法制審議会作業部会の、少年法改正に関する答申案が明らかとなった。
答申案の骨子は、少年法の適用年齢は現行の20歳未満を維持するものの、18・19差の厳罰化と実名公表を可能とする点であると報じられている。凶悪犯罪の低年齢化が問題視されるとともに、20歳未満の犯罪者の実名・顔写真が報道されないという現状を成人犯罪者が悪用して振り込め詐欺の受け子に勧誘する等の事案が度々発生していることから、少年法の適用年齢を民法に合わせて18歳未満とするように望む声は、少年犯罪の被害者家族を中心として根強いと思う。児童福祉法を厳格に執行すれば幼児の虐待死の多くが防げたであろうことや裁判官の情状酌量基準が曖昧であることから、「法律は性悪説で立法されるが、司法・行政が性善説で執行・運用する」を持論としているが、少年法だけは唯一「性善説」で立法されているように思える。少年法の目指すところは、20歳未満の少年犯罪者の社会性を保護しつつ充分な矯正を施せば更生が可能とするものと思うが、実際はどうだろうかと「平成19年版犯罪白書」等を概観した。以下は、ボケから複雑な統計を完全には理解できないままの記述であるので、勘違いがある可能性を予めお断りする。初めに犯罪を犯した年齢に関する統計は見つけることができなかったが、再犯者の年齢統計から推測すると、20歳までの少年期に犯罪を犯した者が全前科者の半分程度を占めていると思われる。また、少年であるが懲役刑以上の刑罰が必要と判断されて少年刑務所に収監された者を除く犯罪少年の矯正についてみると、少年院(法務省管轄、国営)出院者よりも児童自立支援施設(厚労省管轄、国・公営)に送致された者の方が、再犯率は高いことが示されている。家庭裁判所が、少年刑務所(地方裁判所)に送る罪状ではないものの、より強い矯正が必要と判断して少年院に収監し、織の中で教育・矯正指導を受ける方が、時には通学を許される児童自立支援施設で教育されるよりも教育効果が上がっていると観ることも可能である。児童自立支援施設での教育効果が上がらない原因は、少年院では国が統一したプログラムで矯正を目指すのに対して、児童自立支援施設での矯正は主として地方自治体の裁量に任されているために指導の内容・方法にバラツキがあることとされているが、究極の所では、「織の中か外か」に尽きるように思えるので、犯罪少年を更生させるのは少年院に収容して、強い矯正教育を与える方が少年の更生には適していると観ることもできる。以上述べた初犯年齢、矯正方法と再犯率を併せ考えると、犯罪傾向を持つ人間の多くは少年期から犯罪を重ね、更生させるためには少年院以上の施設に隔離して強制的に指導することが必要と結論づけるのも、あながち的外れ・乱暴な意見ではないように思える。
かっては永山裁判に見られたように、犯罪者は悪い社会の被害者とする感傷的な同情が量刑や情状酌量に過度に反映されてきた。それに代わって近年は、幼児期に加えられた暴力が犯罪に結びついたとする精神疾患的な要因で犯罪者を擁護することが流行している。刑法の適用年齢は民法の成人認定とは別とする今回の答申案は、硬軟それぞれが一応同感できる折衷案(落し処)であるのだろうが、酌量原理に「未成熟」という項目を付け加える素地になる危険性をも含んでいるように危惧するものである。刑法と民法間のグレイゾーンを無くして、18歳以上成年=少年法の適用除外とすることが望ましいと考える。