一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

2020年、20%

2011-06-22 | 原発事故・節電・原発問題

今週号の東洋経済の寺島実郎氏へのインタビュー。
菅直人首相がG8で2020年までの出来るだけ早い時期に自然エネルギーの割合を20%を目指すとした発言について「中途半端」だと指摘しています。  

 そもそも昨年6月に発表したエネルギー基本政策においてさえ、30年には再生可能エネルギーの比率を2割に引き上げるとしていた。・・・つまり昨年のエネルギー基本計画は一方で30年までに原発の比率を50%に引き上げるとしていた。それが今回の事故で後退し、逆立ちしても25%が限度、現実的には20%ぐらいだろう。その差の30%を何で埋めるのか。
 それは化石燃料か再生可能エネルギーしかないわけだからその半分を埋めるとして再生可能エネルギーは35%になっていないとつじつまが合わない。残り15%を化石燃料で賄うとしても、中東情勢も考えれば今よりもさらに化石燃料比率を高めてやっていけるのかどうか。・・・少なくとも30%以上を目標にしてパラダイム転換をしていかなければ、20%目標さえ達成できないのではないか。  

政府が策定した平成22年6月のエネルギー基本計画を見ると  

電源構成に占めるゼロ・エミッション電源(原子力及び再生可能エネルギー由来)の比率を約70%(2020年には約50%以上)とする5。(現状34%)
(第2章 第1節 2030 年に向けた目標 2)

とあります。  

寺島氏の指摘する原子力比率50%というのは基本計画には見当たらなかったのですが、それが正しいとすると、2030年の時点で水力+新エネルギー(*)で20%、水力(8%)が横ばいだとすると新エネルギーのシェア12%を目指すのが当初の政府の計画だったことになります。

* 基本計画では「再生可能エネルギー」の中に水力発電も入れています(p23参照)。そこで以下太陽光発電などのいわゆる自然エネルギーについては区別のために以下「新エネルギー」と言います。  

一方で2020年の「原子力+再生可能エネルギーで50%」という目標については、今回の事故の影響による原発のシェア低下を供給量の5%(=事故前の原発の発電量の1/5)と想定すると、水力が横ばいとして新エネルギーのシェアを20%にすれば確かに帳尻は合います。  
菅首相もそのへんを念頭において言っているのかもしれません。  

少なくとも昨年のエネルギー基本計画では「2030年までに新エネルギー12%増」という目標は掲げていたわけなので、それが絵に描いた餅でなかったとすれば、思いっきり政策誘導をすれば「2020年、20%」という目標は全く不可能とまでは言えないかもしれません。(ちなみに電気事業連合会のサイトによれば2009年時点では原子力29%、水力8%、新エネルギー1%の合計38%となっていますので原発の発電量が現状維持(福島の分他の原発の稼働率を上げることになりますが)なら新エネルギーは12%増ということで計画を10年前倒しすれば達成できる計算です。) 

ただし、基本計画における新エネルギーがが京都議定書やらなんやらに配慮したお化粧で、「結局新エネルギーは難しいので原発を推進しよう」と経産省が錦の御旗にするためのものだったりすると話は違ってきますけど・・・  


また、基本計画は、その前文にあるように「資源エネルギーの安定供給に係る内外の制約が一層深刻化」しているという認識があり、「化石燃料発電のシェアを減らす」ことも目的のひとつになっています。
とすると、電力の安定供給のためには2030年までにさらにプラス20%を上積みしなければならず、そこまで考えると寺島氏の言うようにパラダイム転換が必要になりますね。  

もっともパラダイム転換といっても「2030年で新エネルギー40%」は相当遠大な目標なので、うち10~15%くらいは火力発電の効率化や先安感があるらしいLNGの利用などに受け持ってもらう必要がありそうです。  


菅首相の思いつきだか腰だめの数字は脇に置くとして、せっかくエネルギー基本計画があるんだから、暫定数値でもいいから土台になるものを早めに提示して現実的な目標設定に向けて議論を深めた方がいいと思います。

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リスク分担とインセンティブのずれ

2011-06-10 | 原発事故・節電・原発問題
関西電力:大企業などに15%節電要請へ…猛暑対策

定期検査中の原発の再稼働に地元の福井県の同意が必要になっていて、県側は安全性の確認に慎重になっているために再稼動のめどが立っていないことが理由です。

この地元合意の条件は当初は情感処理的な意味だったのかもしれませんが、今になっては県知事に安全性確認の責任を負わせることになってしまっているので、知事としては再稼動に合意しにくいという構造になってしまっています。

多分経済界からは「早期復興、景気回復のためにも電力供給の安定を」というような要望が出されると思いますが、原発の地元にとってみれば自分のだけがリスクを負って企業業績や景気回復を支える義理や責任までははないと言うでしょう。

それなら国が安全措置や地元への補助金や万が一のときの補償制度を充実すべ
き、と企業側は主張することになります。

一方で企業は、今回の震災を機にサプライチェーンの見直しをする、といっています。
となると、大規模地震のときにリスクの大きい原発周辺の生産拠点は分散の対象になり、さらに原発の地元の経済にとってはマイナスになります。

「原発を再開するなら地元企業や地元に進出している企業に優先的に供給する」というようなことが出来ればいいのでしょうが、発送電分離をしてもそこまでは出来ないのではないかと思います。(それとも「スマートグリッド」なら「スマート」だから出来るのかな?)
また、企業が「海外に移転するぞ」といっても、もともと生産拠点がない県には脅しは効きません。


このへんの構造的なインセンティブのずれを調整するのが本来の「政治主導」なんでしょうけど、当分無理そうですな・・・


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ちょっと残念

2011-05-31 | 原発事故・節電・原発問題

クエなくなるの? 浜岡原発停止で養殖ピンチ
(2011年5月30日18時47分 asahi.com)  

原発の恩恵を受けているのは「原発村」の関係者と大企業だけではないという切り口はいいと思うのですが、この見出しは地元の人にとってはシャレになっていないよなぁ。
(思いついたら止められないオヤジギャグ、という気持ちはよくわかるんですけど・・・)

菅政権の要請で中部電力浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)が全炉停止し、クエの養殖やマダイなどの放流が危機に追い込まれている。原発からの温排水も止まり、稚魚の孵化(ふか)や育成に欠かせない水温調整が出来なくなっているからだ。県は国に対策や費用の負担を求めたいとしている。  
温排水は、原発でタービンを回した蒸気の冷却に使った海水。放射能は帯びておらず、水温が海水より約7度高い。毎年11月中旬から翌6月末ごろまで、原発に隣接する「静岡県温水利用研究センター」が毎日各1万5千トンの温排水と海水をもらい、クエの養殖や、マダイやヒラメなどの親魚の飼育、稚魚の孵化・育成に活用していた。  
センターは、原発建設に協力して漁業権の一部を放棄した漁業者への補償としてつくられた。中部電が建設し、県に譲渡。県漁業協同組合連合会が運営している。  

センターが漁業者への補償として作られたのであるなら、中部電力は温排水の供給義務を負っているはずなので、国や県に負担を求めるのでなく中部電力に温排水の提供義務を果たすように求めるかそれに代わる損害賠償請求をすればいいのではないでしょうか。
せっかくならそのへんまで突っ込んで取材してほしかったところ。 

一方「自主的判断」で原発を止めた中部電力は原発停止に付帯する費用の補償を国に求められないので、中部電力にとっては合計するとけっこうな負担になるかもしれないですね。

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「隠蔽」と「自粛」

2011-05-26 | 原発事故・節電・原発問題

東電の福島原発の炉心溶融について、事故当初の想定が甘かったことについて、日経新聞では 

専門家は「電源喪失によって喪失されていた次章が、次々とシナリオ通りに起こっていった」とみる。

朝日新聞は 

専門家は、燃料は冷却水から露出したことがわかった時点で、詳細な解析を待つまでもなく溶融の可能性を指摘していた。

という指摘をしています(いずれも5/25朝刊)。  

しかし、少なくとも「東電は震災後しばらく、燃料棒が一次露出し、一部で損傷していると述べ」(日経)ていたで、マスコミとしても事故当初から専門家に取材して、炉心溶融や水素爆発の可能性を認識していたのではないでしょうか。  

記者会見などで「メルトダウンはしてないのか」という質問をしたとしてもそれがyes/noの質問にとどまり、結果的に東電の発表を鵜呑みにして報道したとしたら、上の批判は天ツバのように思います。  


逆に、事故当初「炉心溶融の可能性もあるが現状は差し迫った危険はないのでパニックになるような報道は控えてくれ」と言われていたらマスコミ各社はどうしたのでしょうか。  


これで思い出すのが古い話ですが、山一證券破綻のときに安田信託銀行に解約を求める預金者が殺到した時の話。
どこかの支店で店を取り囲むくらいの列ができたところを取材したNHKに対して大蔵省(当時)から「取り付けと誤解するから」と報道をやめるようにという要請があったとか。現場は「これが取り付けでなかったら何が取り付けなんだ」と怒っていたそうですが、結局NHKは自粛に応じたそうです。  
この件、Wikipediaによると「各マスコミもこの「取り付け騒ぎ」を報道するのを控えた」ということなので、NHKだけの問題ではなかったようです。  

当時はまだ政府と報道機関の馴れ合い友好関係があったけど今は違うのでしょうか。
政府との関係如何にかかわらず、要請に反して報道することは、「社会不安を招いた」と結果的に非難されるリスクをとることになります。
それが取れないのであれば、今回「メルトダウン」を「隠蔽していた」と非難しても仕方ないよです。(逆に隠蔽されていてラッキーだったかもしれません。)

そのへん、マスコミのほうも自己検証してみたらいいと思うのですが。


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菅総理の要請は実は中部電力には救いの手になったのではないか?

2011-05-10 | 原発事故・節電・原発問題

(昨晩のエントリを改題・訂正しました)

中部電力の浜岡原発停止の決定ですが、止めた後どうするのか、を考えてみました。

中部電力の電源別発電電力量はこちら

これをみると、原発(中部電力は浜岡だけ)への依存度は関電や東電より低いことがわかります。
また、水力の割合が多いのも特徴です。

では、もし浜岡原発の停止が長期化したり、廃炉になった場合、代替の発電所をどうするかですが、中部電力の管内は海に面しているのは静岡・愛知・三重県しかないため、火力発電所はほとんどが伊勢湾に面しています。(参照

伊勢湾周辺は企業の工場が集中しているため、新たな火力発電所の建設適地を探すのは難しそうです。

また、水力発電は管内の各水系に合計182箇所もあり(参照)、こちらはもっと新設が難しそうです。

なので、中部電力は40年以上経過し休止中の浜岡原発1,2号機を廃炉にし、代わりに6号機を新設する計画を進めていました。

浜岡原子力発電所リプレース計画等について ~1,2号機の運転終了および6号機の建設等について~(2008年12月22日)


ところが、今回の震災で原発の安全神話が崩壊したため、現在点検中の3号機の運転再開のめども立たない中で、6号機の建設は相当ハードルの高いものになってしまいました。
つまり、中部電力としては、将来的な電源確保の計画が暗礁に乗り上げてしまったわけです。

そこに今回の菅総理の全面停止要請が来ました。

中部電力としては、中長期的な計画では3号機の再開と6号機の新設に電源を頼らざるを得ない中で、手詰まりの現状を打開するにはここで政府の要請に従った上で、「安全性が確保できたら再開する」という言質を取り付けることで、3号機の再稼動と6号機の建設の道筋を作ろう、と考えたのではないでしょうか。
どのみち現状では防波堤ができるまで3号機は再稼動できないので、ここ2~3年4,5号機を止めることで将来のお墨付きをもらえれば帳尻は合うように思います。
しかも休止中に政府の支援があればよりマイナスは減ります。

もっとも、この判断には、将来(一定の)安全が確保できたと政府が再開にお墨付きを出してくれるか(その度量があるのか)、防波堤ができる3年後まで今の政権が持つのか(こっちのリスクの方が大きい?)、などの不確定要素があります。
また、国との交渉では、どこまでの言質を得るかがポイントになる一方で、それが「密約」などと言われないように情報公開も必要でしょうから、あからさまな拡大再開路線も言いにくいところです。

中部電力にとっては、今回の要請は「渡りに船」とは行かないものの「災い転じて福となす」程度の効果はあったように思います。


ただ、ここで巨費をかけて防波堤を建設し6号機を新設するという現状の計画だけでなく、その費用を他の電源の開発(素人なのでよくわかりませんが、自然エネルギーとか既存の水力発電や火力発電の効率化など)に振り向けるというような他の選択肢もこの機会に検討してみるべきではないかと思います。
原発休止後の燃料冷却中のリスクはあるでしょうが、どのみち防波堤建設には2,3年かかる間には低温で安定するのでしょうから、休止してすぐに再開前提で防波堤建設に取り掛かるよりは、これをきっかけに事業計画を高い視点から見直してみても時間の無駄にはならないと思います。
結果的には浜岡6号機新設が最適という結論になるかも知れませんが、今回の福島第二原発の事故で原発の潜在的リスク(コスト)が想定以上に大きいことを踏まえたうえでのきちんとした議論であれば説得力を持つと思います。
(その意味では僕は原発推進派でも反原発派でもなく、どこか現実的な落ち着きどころが必要だけという「半原発」のスタンスです)

そのへんを検討していくと、ひょっとすると「中部電力」という地域会社であることの限界がはっきりするかもしれませんし。


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AERA「東電解体の「極秘計画」」

2011-04-13 | 原発事故・節電・原発問題

今週号のAERAの東電解体の記事はここのところの議論が上手くまとめられている感じでした。
先日の表紙問題のバッシングで気合を入れなおしたのかもしれません(「極秘計画」というのは言いすぎだと思いますが、この程度は週刊誌の販促上は許容範囲でしょうか)。

メインのシナリオとしては、債務額を見積もり債務超過を確定した後(会社更生等の中で?)100%減資しtえ国の資本注入をして国営化する一方で、社債は金融機関よりもカット率を減らすというもの。(そもそも電力債は一定の担保を取っているので銀行融資よりも優先するとかいう話もありますが未確認)。


その後、発電・送電を分離して、発電所を新規参入企業に売却することで債務を返済していくもくろみだが、東電解体には経産省内にも反対派(東電温存派)がいるので実現するかどうかはわからない、と政府内部でも意見が固まっていないので記事も留保した書き方でした。

一方で(伝聞+資料をチラ見だったのですが)、どこかのアナリスト曰く、東電のバランスシートは社債と借入で調達した巨額の資金を発電・送電設備に投資している「両膨らみ」であり、それは電力会社の宿命。ここで社債や融資をデフォルトさせてしまうと、社債を保有している年金や金融機関が大きく痛むことになり、それは金融市場にも悪影響があるばかりでなく、今後の電気事業者の資金調達にも差し支える。それは結局電力不足につながり、国全体の首を絞めることになるので賛成しないということでした。
要するに、電力会社というのはオフバランスされた公共事業で、社債も国の保証があるという暗黙の了解がある、ということのようです。


この主張を聞くと、金融危機のときの金融機関救済の"too big to fail"の理屈を思い出します。

これは電気とか金融システムを人質に取っている連中の開き直り風な不愉快さはあるのですが(特に金融機関の人が言うと)それはおいておくとして、電力会社と金融機関の違いを考えてみると、金融機関は資金の出し手(預金者・投資家)と資金の受け手(企業・個人)の間を仲介する機能を果たしていて新規参入も可能なので市場に影響がない(であろう)金融機関を破たんさせることはできますが、電力会社は自ら発電をするという電気の売買の一当事者で、しかも地域独占が認められているので、端からより特権的な地位にいる点が違います。

そうすると、今回何らかの形で東京電力を残す場合、同じ事業形態のままでは再度同じ事を繰り返す可能性があり、しかもそれを構造的に止められないことになります。

そうだとすれば、今後は発電・送電を分離したり、地域独占も緩和させることで一定の市場原理を働かせることは有効なように思います。
特に、原発については今回事故のリスクが具体的な金額として顕在化し、しかも今後の建設コストや資金調達のコストも増大することが確実なわけで、それでも投資採算の取れる電力料金が競争力を持つのか(国の政策でやるとすれば予算措置が正当化されるのか)が個別に議論できることになれば、賛成派・反対派それぞれが同じ土俵に乗って議論することができるのではないかと思います。

あと、どうせやるならその他の電力会社もやってしまえばいいと思うのですが。
たとえば四国に発電所を作って東京電力に売るとかいろいろなことができそうですし、50Hz/60Hz問題も何らかの形で解決するインセンティブが働くと思います。


いずれにしろ、記事にもあるように、労組や経産省や政治家の利権などを排除した中でできるだけ冷静に議論すべき問題だと思います。


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節電ついでに規制の無駄取りを

2011-04-07 | 原発事故・節電・原発問題

計画停電のニュースを見るにつけ、供給能力を上回る需要(要求)がきたときに、いきなり大規模停電を起こしてしまうよりは、あらかじめ計画停電(息抜き・手抜きw)をしたり、過度な需要は抑制するようにアピールするのも、メンタルヘルス上のサラリーマンの知恵だなと思う今日この頃です。

電力については夏場のピークをどうするかがこれからの課題。

野村総合研究所のレポート(参照)によれば、節電対策として話題になっているサマータイム、総量規制、ピーク時間帯の料金値上げによる需要抑制、夏季休暇の長期化・分散化、輪番操業は、効果が限定的だったり実現可能性がネックで切り札とまではいえないようです。

個人的には今年のクールビズは思いっきりドレスコードが緩和されそうなので、盛夏用スーツは買い控えようか、などと思っています。
髪も今年の夏は思いっきり短くしようと思い、先日髪を切りに行ったのですが、実は理容室・美容室は法令で照度の下限が決められているんで照明の節電には限度があるんだそうです。

このように節電には法令がハードルになるというのは結構あるようです。

事務所の空調を止めようとしてもビル衛生管理法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)で室内温度は28度以下に保つように義務付けられているとか、停電中の建物は火災警報装置などの消防設備が機能しない(自家発電装置があれば別ですが)ので消防法で使用が認められないので館内にとどまってはいけないとかがあるそうです。
工場などの作業環境については労働安全衛生法上の様々な規制もあります。

また、直接のネックではないですが、夜間操業は労働基準法上の割増賃金が必要になるし、輪番操業は労働協約や雇用契約の変更が必要になります。

これらはもともと人身の安全のためのルールなのですが、過剰だったり二十規制だったり時代にそぐわないものも毛校あると思うので、今回は基準を見直すいい機会だと思います(政治家や役所の焼け太りには要注意ですが)。


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発電・送電分離問題、または「スマートグリッド」の賢さ加減

2011-04-06 | 原発事故・節電・原発問題

東京電力の損害賠償責任の範囲とステークホルダー(株主・債権者)のどこまでに負担を求めるかの議論と共に、東京電力を再編し送電・発電の分離を主張する人が増えているようです。

趣旨としては、現在国のエネルギー政策が末端の電力供給にまで反映しているものを、供給発電と需要家への電力供給の安定が役割の送電を分けて、発電の多様化や送電側での電力確保の自由度をあげて、エネルギー政策の選択肢を増やそうということなのだと思います。

そこで出てくるのが、「スマートグリッドなどの技術があるから可能だ」という話。

私自身は技術的なことを語る能力はないのですが、メーカーでこの辺の営業担当をやっている友人から聞いた酒飲み話では、今までわが国で議論されてきた「スマートグリッド」構想は米国などとはちょっと違うようです。

彼曰く、「スマートグリッド」というのは電力会社が乱立している米国で電力の需給をバランスさせるために発達した技術で、日本では電力供給が地域電力会社の独占(発電はほとんど、送電は全部)になっているので、電力会社が自前の技術で発電から送電までをコントロールしている。
要するに日本は電力会社が発電から送電まで「スマート」に管理しているので、米国流の「スマートグリッド」は日本にはなじまないので結局電力会社の下請けになっちゃうんだよなぁというということでした(昨年の話なので正確に覚えているわけではありませんし)。

以下、経済産業省が平成22年6月15日に公表した「スマートコミュニティフォーラムにおける論点と提案」について~新しい生活、新しい街づくりへの挑戦を元ネタに考えてみます。
※ ずぶの素人の感想なので、誤解、無理解などがあったらご教示いただけると幸いです。

まずは提案内容(pdf)のp12~13(ページはpdfファイルのページで、資料に打っているページより1つ大きくなっています)で米国の事情が解説されています。

米国でスマートグリッドの標準化が急がれる理由 
・ 全米で3,000社を超える電力会社が存在し、各州でも規制体系が異なることなることから、システムの相互接続性を担保し、産業競争力を向上させる観点から標準化を推進
・ 経済刺激策に基づく実証プロジェクトの本格的実施前に標準を策定する必要がある  

OSTP(ホワイトハウス科学技術政策局)としては、新たなサービス創出のために、電力会社以外のサービス事業者の参入が重要と考えており、そのために情報のオープン化(個人がデータの所有権及びコントロール権を有する形態)を促進する意向
・ IT系企業がスマートメーターから得られる情報を活用したビジネス展開を開始

米国での実証実験としてはp45でこのようなものがあげられています。  

米国では、各地で60以上のスマートメーターを活用したデマンドレスポンス実証が進展 
① PEPCO(ワシントンDC):900世帯を対象に、料金固定型、料金変動型、報酬型の3パターンを実証。料金変動型では22~34%のエネルギー消費削減を実現 
② Conneticut Light & Power:3,000世帯を対象に、同様の料金パターンを実証。同じく、料金変動型が最も効果が大きく、16~23%のエネルギー消費削減  

要するに発電・送電において各社が入り乱れているので、そこを効率化するニーズが必要ということのようです。  

一方で、わが国の現状は、p37にあるように発電から送電まで電力会社のネットワークに組み込まれています(「現在の供給側のネットワーク概念図」参照。クリックすると別ウインドゥで開きます。以下同じ。)。 

そしてこの提案は、200/100Vに変換された後(要するに家の手前の電柱から先)の需要側でどのようにスマートグリッドを構築するか、という議論の立て方になっています。  

これは、この提案をしたフォーラムの事務局が経済産業省で、委員のメンバーに東京電力と関西電力が入っていて、他の委員のメーカーは受注者側として遠慮せざるをえないし、少しでも前に進めるには経産省と電力会社の協力が必要、ということだったのでしょうか。  

その結果「スマートコミュニティのイメージ」(p29)は、これまでの電力系統である「ナショナルグリッド機能」はそのままに、その先で「スマートハウス」「スマート店舗」「スマートスクール」「スマート工場」などが「ローカルグリッド機能」を形成するというものです。

※ ちなみに「ナショナルグリッド機能」の説明に

・ 原子力発電など安定的に供給できる電源をベース電源として活用する
・ 地域内での需給の統合制御を前提に、必要な範囲でローカルグリッドとの調整を実施

とあるのは、今となっては悪い冗談のようです。  

なので、スマートグリッドがスマートさを発揮する局面は、「太陽光発電の変動を供給側・需要側でどう調整するか」というところで想定されています(p43「エネルギーシステムの論点」参照)。  

つまりここでの「スマート」は、屋台骨の電力供給が安定していることを前提にした「賢さ」=細部作りこみ能力であって、アメリカのように発電・送電事業者が今ひとつ信用が置けないかもしれないという中でどうするかという「賢さ」=サバイバル能力とは違うようです。  

しかし、今や原発事故に端を発して発電側の電力供給に不安がありうることを前提にすると、この提案書のような「スマートグリッド」では役に立たないことになりそうです。  


そうだとすれば、電力会社も発電の役割と送電の役割を分け、送電側には発電が不安定になりうることを前提としたうえで需要者への安定供給を維持する「賢さ」を身につけさせるのはいいアイデアかもしれません。  

ただ、この場合、送電の地域独占の是非が問題になるかもしれません。

末尾の参考資料に次のような比較があります。  (p57「スマートグリッド関連主要プレーヤーマップイメージ(国内)」)  (p58「スマートグリッド関連主要プレーヤーマップイメージ(海外)」)  
海外の方は「スマートメーター」のプレイヤーとして通信事業者やIT企業がいるのに対し、国内は電気事業者として電力会社が鎮座ましましています。 
つまり、発電と送電を分けたとしても、送電を地域独占してしまうと(従来の送電側と結託して)スマートさの発揮をしなくなり、技術革新も起きないのではないか(最悪そこで再度トラブルが起きて信用をなくしてしまい、日本企業の登場する暇もないうちに外国企業のプラットフォームに置き換わってしまうのではないか)というものです。  

なので、今の発電・送電分離の議論についても、送電会社の地域割をどうするか(たとえば、現状のエリアを細分化して料金設定の自由度を増やし地域間競争・地域活性化につなげる)とか、発電はどのように分けるのか(たとえば原子力発電は国営化する一方で他の発電と競争させてエネルギー政策を客観的に評価できるようにする)などによって将来が大きく変わって来そうです。
(このような理解は見当はずれなのかもしれませんが・・・)


原発問題は"all or nothing"の議論になりがちですが、最後は「好き嫌い」かもしれませんが、できるだけ議論の土台をすり合わせるようにしたほうが建設的だと思います(不謹慎かもしれませんが今回の事故は原発のリスクを計量化する-または何が計量化できないリスクなのかをより細分化して明らかにする-重要な経験でもあるわけですから)。
その意味でも発電・送電分離というアイデアは議論する価値があるように思います。

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カウンター・ウエイト

2011-03-30 | 原発事故・節電・原発問題

節電対応で事務所の廊下はほとんど照明を落とし、暖房便座も止めたりしていると「まあなくても不都合はないもの」が結構あるのに気がつきます。
(「一番なくてもいいのはお前の出社だろう」という突っ込みは禁止)

エレベーターも運転台数を減らしているので2~3フロアなら歩くようにしていると、なんとなく身体によさそうだったりしますが、今日エレベーターに乗ったらたまたま一人。

これはもったいない!

ただ、よく考えると、エレベーターは籠とつながったワイヤの反対側にカウンター・ウエイト(釣合い錘)がついていてバランスしているはずなので、一人で上るときはウエイト側の方が重く、ほとんど電力を使わずにエコなのではなかろうか、と考えて調べてみました。
wikipediaによると 

カウンターウェイトの重さは無積載かご重量の1.5倍程の重さがあるが、かご側の乗客が満員状態になるとカウンターウェイト側はかご側の3/4程度の重量になるように設計されている。  

だとすれば、上りなら一人しかいなくても気後れする必要はなく、下りはできれば少し待って他の人と乗りあうのがいい、というのが小さな省エネの知恵のようです。


ちなみに、カウンターウエイトがどのへんに設定されてるかは今回の大震災や原発事故にあたっての野党やマスコミ報道への視点としても大事かもしれません。

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東電のやる気

2011-03-24 | 原発事故・節電・原発問題

この状況で揚げ足を取るようなことは言いたくはないのですが、昨日から東京電力のホームページの冒頭に「お詫び」が出てます。

http://www.tepco.co.jp/index-j.html

 

計画停電については最後の段落で

一日も早く安定的に電気を送り届けることができるよう、復旧作業に全力を尽くしておりますので

(太字筆者)とあるので引き続きがんばってもらいたいものです。

ところが真ん中の段落で原発については

現在、政府・関係各省庁、自治体のご支援とご協力を仰ぎながら、緊密に連携をはかりつつ、事態の悪化防止に向けて、全力を挙げて懸命に取り組んでおります。

目標は「悪化防止」=現状維持であって、「事態の解決」や「収束」じゃないんですね・・・
確かに現時点では効果的な対策がないのかもしれませんが、懸命に取り組む目標が現状維持では困ります。
それに現場の志気も下がるんじゃないでしょうか。

不必要に楽観的なことを言うのがいいとは思わないのですが、広報や法務が責任を回避しようと言い回しをいじくった挙句に末期症状の患者に対する医者のセリフみたいになってしまったとしたら残念です。


それとも、東電は積極的に解決する当事者能力がなくなってしまっているから他人行儀なことを書いているのでしょうか。
そうだとすると、主導権を握っているのが誰かがもっと心配なのですが・・・
("Helicopter Ben"ならぬ"Helicopter Kan"だったらいやだな)

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船頭多くして

2011-03-17 | 原発事故・節電・原発問題

ここ一番で指揮命令系統は大丈夫?という話2つ

放水に放射線の壁 ヘリ投入「命がけ」 によると

「本当に最悪の事態になったら、東日本がつぶれる、ということも想定しなければならない。そういうことへの危機感が(東京電力に)非常に薄い」・・・菅首相はそう語ったうえで、「自分はものすごく原子力に詳しい」とも自負し、危機回避を主導する意気込みを示した。

一方で

もともと防衛省・自衛隊サイドには危険な任務の割に効果がハッキリしないことへの疑念もある。「我々に原発のノウハウはない。防護服は核攻撃された後でも活動できるようになっているが、(原子炉から放出される)高濃度の放射能には耐えられない」(自衛隊幹部)との慎重論がくすぶる。
防衛省内には・・・米軍への期待感もあった。しかし・・・米側も、福島第1原発については放射線被害への警戒感を隠さない。15日には消火ポンプ車2台を東電に引き渡したが、地上からの給水活動には加わらず・・・

さらに、警視庁(=東京)から機動隊の放水車を動員するようで、今度は別の役所が出てきます。

それに、原子力安全・保安院という組織の役割もよくわかりません。
(技術者が多いようで、慣れない記者会見では見ていて気の毒なときもしばしばあります)

専門家の意見を聞いて責任者が実現可能性のある判断し、現場はそれを遂行する、というところができていないようで心配です。



もう一つは東京電力。

何で社長が記者会見に出てこない?という批判もありますが、「原発事故」と「電力供給」という性格の違った、しかしともに重要な問題なので、それぞれの担当責任者が出てくること自体のはいいと思うのですが、肝心の副社長の説明がいまひとつはっきりしません。

この副社長は本当に担当なんだろうか、と有価証券報告書を見てみると、原発関係では「原子力・立地本部本部長」として武藤栄代表取締役副社長が、部副本部長として皷紀男代表取締役副社長と小森明生常務取締役がいます。
電力供給関係では、「電力流通本部長」として藤本孝代表取締役副社長、副本部長として山口博常務取締役がいます。

他所さまの会社のことを余計なお世話を承知で言うと、ちょっと上が重すぎる感じがします。これだと機動的な意思決定はできなそうだし、責任の所在も曖昧になりそうです。
特に原子力関係は副本部長の皷氏のほうが取締役の序列も年次も武藤氏より上、さらに執行役員で副本部長がもう一人います。しかも常任監査役も3人に2人が原子力畑です。
原子力畑はエリートコースなので、割り振るポストを増やしているのかもしれません。
そうだとするときちんとした判断ができるのかもっと心配ですね。

ちなみに小宮山元東大総長が社外監査役をやっています。
ここに大きな「看板」を持ってきたのは、今後違った意味で会社に対して効いてくるかもしれませんね。(小宮山氏本人に対しても効いてくるかもしれませんが・・・)

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災い転じて

2011-03-16 | 原発事故・節電・原発問題

首都圏の電力不足は当分続くことが予想され鉄道の輸送量も復活しないなかで、企業が活動を続けていくには、今後在宅勤務が現実的なものになると思います。

今まではなんだかんだ言って会社に出社し、同僚の顔を見て、自席について、会議をして、というのがなんとなく仕事をしている感があって、在宅勤務というのは一部の企業以外には浸透していませんでしたが、今後は必要に迫られて広がるのではないかと思います。

在宅勤務のメリットは、仕事が効率的になることです。
たとえば会議をするにも物理的に顔を合わせることがないので、事前に議題や論点を示すことが必須だし、その場で議事録を書く必要もあるので議論の結論も明確になります。
そして、会議に参加しているが発言をしない人、無駄な発現をする人をあぶりだすことになります。

なので、在宅勤務・テレワークが増えると、業務に貢献していない人が誰かが明確になります。
そしてその多くは40代・50台の(中間)管理職-研修などでよく言われるマネジメントをしない「乗っかり型の上司」-なのではないかと想定されます。
企業としてもそういう存在は看過できなくなるので、そのうちリストラのターゲットになります。

そうすれば、若年層のチャンスが増え、組織も効率化し、ひいては世代間の所得移転が実現し、景気回復にも貢献することになります。


第二次世界大戦後の日本も、企業の役員や役所の高官は財閥解体や公職追放などでいなくなった結果、当時の若手が戦後の高度成長の旗振り役になったわけで、「重し」を一気に取り去るのは、今後の日本の発展にとって必須なように思います。


僕は既に「重し」の仲間入りをしてしまっているので、在宅勤務を命ぜられてしばらくして会社に顔を出したら自分以外は普通に会社に勤務していて、「あれ、何しに来たんですか?」なんて言われることを覚悟しないといけませんがw

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とりあえず早寝早起き

2011-03-14 | 原発事故・節電・原発問題

地震災害の復旧やまだ収まっていない福島原発問題、電力供給不足による輪番停電への対応などブログを更新している場合ではないのですが、現時点での備忘。

・被災地の不明者の捜索・復旧はとにかく物量と人員を投入するしかないと思うが、各国の救助隊や、自衛隊・消防・警察、(今後登場するであろう)ボランティアをいかに上手に配分するかが大事だろう。(報道では各所で救助・救援が進んでいるようだが、報道はそれが可能な所に限定されているので「手が回っていないのはどこか」が不明)

・福島原発はいろいろ文句を言っても結局東電しか対応する能力のある当事者がいないのでがんばってもらうしかない。

・もっと突き詰めて言うと、自動制御が機能しない今となっては現場で被曝リスク覚悟で作業(たとえば注水ポンプを作動させるとか中央監視室でなく格納容器に近いところでの作業)する作業員にかかっている。彼らを尊敬しながら期待するしかないし、東電のえらいさんが駒のように扱ったりしないことを祈ろう。

(以下、被災地の救助・復興以外に首都圏にいる僕らが気をつけるべきこと)

・輪番停電はぎりぎりまで停電を避けようと東電が送電の調整を努力すると逆に「狼少年」になってしまうというジレンマがある。試行錯誤で落着点を探すしかないのではないか。

・今日は電力消費のピークが夜間だったが、震災の影響で稼動をとめている工場が復活すると、もっと厳しくなるだろう。更に冷房シーズンになれば電力消費は倍増する。

・一方で原発停止分の電力供給はそう簡単には復旧しない。さらに、ここ数日新潟・長野で中規模の地震が頻発しており、ここで復旧したばかりの柏崎刈羽原発(確か発電量は東電原発で最大)まで休止すると、経済活動に相当のダメージが出る。
ここは天に祈るしかない。

・ということで、電力不足問題は、東電は当面4月までと言っているが、停電はさらに頻繁にかつ長期化するのではないか。

・したがって日常生活や通勤でのストレスが続くので、早く電力不足下の生活ペースに慣れて体力・気力の消耗を防ぐのが重要。

・なので、朝は早起きして空いているときに出勤、そのために早く寝て体力温存、というのが当面の一番の対策ではないか。(夜の飲み会も当分ないでしょうし)

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