バイデン大統領が習近平主席と電話会談した。
会談では、バイデン氏が対中強硬姿勢維持を改めて通告したとされるので、対中政策の急激な軟化という最悪の不安要素は和らいだ感がある。発足後20日を経過したバイデン政権であるが、多くの論評を眺めれば、内政不安を抱えるアメリカとバイデン政権の不安定さが窺えるようである。
バイデン政権の現状を例えると4頭曳の幌馬車であり、1頭はオバマ政権の戦略的忍耐の反省に基づく対中強硬姿勢を、2頭目は人権擁護を、3頭目はグローバル経済への回帰・推進を、そして最後の4頭目は気候変動問題解決のために走っているように思える。2頭目までは米中対立状態を維持する政策であり、国内安定のためには大統領選史上2番目(第1位との見方もある)の投票を寄せたトランプ政策支持者に配慮する姿勢が必要なことから、当面は維持せざるを得ないと思っている。
しかしながら、オバマケアの福祉政策に代表される民主党の目指す大きな政府には、GAFAを始めとするグローバル企業からの税収は不可欠の要素であることから、3頭目の牽引力は無視できない存在となりトランプ政権で緒に就いた中国デカップリングはなし崩し的に霧消するかも知れない。
そして最も危険と観るのは、気候変動問題解決のために走る4頭目の存在である。既にパリ協定復帰の大統領令に署名したように、対気候変動グループはバイデン政権の内部で確固たる地位を確保しているとされている。
3・4頭目の目指す政策・目標は、中國との協調なしには実現し得ないものであり、これらの政策実現のためには1・2頭目の力の一部を中国に差し出す懸念は拭えない。それは、香港・台湾への支援縮小であるか、東南シナ海での自由の航行作戦(プレゼンス)の変更であるか、韓国THAADの縮小であるか、在沖韓駐留兵力の縮小であるか、対北制裁の縮小であるか・・・全く予想できないが、トランプ支持者の軟化による国内融和の兆しが感じられる時点で必ずや姿を現すように思う。
幌馬車指揮官は、幌馬車の安全を確保するためには、先住民族の利益など一切顧慮しないし時には容赦ない攻撃を加える。トランプ幌馬車隊では武装が貧弱であるが豊かな馬車には護衛するための金品(駐留経費増額)を要求したが、バイデン幌馬車隊では率いている何両かの馬車をアパッチ中国に差し出すか、差し出さないまでもアパッチ中国の略奪に観て見ぬふりをするかもしれない。
日本にとって、どちらの指揮官に従った方が有利であるのか、興味をもって推移を見守りたいと思っているが、日本への余波が小さいことを願っている。