著者の千葉博氏は弁護士で司法試験の予備校の講師もやっている方です。
書名は「勉強法」ですが、自分の経験から得たスランプの克服法を中心に書かれていて、勉強以外にも応用は利きそうです。
自分のストレス耐性を知り、できるだけスランプの予兆を察知して陥らないようにする方法。そして万が一スランプに陥ってしまったらそこから立ち直るための工夫が書いてあります。
僕自身周りからはストレスを感じないタイプのように思われているようですが、まあそれなりにけっこう工夫をしているわけで、本書の内容にも共感するところはかなりありました。
ただ、そこから先に時間を有効に使う努力とか最後にまとめてある「自分をマネジメントする30の習慣」というあたりは及ぶべくもありませんが・・・
歳をとってくると「鈍感力」がついてくるのはストレス耐性にはプラスなのですが、一方で価値観が固まってくるので思い込みや決め付けが増えてきがちで、逆にそこはストレスがたまる原因にもなります。
なので、事あるごとに「それは自分の思い込みではないか?」というのを自問するように心がけているのですが、それを飄々とやりすぎると周りからは昼行灯風にみえてしまうという難点もあります(笑)
上で、本書は勉強以外にも応用が利くと言いましたが、サラリーマンだとときどき(しばしば)やりたくない仕事とか「貧乏くじ」のようにがんばっても評価されない仕事が回って来たり、どうにも相性の合わない上司にぶつかることもあります。そういうときにどうするか、というノウハウは本書ではあまり書いてありません。それは試験という目的が明確な人向けに書かれていること、著者が弁護士という自ら選んだ仕事についているから仕方ないのですが、世の中にはけっこう乗り越える価値、必要のない無意味な障害というのもけっこうあるものです。
僕自身はそういうとき「命や家財産までは取られないのがサラリーマンのいいところだ」と開き直ることを勧めています。自己実現のために働くにしろ身過ぎ世過ぎのために働くにしろ、自分を失うところまで追い詰める必要(または追い詰められる義理)はない、というところをボトムラインにすれば、精神的な限界を超えなくて済むので。
ただ、これを乱発すると、正社員の地位に胡坐をかいた生産性の低いサラリーマンになってしまうので気をつけなくてはいけません(笑)
知り合いの精神科医に聞くと、不景気になっていままで通院していてこなくなった患者も増えてきているそうです。通院がばれるのを恐れているのか、更に忙しくなって通院する暇もないのかと彼は心配しているのですが、心身を限界まで削って働いている人は世の中で相当数いるようです。
なんかそういう人向けに、「必要十分な範囲の前向きなスランプ克服法」というような本があるといいですね。
(というか、そういう人を生み出してしまうのはそもそも会社の問題なんですけどね。)