もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

ジュノサイドとホロコーストを学ぶ

2021年02月27日 | 歴史

 衆院予算委員会(分科会)でウイグル族弾圧が集中的に議論されたことが報じられた。

 自分の理解では、ナチのユダヤ人虐殺やポルポト(カンボジア)の迫害を日本では「ホロコースト」と表現していたように思っているが、中国のウイグル族に対する弾圧(中国は「教化」と強弁)を西側諸国は「ジュノサイド」と定義しているので、例によってウィキペディアを中心として両者の違いを勉強した。
 ホロコーストとは「焼く」というギリシア語がラテン語~フランス語~英語となった言葉で、元来は古代ユダヤ教の祭事で獣を丸焼きにして神前に供える宗教用語の「燔祭(はんさい)」を意味しているが、この言葉がナチスによるユダヤ人大量殺害を意味するようになったのは、大戦中から大戦後しばらくの間、ユダヤ人の間で「ドイツはユダヤ人を生きたまま火の中に投げ入れて焼き殺している」との言説が信じられていたためとされていた(ユダヤ教徒は犯罪に対して神聖な宗教用語が使用されることに嫌悪感を持っているらしい)。
 ジュノサイドは、アメリカに亡命したユダヤ系ポーランド人の法律家ラファエル・レムキンが1944年に自著で使用したもので、ギリシャ語の「種族」とラテン語の「殺戮」の合成語(造語)とされている。
 ナチのユダヤ人虐殺も英語圏では「ジェノサイド」が一般的に使用されていたが、1978年アメリカで制作されたテレビドラマ「ホロコースト」が多くの国で放映された結果、民族絶滅政策の過程を「ホロコースト」と呼ぶことが定着したとされているので、自分の理解も仕方のないところであろうか。
 国際的にはジェノサイド条約(集団殺害罪の防止および処罰に関する条約)が結ばれて、150カ国以上が加盟・批准しているが日本は批准していない。条約で集団殺害とは、国民的、人種的、民族的又は宗教的集団の全部又は一部を破壊する行為と定義されているが、国際的にジュノサイドと認定(認知?)されているのは、ナチのユダヤ人虐殺、フツ族がツチ族を虐殺したルワンダ内戦、セルビア人がクロアチア人浄化を掲げたボスニア紛争などに限られており、被害者ではこれらに匹敵するであろうスターリン粛清、文化大革命、ポルポトの蛮行等は含まれていないことから、民族・人種という要因が無い場合には国連も単なる内政問題と捉えるようである。このことからであろうか中国に阿る故であろうか、日本の推定では被害者3000人とされる南京虐殺もジュノサイドと位置付けられている。

 日本がジュノサイド条約を批准できないのは、ジュノサイド条約がジュノサイド国家に対して日本国憲法が禁じる武力による懲罰・是正を加盟国に求めていることと、域外支援者に対しても国内法に無い共謀罪による処罰を求めているためである。昨日の予算委員会で質問に立った立憲民主党の松原仁議員も憲法9条改正を拒否し、更にはテロ特措法改正時には準備材を共謀罪と呼んで非難した背景からか、条約の批准を迫ることもなく、これまで政府が繰り返し説明して明らかにされている非加盟理由を問うだけという「何の役にも立たない」ものであったようである。
 世界と同調できない・世界基準とはかけ離れた憲法規定、立派ではあるが古色蒼然とした憲法は、何時まで国際社会から理解を得られるのだろうか。