日本画壇の錚々たる大家の贋作が流通していることが報じられた。
贋作は大阪の美術商が奈良県の会社に発注したもので、当の美術商も贋作を認めて居る。
贋作されたのは、東山魁夷・平山郁夫・片岡球子・有元利夫画伯等の人気画家の作品であるが、贋作が長期に亘っていることや既に800点余りも贋作が確認されていることから、さらに被害が拡大する恐れもあるらしい。今回の贋作は、画家や遺族の承諾を得ずにリトグラフ刷りするという手口であるらしい。かってリトグラフの作成過程を映像で見たが、刷り上がった版画の画質や色合いを画家が1枚1枚確認した上で、一貫番号/総枚数とサインを入れていたように、画家にとっては原画と変わらぬ熱情を持っているものと思う。画廊で見た経験からであるが印刷枚数1000枚以上というものもあり、原画であれば数百万円もする有名画家の絵画が、リトグラフ(石版画:ただし現在ではアルミ原版等を使用しているらしい)であればその1/10ほどの額で購入できることから、庶民の(とはいってもある程度の余裕がある)美術愛好家からは人気を博している。
かっての贋作は、原画を忠実に模写する方法で、贋作者にも本来の画家に負けず劣らずの画力が必要であったが、リトグラフであれば先端技術を使用することによって本物と見分けのつかない物を作り出すことも可能であるように思う。今回発覚したの一因は、紙質・色合い・サインに違和感を持たれたこととされるので、贋作としての出来もイマイチであったのかも知れないが、不信を持たれた最大の要因は、大量の作品が市場に出回り値崩れを起こしたためとされている。
業界団体は所有者に真贋鑑定を呼び掛け、贋作を販売した可能性があるデパートは買戻しを発表する等、美術界は混乱しているが偽物を掴まされた人には深く同情するものである。
贋作が絶えない原因は金銭欲によるものが殆どであろうが、中には模写を通じて画家に傾倒するあまり結果として贋作を描いたケースもあるらしい。また、成功したコローが金に困った弟子の描いた「コロー風の絵」にサインを入れてやった結果、「コローは生涯2000点の絵を描いたが、そのうち3000点がアメリカにある」とコローの贋作の多さと真贋を見抜けずに買い漁る金満アメリカ人を嘲笑・揶揄する言葉がヨーロッパの美術界にあるらしい。
贋作されるほどの絵を描いてみたいものであるが、その前に教室の先生様から叱られないことが先決という現状。嗚呼!!