2月9日に『潜水艦「そうりゅう」の事故に思う』と題して掲載したが、自分の早とちりが有ったので一部訂正しお詫びします。
自分の主張の大意は「潜水艦の艦名まで公表することは敵を利するだけであるので不要』とするものであった。
自分は、事故当時「そうりゅう」が哨戒監視の実任務に従事していたと考えて、哨戒行動の実態の重要な部分である艦名と事故海域の公表は避けるべきとしたもので、艦艇の実状を暴露しかねない情報公開は慎まなければならないという考えは変わっていないが、「そうりゅう」は検査修理後の海上試験として潜航浮上を実施していたものであった。海上試験であれば造船会社との契約など諸々の要因を考えれば、試験海域の選択にもやむを得ない面があったように思う。また、一部の報道で触れられているような、チームワークや海面確認の手順等に些かの練度低下が有ったのかも知れない。「そうりゅう」も潜舵が損傷したために浮上して帰投・回航しなければならないために、艦名の秘匿はあまり意味をなさなかったのであろうと考える。
潜水艦勤務の経験がないので水上艦の検査・修理と教育訓練のあらましを紹介する。艦艇は概ね1年に1回(約1か月間)、入渠を伴う検査・修理を行うが、修理のための予算が潤沢でないことから「業者の能力に依存しなけれ出来ないもの」を除く作業の殆どを乗員が行い、特に錆打ちや塗装などの船体整備は、艦底・高所(マスト)部分を除いてすべて乗員が行うケースが殆どである。修理地における乗員は、兵隊さんよりもむしろ工員さんに近い勤務となるために、陸上訓練施設で代替訓練ができるものを除いては、実艦・実機による訓練は出来ないので乗員の練度は必然的に低下することとなる。更に、修理期間中に交代した乗員にとっては修理後の海上試験がぶっつけ本番の航海となり、チームワークどころではない。
検査・修理が終わったら一定期間「慣熟訓練」の機会が与えられて練度回復に努めた後、場合によっては術科のエキスパートが配属されている部隊からの訓練指導を受ける。艦艇は、慣熟訓練や訓練指導の約1か月間近くは高度な部隊訓練や実任務には参加・従事できないとされているが、可動艦の状況によっては悠長な練度回復期間を得られないこともしばしばである。
自分はイージス・アショアの装備断念に際して、前述した艦艇の非可動期間若しくは全能発揮に支障がある期間を念頭において、代替手段として「商船の船腹を利用した海上リグが適当と」主張したが、自民党の国防部会主導で現有のイージス艦ではない「イージスシステム搭載艦2隻建造」に決定された。艦の区分はどうであれ、船である限り艦の整備と乗員の慣熟は不可欠であり、そのためには約2か月間は正常な運用ができないことを理解した上での決定であったのだろうかとの疑念を棄て切れない。年間を通じて2隻の艦を可動させるためには最低でも3隻建造する必要があり、人員に悩む海上自衛隊にその余力はあるのだろうかとも心配している。