衆院の10月解散が現実視される中、自民党総裁選は14日に、枝野新党の代表選は10日にそれぞれ行われる。
自民党総裁選は国会議員に地方組織の代議員が加わる形で、枝野新党は所属国会議員のみの選挙と決定された。立憲民主党の蓮舫副代表は、党員・党友が加わらない自民党総裁選に対して「派閥が総理を決める政党政治では無く、国民が主役、国民が選択できる政党に」と述べたが、蓋を開けてみれば枝野新党も党内最大派閥の「サンクチュアリ(赤松広隆グループ)」の動向で全てが決定する仕組みであることに変わりがないこととなった。独特のロジックで知られる蓮舫氏であるので、「総理になる可能性が全くない代表選は総裁選とは異なる」、「立民結党以来一度も代表選を実施していないことからは大きな前進」と間抜けなブラックジョークで糊塗するのであろう。ブラックジョークは新党の綱領案にも随所にちりばめられている。結党宣言に次いで「私たちの目指すもの」として、①立憲主義を守り象徴天皇制のもと日本国憲法が掲げる「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」を堅持、➁立憲主義を深化させる観点から未来志向の憲法議論を真摯に行う、③草の根の声に基づく熟議を大切しながら民主政治を守り育てる、を挙げている。①については公党として憲法遵守は当然のことであろうが、➁項に至っては「立憲民主党時代は憲法審査会の開催について3年間に1回10分程度の会議に複数回しか応じませんでしたのでリセットをお願いしますという虫の良さである。③項については、代表選を国会議員のみで行うとしていることと見事に反している。地方組織の整備が間に合わないためとしているが野党合流が取り沙汰されて半年以上、合流が現実視されてからも3か月以上の準備期間があったことを思えば、草の根の意見など聞く気が無いことは明らかであるように思える。更に強力な党内グループを結成するであろう小沢一郎氏(選挙参謀?)は、今の時期に国会議員が争う代表選を行うことにすら反対しているとも伝えられている。更に笑えるのは、「新党は政官財のしがらみから脱却して危機に強く信頼できる政府を作る」としている点である。政治理念よりも集票を重んじるあまり体面をかなぐり捨てて連合会長に縋りついたにも拘らず、合流拒否議員を出して連合の全面支持も得られなかった無様な指導力を考えれば、連合のしがらみからの脱却など絵空事に思える。
流石に新党綱領案では有権者を引き寄せることは出来ないことを悟った枝野氏(小沢選対の教唆?)は、代表選出馬表明では経済政策として①中間層の所得税免除➁消費税減税③低所得者への定額給付金支給を挙げたが、財源を埋蔵金で充当する子供手当支給で勝利した民主党マニフェストの焼き直しに他ならない。既に、中国コロナ対策でGDPの半分を使い切って、今後、持続型支援金の増加・延長、ワクチンの購入・接種、医療関係費などから3次補正が避けられない日本に、果たして所得税と消費税の更なる減収に加えて新たな定額給付金(おそらく持続型?)の支給に耐えられるだけの余力が残っているのだろうか。緊縮財政の不況で米価が高騰していた1950(昭和25)年に池田勇人蔵相(後総理)は、国民に分に合った生活を求めたが「貧乏人は麦を食え」の弱者切り捨て発言とされた。しかしながら、緊急時に於いて国民に負担や耐えることを求めることは国政を預かるものとして当然の責務であると思う。中国コロナが今終息したとしても、冷え込んだ経済が中国コロナ以前に戻るには数年かかるとされていることを思えば、更なる耐乏を求める政治家・報道・識者が一向に現れないことの方が不安である。「良薬は口に苦けれども病に利あり」というが、バラマキに活を求めようとする枝野新党は良薬ではないように思う。