調も必要であるという比較的穏健な路線であったとされていた。神津会長の言のように連合会長が普遍・全能の神のような存在であったかと云えば、基本姿勢に大きな隔たりがある産別組合を統合して誕生したという来歴から動向は必ずしも定まらず、2016年の新潟県知事選では、自公が推薦する刈羽原発再稼働推進派を相乗り推薦したり、民進党解体時には立憲民主党と国民民主党への支援は産別の自主投票とせざるを得なかったために「連合の股裂き状態」と揶揄されたそうである。更に近年では、組合活動の重点を非正規雇用労働者と正社員との格差是正や最低賃金の増額等に移さざるを得ないとともに、日本経済が国民消費の上に成り立っているために「生産性の向上→景気の向上→労働者への還元」という図式を知った労働者を反政府という政治スローガンだけでは組織できないという現実にも直面しているらしい。
神津会長の怒りの元となった立憲民主党への合流拒否について考えれば、もともと総選挙時に産別組合の自主投票に任せたことによって起きたことであり、合流拒否議員が産別の主張に従って行動することは当然のように思われる。何より、連合が一枚岩となって実現した民主党政権が何の実績を上げることなく瓦解したことを記憶している有権者が、枝野新党を過大には評価しないだろうという打算もあるように思う。希望の党を立ち上げる際に小池百合子氏は「しがらみに捉われない政治」を標榜して多くの賛同を得たが、左派系政治家と連合の癒着・しがらみは、彼等の唱える財界と自民党の癒着よりも深刻であるように思える。