鳥インフルエンザが話題になる前、BSEに加えて豚肉も豚コレラとか口蹄疫が発生し、安心して食べられるのは鶏肉だけ、という頃、街中に「地鶏」をメニューにする店があふれたことがあります。
そんなにいきなり地鶏って増えるものなのだろうか、そもそも定義も曖昧だよね、ひょっとして北朝鮮で稚貝を買って千葉県で東京湾に数週間つけて育てた「国産シジミ」のようにブロイラーを出荷前に数日間屋外で運動させただけなんじゃないか、などと思ったものです。
その頃の「地鶏」同様最近目に付くのが「イベリコ豚」。
スペイン風バルとかイタリアン・フレンチの店で生ハム(「ハモン・イベリコ」というらしい。)が出るのはさておき、居酒屋ののぼりでも「イベリコ豚入荷!」などとやっていますね。
今度はイベリコ豚がどこからか大量発生しているのでしょうか。
と思っていたところ、
今週号の「AERA」に「イベリコ豚はなぜ大量に出回るの」という記事があるのを見つけ、久しぶりに購入。
AERAによると、
「イベリコ豚」はスペイン西部地方だけに生息する「イベリア種」という黒豚で、現在生産が年間40~60万頭に限られている(子供の数が少ない)希少種のことを言います。
そのイベリア種の豚を樫の森でドングリを食べさせながら放牧するのですが、飼料の内容によってランク付けされています。
ベジョータ
ドングリだけで育った最高ランク。
イベリコ豚全体の1割しかなく、しかもドングリの育ち具合によって出荷頭数が大きく変動する。
主に「ハモン・イベリコ」用(ちなみにハモン・イベリコはスペインの生ハムのわずか3~4%)。
また、「ハモン・イベリコ」は法律でイベリコ豚の血統が50%以上なければならない、と定められています(EUの定めるDOP(保護原産地)表示においては75%以上が求められています。)。
さらに「ツメの色が黒くなければならない」という決まりがあり、偽装を防ぐために黒い蹄つきで出荷されています。
レストランでもオープンキッチンで蹄つきのまま台に乗せて切り分けていれば本物ということです。
レセボ
ドングリだけでは規定の体重に達しなかったために、不足分を通常の穀物飼料で補給したもの。
ピエンソ
穀物飼料だけで育てられたもの。
脂肪分が多すぎないので生肉の調理用に使われる。
つまり、生肉で入ってとんかつやしゃぶしゃぶに使われているイベリコ豚は、ほとんどが「ピエンゾ」のようです。
こちらのサイトによれば、イベリコ豚は「脂肪を筋肉組織内に浸透される能力に長けている」そうです。つまり飼料により脂肪の質が違ってくるので、このような飼料による等級分けがされるのですね。
つまり、「ハモン・イベリコ」以外の調理用のイベリコ豚は「ピエンゾ」がほとんどで、要するにそれはスペイン原産種の黒豚=「薩摩黒豚」と同じ程度のありがたみ、と考えればよさそうです。
2005年はスペインからの豚肉・豚肉製品の輸入は2004年に比べて倍増したということです。
もともと希少種なので「日本のせいで入手困難になった」などと言われないようにしたいですね(東シナ海の魚は中国の需要増のせいで高騰しているわけで「金に物を言わせて何が悪い?」という開き直りもありますが、ここは大人の態度を示したいものです。)。
<おまけ1>
イベリコ豚の等級も過去の経験が反映すると言う点では「40歳をすぎたら男は自分の顔に責任を持て」(※)というのと共通するものがありますね。
「威張り子豚」のようにはなりたくないものです。
<おまけ2>
ペディキュアの女性を見たら、黒い蹄の色と食事内容が脂肪に出やすいという話とあわせてネタにしてしまいそうですが、これってセクハラですよね・・・
(秋になっていてよかったw)
(※)これ、誰の言葉だろう、とちょっと調べたら、Abraham Lincolnの
"After forty, you get the face you deserve."
というのが元になっているようです。
こちらの言い方のほうが「品性が顔に出るんだよ」というようなストレートな感じで厳しいですね。