もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

首相公選制を学ぶ

2020年09月15日 | 与党

 自民党総裁選で菅義偉氏が圧倒的勝利をおさめて、第26代総裁(第99代総理大臣が確実)に選出された。

 今回の総裁選は、中国コロナ蔓延下の安倍総理の電撃辞任という背景から党員投票を縮小して行われたが、選挙期間中にも首相公選論が随所に語られたので、改めてためて首相公選制について勉強した。
 首相公選制を望む声が大きくなったため、小泉政権下の2001年6月26日に総理の私的諮問機関として「首相公選制を考える懇談会」が設けられ、2002年8月7日に首相公選の以下の3案が答申された。
第1案:国民が首相指名選挙を直接行う案
    首相と副首相が一対となって立候補し国民が直接選出する。首相・副首相は任期4年(3選禁止)で衆議院議員総選挙を同時に行う。
第2案:議院内閣制を前提とした首相統治体制案
    憲法に政党条項を導入し衆議院選挙で各政党が首相候補を明示して選挙を行うことで衆議院選挙を事実上の首相指名選挙として機能させる。
第3案:現行憲法の枠内における改革案(野党第一党と与党第一党内での党首選出手続きを国民一般に開かれたものにする)
    憲法改正ではなく各党が党則を改正することによって可能である。
 第1案と第2案については、議員選挙で落選しても首相になることができるために憲法が定める議員内閣制に反する場合も予想されるので憲法改正が不可欠となる。特に、第1案は実質的な大統領制であるために首相権限の範囲や限界を見直す必要が生じて、天皇制との関連までの議論が必要になるとされている。
 このことから自民党は、答申以前の総裁選に関する党則を変更して、党員・党友枠(いわゆる地方票)を拡大して、より民意を反映させる制度としている。
 今回の総裁選において「総裁選=首相選であり党員以外も参加できる公選を望む」と発言した顔ぶれを眺めると、相当数の人が憲法改正反対で知られる人であり、その人々は首相公選と護憲という背反をどのように折り合いをつけているのだろうか。

 現在多くの国で採用されている議院内閣制については、立法と行政の分権が不明確で、どちらかに従属する危険性が有るとされているものの、立法と行政が足並みを揃えることで政治・外交が安定するとされている。首長公選のアメリカでは大統領と下院がねじれた場合、法律に対する大統領の拒否権、大統領提案の予算案を否決する等によって国政が混乱することも、首相公選のデメリットの参考であるように思う。
 さらには、現憲法では内閣不信任決議という制度で首相の弾劾・更迭を図っているが、首相公選制にあっては憲法に「首相の弾劾」をも規定する必要があるように思う。
 以上のことから、日本に首相公選制度を導入するには国体の根本的改革が必要であり、現在はその論戦に長期間を費消できる環境ではないように思える。