栃木県足利市の山火事は100haを消失しても依然として延焼中である。
映像で見る限りであるが、火災現場は急峻であるために人力による消火は極めて困難であるように思える。そのために消防による人力消火は人家への延焼防止が主で、直接消火はヘリコプターによる消火水の散布が主であろうと推測している。
昨年のオーストラリアの山火事(森林火災というべきか)では、焼失面積は日本国土の6割にあたる2300万ha.にも及び、煙は南米にまで到達、空港・空路が閉鎖されるという大被害となったことが記憶に新しい。
一般的に山火事の消火は可燃物を取り除く「破壊消火」しかないとされている。破壊消火は延焼方向の前方に立木等を伐採した防火帯を作って拡大を防ぐという人海戦術であるが、飛び火や火が背後に回り込んで消火従事者が取り残されるという極めて危険な消火法であり、現在では行われていないのではと推測する。
昭和40年代のことであるが基地近傍の山火事に2~3度出動したことがある。列兵であったので出動の背景は知る由もなく、今にして思えば災害派遣要請に基づくものでは無かったように思うが、山火事に対する訓練どころか知識もない素人が全員無事であったことは幸運であったと思っている。この時の消火法も防火帯を作ることであったが、艦の防水作業で使用する鋸を数個持っているだけの貧弱な装備では作業もままならず、防火帯を作りかけては火勢に押されて後退して新たな防火帯造りに着手する繰り返しで、結局は稜線まで燃え尽きて自然消火したと記憶している。
自衛艦には「派遣防火部署」が定められ、例えば基地や仮泊地で停泊中に民家火災を発見した場合には10分程度で消火隊を発艦できる様に訓練している。自治体の消防態勢が不十分であった頃は、酸素呼吸器(OBA)を装着して火災に肉薄できる自衛艦の派遣防火隊は少なからぬ実績を上げたと思っているが、残念なことに派遣防火隊の消火は徹底しているために爾後の現場検証を困難にするとされており、自治体の消防体制と装備が整備された現在では、出動した派遣防火帯も延焼防止の警戒が主であると聞いている。
足利山火事の原因は特定されてはいないものの、発火場所がハイカーの休憩所付近で発火前には同所での喫煙が目撃されたと報じられることから、「タバコの火の不始末」の疑いが濃厚である。
産経抄によると日本では年間1,200件ほどの山火事が発生しており、落雷等による自然発火は希で殆どは焚火や野焼きからの延焼であるらしい。乾燥した冬季は野焼きには絶好であるが、山火事に発展する可能性も極めて高いのだろう。
歩きたばこをやめて、携帯灰皿を携行して、と心掛けているが、注意しなければと思う以上に、「(煙草を)止めれば」の視線が痛い。