もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

日本も対中制裁に参加を

2020年07月25日 | 中国

 米中関係は、お互いの公館閉鎖を求める事態まで発展している。

 アメリカは在ヒューストンの・中国は在成都の総領事館をそれぞれ閉鎖するよう通知し、アメリカは中国人留学生や研究者をスパイ容疑で摘発するとともにビザの取得・更新にも制限を加えている等、米中冷戦は加速している。また、ポンペオ国務長官はニクソン政権以降の対中融和政策が誤りであったと演説し、中国共産党をモンスターに育て上げたのはアメリカを始めとするG7各国であったともしている。中国コロナの影響で一層鮮明になった米中2国間の確執は、今や中国対G7(日本・イタリアを除く)の対立に格上げされたとみるべきであろう。債務超過の青息吐息であったイタリアとスペインは一帯一路構想の西の終着点との位置付けを受け入れる形で中国の軍門に下ろうとしていたが、EUが財政支援することが決定したために中国の軛から逃れ得るかも知れない。両国に対する経済支援についてはEUの理念に反するとして強硬に反対していたフランスが一転して支援に合意したのも、アメリカの姿勢と同様に中国共産党に依る世界制覇の危険性を察知したためかと思う。フランスと云えばパリ・コミューン以来の社会主義大好きの国民性に加えて、西側諸国に先駆けて中華人民共和国を承認したド・ゴール大統領に見られるように、嫌米親中の旗頭であったが、あからさまな中華思想は流石に腹に据えかねたものであろうか。アメリカの提唱するファーウェイ社の締め出しについてあまり積極的でなかった英・仏・独・加・豪も相次いで締め出し強化に転舵し、ファーウェイ製品を使用する通信業者に対しては電波使用許可を更新しないとする国も出始めている。G7の中で唯一中国と領土問題を抱えている日本としては、他の参加国以上に対中強硬姿勢であるべきと思うが、財界と親中知識人に配慮する形で、習近平氏の国賓招待構想を棄て切れていない。ファーウェイ製品に対しても各府省庁や自衛隊などが使用する情報通信機器からは事実上排除した形であるが、ファーウェイ社が事実上の国営会社であり疑いもなく諜報の核心的存在であることが明らかになった今でも、財界に対しては政経分離の原則を盾に要請という弱腰である。

 日本の対中政策を顧みれば、対中ODAを与え続けたこと、日本人が尖閣諸島に上陸することを一切禁じてきたこと、戦略的に重要な土地までも中国人に取得を許したこと、巡視船に体当たりした中国人船長を無罪放免したこと、孔子学院の増殖を野放しにしていること、等々、政府・外務省の失敗と敗北の歴史である。”座して死を待つよりは”と対米戦に踏み切ったのは、歴史的に見れば昨日のことである。日本も対中制裁に転舵しよう。


安楽死と嘱託殺人

2020年07月24日 | 社会・政治問題

 安楽死を希望する筋萎縮症の女性に薬物を投与した2名の医師が、嘱託殺人容疑で逮捕された。

 2名の医師は、かねてから安楽死肯定を主張し、それに沿った著作があるものの、主治医でもなく更には100万円の謝礼を受け取ったともされていることから、医学倫理に基づく行為ではない闇ビジネスの可能性もうわさされている。これまで、自殺願望者に手助けをするという自殺ほう助に手を染める者は少なからず存在していたが、2017(平成29)年に起きた座間9遺体事件のように、闇ビジネが疑われるものが殆どであった。しかしながら、2018年に元東大教授で高名な評論家の西部邁氏が入水自殺したケースでは、以前から公言していた「自裁死」の意思に共鳴した「10年近く出演していた番組の編集担当者」と「西部氏の私塾の塾頭」の2名が無償で手助けした事例のように、世間が容認するか否かは別にして、本人が考察の結果たどり着いた死生観と健常かつ明確な自殺の意志に対して、献身的なほう助者が出るのは避けられないのではないだろうか。この事件を機に超高齢者社会の日本でも安楽死問題が再燃したが、立法が議論されることもないままに再び消滅してしまった感がある。安楽死に対する世界の現状を調べると、笹川記念保健協力財団の資料では①積極的安楽死のみ容認されている国: カナダ(ケベック州)、コロンビア、②医師等自殺幇助のみ容認されている国:アメリカ(オレゴン州、カリフォルニア州、コロラド州、コロンビア特別区、モンタナ州、ワシントン州、バーモント州、スイス、③両方が容認されている国: オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、カナダ、豪(ビクトリア州)となっていた。世界に先駆けて2014年に安楽死を容認したオランダでは、1971年に脳溢血で倒れた母親の懇請を容れた医師である娘がモルヒネを過剰投与した「ポストマ医師安楽死事件(懲役1週間、執行猶予1年)」が口火となり、1981年には王立オランダ医師会が終末患者の治療中止を容認・勅令により「オランダ国家安楽死委員会」が設置された。以後、40年以上の論議と幾多の変遷を経て2014年に立法したものであるが、今もって安楽死を扶助する営利・非営利の団体を「自殺志願者に媚びへつらう組織」とする意見も根強いようである。また終末患者への治療中止については多くの国で認められている。日本では安楽死はもとより終末患者の治療中止すら法的に認められていないが、回復の可能性が無い患者の生命維持装置を切ることは半ば公然と行われていると思う。

 自殺を神の教えに背く行為とするキリスト教国で、神の教えに反するであろう安楽死が容認された宗教的背景は良く分らないが、生命倫理に関する何等かの啓示が聖書に隠されていたのだろうと推測する。安楽死を容認した各国でも、立法以前には嘱託殺人は憲法や刑法で禁じられていたものと思うが、唯一神の不変の預言である聖書の前には変化を当然とする六法の変更は当然のことであろうが、現行憲法の他には絶対の価値基準を持たない日本では、安楽死を討論することさえ不可能で、もし、安楽死を議論するならば憲法改正をも論じる必要があることから、野党は絶対に応じようとはしないだろう。個人の尊厳よりも憲法を貴ぶ国は、独裁国家以外には見当たらないように思うのだが。


老け顔・AGE・マイタケ

2020年07月23日 | 社会・政治問題

 老け顔にはそれなりの理由があることを知った。

 中国コロナ禍満載の新聞記事に飽きて読んだ健康欄で、昭和大の山岸昌一教授が老け顔の由来と寿命と疾病について解説されていた。TVの健康番組・健康本には全く興味が無く、頭と体が同速度で自然に衰えていくことが理想と思っていたが、定期的に食事会を開く同級生の中で最も老け顔であることは自覚していた。教授によると、老化は食品に含まれたり調理の過程や体内で生成されるAGE(終末糖化産物)なるものによって進行し、皮膚のたんぱく質がAGE化すればしわ・たるみ・くすみとなって老け顔になり、血管で起きると動脈硬化・脳梗塞・心筋梗塞の原因となり、その他にも癌・アルツハイマー・骨粗しょう症の誘因にも挙げられるとされていた。自分自身の老け顔は皮膚に現れた結果であろうが、知らないだけで臓器や脳細胞もAGE化しているのかも知れない。予防法については、甘い物・炭酸飲料・スナック菓子の摂り過ぎに注意する他、たんぱく質を加熱調理することで生成されるAGEを減少させるためにはステーキ・唐揚げよりもしゃぶしゃぶを、焼き魚よりも刺身で食べる方が良いと説き、AGEを抑制する食品としてはレモン酢・マイタケ・ブロッコリースプラウト(?)が挙げられていた。医学者の研究の成果として健康に関する新説が次々と発表されるが、あまり長続きするものは無いように思う。かって猛威を振るったコレストロールや肥満度悪人説は、いつの間にか適度のコレステロールや肥満の方が免疫力や長命に結びつくと姿を変えている。健康食品につぃても紅茶キノコはとうの昔に忘れ去られ、長命の元とされた乳酸菌・ヨーグルトも接種後数日で体外に排出されるとされて店頭でダブついているらしい。どのような情報によってかは知らないが数か月前には玉ねぎが姿を消したことがあったし、AGE=老け顔の図式が広まればマイタケも行方不明になる可能性もある。手を変え姿を変えて健康ブーム自体は長続きしているらしいが、食材成分の科学的データを基準に食事するなど、考えたくもない。宗教やアレルギーから食材を選ばなければならない人には申し訳ないが、例え「老け顔」と呼ばれようとも食べたいものを食べる方が性分に合っているように思う。

 マイタケとカタカナ表記したが、本当は舞茸であるらしい。まだ栽培された雪国マイタケが店頭に並ばなかった昭和の終わり頃、大湊(むつ市)で地元隊員の「きのこ狩り」に同行した時、それを見つけた時には踊り狂うほど珍しいために「舞茸」と呼ぶキノコがあり、松茸と同じく舞茸の自生する場所は身内にも内緒にして、死ぬ前に子供にこっそり遺言する一子相伝の珍種であることを教えられたことも懐かしく思い出される。御裾分けされたナメコ・ボリボリ(正式名称は不明)をふんだんに入れたキノコ鍋の風味は、今でも思い出されるのみならず、当時中学生であった子供も記憶しているらしい。


Go Toトラブルキャンペーン

2020年07月22日 | コロナ

 本日、Go Toトラベルキャンペーンが発動された。

 グランドデザインの不備、周知の不徹底等が叫ばれるとともに中国コロナ感染第2波が確実に進行している現状から、「トラブルキャンペーン」の船出であるように思う。Go Toキャンペーンは4月に成立した2020年度補正予算に盛り込まれていたもので、キャンペーンは、国交省(観光庁)所管で国内旅行の費用を補助する「Go To トラベル」、農水省が所管して飲食業の再生を支援する「Go To イート」、経産省がイベントなどのチケット代を補助するの「Go Toイベント」、商店街振興の「Go To商店街」(地域振興を助成)で構成されているが、トラベルキャンペーンに続く各キャンペーンには今回のような齟齬を来たさないようにして欲しいものである。公共土木事業以外で国が行ったキャンペーンで思い出されるのが、1988(昭和63)年から1989(平成元)年にかけて、各市区町村に対し地域振興のために1億円を交付した政策である。正式名称は「自ら考え自ら行う地域づくり事業」であったらしいが、地方交付金1億円交付からから「ふるさと創生基金」と呼ばれた。1990(平成2)年に自治省が行った最終報告では、1自治体当たり平均3.3件の事業を手掛け、このうち人材育成などの「ソフト事業」が建物建設などの「ハード事業」の約2倍余りに上ったと分析されているが、箱物を作るには少なすぎたのが実態であろうと思っている。また、1億円の使い道について考えあぐねた自治体では、使途計画の立案を民間業者に委託した自治体も多く、1億円の少なからぬ部分が計画策定に費やされたともされている。明治維新の廃藩置県で家禄を失った武士の多くが解雇一時金を基に商売を始めたが、利潤や原価意識に乏しいためにその多くが失敗して「武士の商法」なる言葉を残すにとどまった。先のふるさと創生資金や今回のGo Toキャンペーンにも、なにやら武士の商法と同じ臭いを嗅ぐのは自分だけであろうか。

 Go Toトラベルキャンペーンの出鼻をくじいたのは、キャンセル料の補償である。政府の公式発表前に、補助金を前提に「常よりも豪華な旅行を・人に先んじて」予約したさもしい都民を救済する必要があるのだろうか。報道で知る限りそれらの人々は、日々の糧に窮している階層ではないように思える。スポーツ競技ではフライングした選手は救済されないし、生命・火災保険契約でも効力発生までに発生した厄災は補償されない。国に責任が無いケースにまで国費で救済する今回の「キャンセル補償」は悪しき前例となる様に思うとともに、制度の抜け穴利用に敏な悪しき業者は「キャンセル料の不正受給」の道を見つけているのではとも危惧している。


M資金を学ぶ

2020年07月21日 | 歴史

 平成30年に摘発された「M資金詐欺」の解明が進んでいることが報じられた。

 戦後幾度となく繰り返されたM資金詐欺は、概ね資産家がターゲットにされているために被害額も桁違いで、今回の事案でも大手飲食チェーのトップが28億円搾取されたとされている。企業経営者ですら射幸心をくすぐられるM資金とは何かと勉強した。M資金とは、連合国軍最高司令部(GHQ)が占領下の日本で接収した巨額の資金が現在も日本政府の一部の人々によって秘密運用され、これまでに多くの国家的危機に際して利用されたものの、なお巨額の資産が残されているというものである。Mは、GHQ経済科学局の第2代局長であったマーカット少将の頭文字とするのが定説となっている。物語の始まりは、大東亜戦争末期の金属類回収令(昭和18年)で貴金属を含む戦争継続のための資源供出を求めたことに遡る。全国から寄せられた貴金属の大半は使用されることもなく日銀の本支店で保管されていたが、その額は戦後の大蔵省の発表によるとダイヤだけでも150万個、16万カラットにもなったとされる。これらの資産は敗戦とともにGHQ経済科学局の管理下に置かれることになった。講和条約発効後、これらの資産はGHQから接収解除され復興資金に充てられたが、使途については不透明な部分もあったとされている。その後、昭和33年の「接収貴金属等の処理に関する法律」で貴金属は供出した人に返還されることになったが、戦災による被災死や関係書類の消失によって返還不能となった多くの貴金属は国の所有するところとなった。では、なぜM資金が詐欺に利用されるかと云うと、GHQ経済科学局の日銀金庫管理担当官だったエドワード・マレーが帰国後、約500個のダイヤを不正に持ち出した容疑で米国当局に逮捕され禁固10年の実刑判決を受けたり、初代局長・同局将校ら十数人が後に米国で汚職や横領などの罪で検挙・更迭されたことから、秘密資金としてなお隠匿された部分があるとされるためである。また1946(昭和21)年に日本軍が東京湾の越中島海底に隠匿していた大量の貴金属地金が米軍によって発見・押収された事件等から、明らかにされていない隠匿資産があると噂されることも大きいようである。さらにGHQの管理下に置かれた押収貴金属類の返還を受けた日本金属が会社を清算した際に5億6580万円もの残余財産があったこともM資金の額と存在に信憑性を与えているらしい。1966(昭和41)年に、政府は国有財産となった供出(接収)ダイヤを業者・個人に売却し、公式には金属類回収令に起因する戦後処理を終えたが、その後もM資金の存在を信じる人も多く、これまでM資金詐欺は数百件も起きているとされている。

 山下奉文大将率いる日本軍が終戦時フィリピンに埋めたとされるマル福金貨を含む山下財宝、大政奉還時の勘定奉行小栗忠順が幕府再興資金として赤城山中へ埋めたとされる徳川埋蔵金とともに、M資金は都市伝説として笑い飛ばすには惜しいもので、当時の社会背景と混乱を考えれば、説得力を持った詐欺の材料として今も活用できるのだろう。一方で、資産を投げ打って山下財宝や徳川埋蔵金の発見に執念を燃やす人の存在も報じられており、そこには金銭を度外視したロマンも隠されているようにも見える。