もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

陸自電子戦司令部の設置構想

2020年09月21日 | 自衛隊

 防衛省が陸上総隊直轄の電子戦部隊を新設して、司令部を朝霞駐屯地に整備する方向で予算要求することが報じられた。

 整備する部隊の配置や能力の詳細は当然のことながら公表されないが、現在熊本と北海道にあるとされる電子戦部隊を統合運用するものと推測されている。
 整備は、北朝鮮のミサイル対処、尖閣諸島を始めとする島嶼防衛の一環とする計画であろうが、いかにも遅いと云わざるを得ない。
 電子戦の目的は武力行使に先立って、敵の警戒監視の目をつぶすことと、指揮管制を無力化することであり、さらには敵の電子攻撃を無力化、又は、電子攻撃を凌ぐことであると思う。そのためには日常で蓄積した敵の電子情報を活用することが不可欠であることから情報収集部隊と相互にリアルタイムに補完し合う必要があるとともに、正面兵力に対して警報を伝達する必要がある。
 この様相に立って自衛隊の兵力整備を眺めると、構想に一貫性が無いように思われる。敵の電子線攻撃は、先ず空自のサイトや艦艇に向けられるであろうが、それらに対して北海道・熊本・朝霞に本拠を持つ陸自電子戦部隊はどのように対処するのだろうか。勿論、陸自の電子戦器材は移動式・車載式で整備されるのだろうが、能力的には局地対処が精一杯でPAC3防御くらいしか期待できないように思える。朝霞の部隊は首都圏(政府機能)防御が主任務と思われるので、成田や羽田は防御できたとしても、関空・千歳・福岡空港くらいは考慮する必要があるのではないだろうか。
 また、八重山駐屯地整備には電子戦が考慮されているのだろうか?。イージスアショアや代替のミサイル防衛構想とは軌を一にしているのだろうか?。電子情報の蓄積・アップデートについても常続的に尖閣水域で活動している巡視船や海空の監視飛行で収集した電子情報との関係はどうなっているのだろうか?。等々、多くの疑問点が湧く。

 陸海空3自衛隊の統合運用が叫ばれて久しいが、予算・人員の壁からであろうか兵力整備については、縦割りで硬直化しているのではないだろうかと懸念される。軍事情報については情報本部に集約して一元化が図られているが、軍事情報と密接にリンクする電子戦であれば、司令部は情報本部と同様に防衛省直轄の機関とすべきではないだろうか。これまでの電子線は、軍事目標の無力化であったが、近年は原発・空港・鉄道等にまで対象が拡大しており、現に成田空港では航空管制のための電波が妨害されることが起きていることを思えば、政府の危機管理センターの一部であってもおかしくないように思う。
 素人の杞憂であろうが、兵力整備には一貫した思想を以て取り組んで欲しいと願うところであり、そのためには整備計画策定の過程に制服(統合幕僚会議)が積極的に関与できる仕組みが必要であるように思える。