書名は刺激的だが、キワモノではない。
本書では、いま中国が海洋に進出し米国に挑戦する理由、中国経済の行き詰まりが共産主義中国の興亡に及ぼす影響、すでに始まっている米中紛争の具体的シミュレーション、その後の中国の内部変化などを考慮したあと、日本がとるべき国家戦略のあり方について提言を行っている。
政経が常に一体となっている中国を、文化的背景からひもといている部分は面白くかつ参考になる。
中国を変えたければ、中国自身が内側から変わるのを待つしかない。この巨大で多様な人間集団を短期間で変えるなど至難の業である。このことがわからない日本人はいまも多い・・・
意外に聞こえるかもしれないが、現代中国を理解するキーワードはその「弱さ・脆弱さ」だ。中国人との付き合いが難しいのは、彼らが「強い」からではなく、じつは「弱い」からだ。「弱い」からこそ「怖い」。「怖い」からこそ、彼らは自分たちが長年受け継いできた文化に「逃げ込む」のである。
自信があれば、もっと上手く外国人と付き合える。自信がないからこそ、主観的判断、自己正当化、短期的利益追求などの自己中心的言動を繰り返し、平気で嘘もつく。・・・彼らがまだ開発途上国のメンタリティをもっているからと思えば、理解しやすいだろう。
もう一つ外国人が理解すべきことは、中国人が外国からいかに思われているかを人一倍気にする、とても「傷つきやすい」民族であるということだ。・・・このような性格は中国人の専売特許ではなく、他の開発途上国人にもほぼ共通するものだ。
・・・中国を変えるには、中国人自身が内側から中国のあり方を変える必要がある。過去百五十年間、中国はさまざまな変革モデルを試してきたが、結局中国の変革のヒントは中国の伝統文化のなかにしかなかったことを忘れてはならない。
また、米中紛争のシミュレーションの部分は、米中の当事者で語られていることの現実味が乏しい、ということ自体を注意した方がいいのかもしれない。
「結末」 については、順列組合せの頭の体操に近い。
そして、そういう将来に向け、日本がどういう立場に立つことになるか、そして中国やアジアの安定化にどういう役割を果たすかについて最後の章で簡単に触れられているが、ここにもう少し紙数をさいてほしかった感じがするのは欲張り過ぎだろうか。