もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

バイデン政権1か月

2021年02月21日 | アメリカ

 バイデン政権が発足して1カ月が経過した。

 バイデン大統領はトランプ大統領の発出した大統領令の多くを無効・否定して国際社会に復帰した印象を与える傍らで、対中強硬路線維持を表明したことによってNATO諸国からは歓迎されていると伝えられている。日本にとっても日米豪印戦略対話(Quad)態勢維持、尖閣水域の日米安保適用範囲確約、米軍駐留経費増額交渉1年延期、等もあって、一先ずの安堵感を持って見守られているようである。
 好意的に過ぎるかもしれないが、トランプ氏の唱えた「米国第一」はアメリカの利益のみを守ることではなく、国際関係の安定、特に中國の孤立化・排除(デカップリング)については国際機関の小田原評定に俟つことなくアメリカが単独で行い、追随を可かとする国とは2国間の条約・協定によるとしたことであると理解している。
 一方、バイデン氏が従来の多国間主義とされる枠組みに回帰したことは、対中政策に関してもアメリカが先頭に立ってリードすることは無いとするもので、中国に対しては最大のプレゼントになる方針転換であるように思える。それもあってか、19日に行われたG7オンライン首脳会議では「(対中露では)反射的に反対したり、冷戦時代の硬直的な陣営に回帰してはならない」と演説して、各国の主張如何によってはアメリカの「腰砕け」も有り得ることを示唆してもいるらしい。
 バイデン大統領の現在の関心事は、大統領選で露わになった(不正選挙で墓穴?)国内分断の修復であり、コロナ禍の元凶である中国に対して積極的に譲歩することは許されない状況にある。そのため中国に歩み寄るためには、関係国または国際機関の意見に「しぶしぶ従う」という姿勢を見せなければならず、国際機関への復帰は中国譲歩の布石に他ならないと思っている。
 以前にも書いたことの繰り返しになるが、バイデン氏を始めとしてスタッフの多くがオバマ政権の中核であったことを思えば、オバマ政権のコピーである「対中戦略的忍耐」が鮮明(概ね2年後?)になることは避けられと思っている。

 和を第一とする日本の風土、特に戦後教育に培われた土壌では強力な指導者は敬遠され調整型の指導者が歓迎されるが、調整型の欠点は、決定に時間を要することと、各界の意見を汲んだために平均的な施策しか行えないことであると思っている。3権+軍の全てを意のままにできる習近平主席と云う強力な指導者に対して、アメリカ大統領が単独で立ち向かうとしたトランプ氏に対してバイデン大統領は「アメリカも集団の一員として」対抗しようとしているが、中核を失った集団が果たして中国に抗し得るのかとの不安は拭えないように思える。