一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』

2010-10-28 | 乱読日記
ホリエモンが「金で買えないものはない」という発言で非難を浴びたのは何年か前でした。

その発言自体は字義どおりに読めば、交換手段としての貨幣の定義そのものを表現しているだけなので100%正しいのですが、多くの人はその裏にある「だから金を持っている奴ほど偉いんだ」という含意に反発したわけです。

ここには昨日取り上げた『これからの「正義」の話をしよう』での論点でもあった、「社会制度についての議論はその制度が称え、見返りを与える美徳について論じることだ」という側面が現れています。

つまり、金を持っていれば買える物が増える、というそれだけであれば当然の世の中のしくみについても評価の問題がかかわってくる、「まあ、金を持ってりゃいろんなものが買えるよね、それで?」とスルーできないのが人間だということです。

でも一方で、その後の株高やFXブーム、一方で景気上昇から下降局面での一貫した格差問題・非正規雇用の拡大などもあり、かえって資産形成の本や「成功」するための自己啓発本が増えてきたように思います。


その中で、投資や資産形成に関する著作で有名な橘玲氏が、自己啓発本への違和感から書いたというのが本書です。


書名には「たったひとつの方法」とありますが、自己啓発本の言うような万人に共通のゴールや手段はない、ということを強調しています。
冒頭と最後に結論の方法論めいたこと言っているのですが、本書で大事なのは「人生についての考え方万人に共通の「成功」の尺度はない」「金はあったほうが一定の自由は確保できるがあくまでも手段であって目標ではない」「人によって出来ることと出来ないことが違うのは当然で、自分の出来ることが評価されるような生き方を選ぶべきだ」というものの見方であり考え方なんだと思います。

途中、スティーブン・ピンカー『人間の本性を考える』とか山岸俊明さんの安心社会と信頼社会の話などを中心に、そのほかもいろんな話を引き合いに出して話が広がりすぎてしまうのですが、それはそれとして(ちょっと強引なところもあるけど)なかなか面白い部分ではあります。


じゃあ、どうすればいい、というところは一応総論的には書いてあります。

ただ、それを具体的に強調しすぎるとこれも自己啓発本のひとつになってしまうので、自分で考えよう、ということでしょう。


くしくも『これからの「正義」の話をしよう』の副題が「いまを生き延びるための哲学」です。
本書のタイトルも編集者と相談してつけたのではないかと思いますが、このタイトル自体が現在の日本の状況を象徴しているようにも思います。




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『これからの「正義」の話をしよう』

2010-10-27 | 乱読日記
NHK「ハーバード白熱教室」で話題になったサンデル教授の講義をまとめた本

東大での特別講義は見たけどハーバードの授業のところはちょっとしか見ていないという状態なのですが、学生に考えさせ発言をさせながらの講義の手腕は見事なものだと思いました。

それを見た上で興味があるのは、この講義で学生は事前にどれくらいの課題図書の読破が求められているのか、また、どうやって成績をつけるのか(試験、レポート、講義での発言?)ということ。

この番組の感想として「それに引きかえ日本の大学の講義は・・・」という話が出ますが、確かにこういうスタイルの講義は日本では今でも少ないのでしょうが(僕が学生の頃は皆無でした)、学生側も講義に出て発言したり感心しているだけで済むはずはないので、大量の課題図書とかレポート提出や講義を消化したかを確認される試験があった場合に(けっこう大教室だったので、発言だけでは評価はできないと推測)、履修希望者がどこまで増えるだろうかということも興味があります。
 
僕は最近大学生との接点が採用の面接官としてくらいしかないのですが、(そもそも新卒一括採用+青田刈りという企業の姿勢は改めるべきだと思いますが)面接の場面でサークル活動の話題(とよくてゼミの幹事やってますとか)ばかり出るのもちょっと寂しい感じもしているので。
まあ、そんな「鶏が先か卵が先か」の議論をするより、学生もきちんとした知的刺激さえ受ければやる気を出すという前提にたって、こういう講義が増えると大学ももっと面白くなるんじゃないかと思います。


で、本の内容。


授業の展開と同様に具体的な問題を題材に、「正義」「正しさ」をめぐるさまざまな議論について問題提起しながら考えていくというスタイルになってます。
「リバタリアンvsコミュニタリアン」という対比が注目されますが、おそらく講義の議論に参加しようとするには、たとえば「私はリバタリアンだから・・・」というだけでなく、どのような価値判断に基づいてそう考えるのか、その価値判断の根源にある人間観なり社会観は何か、というところまで考えさせられることになるんだろうと思います。(だから哲学なんですけど)

僕がいちばん腑に落ちたのが、「社会制度の目的について論じるのは、その制度が称え、見返りを与える美徳について論じることだ。」というアリストテレスの考え。
(そういや大学の教養過程では哲学概論って取ったんだけどなぁ)

「中立的、客観的な「正義」はない」というだけだと、価値多元論以上終わり、になってしまうんだけど、正義の問題は美徳、名誉、承認、誇りという概念と密接に関係し、それらをどう評価し分配するかという問題である--だからこそ議論が自己言及になりがちなんだと思います--ということを注意深く、丁寧に論じています。


知識を得たり結論にたどり着くよりも、考える(考え続ける)習慣をつけること重要性を改めて認識させてくれます。 

現実社会では「正解」なんてないし、自分や周りの状況は常に変わるわけですから、そういう意味では実はいちばん実戦的な講義なのかしれないな、と思った次第。



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あなたの好きな国債

2010-10-26 | よしなしごと
厭債害債さん経由。
タイトルを見たときは「どこの国の国債?」という人気投票で利率とカントリーリスクのバランスの話かと思ったのですが、財務省のホームページに あなたが欲しい国債というアンケートがあるそうです。  

アンケートの選択肢としては変り映えしないし、「物価に連動するタイプ」だと金利が下がったりもするのか?と突っ込みたくなるのですが、フリーアンサーにどこまで面白い意見が出るかを期待しているのでしょうか。

個人的には社会保障費(年金・健康保険・介護保険・雇用保険)の料率上昇に利率がリンクするというのがあると面白いと思います。
年収分の国債を買っとけば将来の所得の目減りをヘッジできる(厳密には利子にかかる税金と所得控除のバランスが必要ですが)わけで、個人の貯蓄の還流になるのではないかと。

ただ、そもそも国債は日本政府の財務体質を信用している人が買うものなので、国にとってはこういう自虐的な商品を発行するのには抵抗があるでしょうし、財政赤字だけど市場では金余りという状況では発行するメリットがないですね。


でも、国債は銀行や郵便局(あ、これもゆうちょ銀行か)で窓販がされているのに、財務省自らマーケティングをするというのもどんなもんなんだろう。



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オフィスグリコ

2010-10-25 | あきなひ

会社にオフィスグリコが置いてあるのだが、ウチの担当の人は月曜の朝にこそこそっと入ってきて、こそこそっと商品を補充してお金を回収し、「失礼します」と小声でつぶやきながら逃げるように出て行ってしまいます。  

菓子のリクエストを受け付けて売り上げ増に貢献したりマーケティングにフィードバックした方がいいんじゃないかとも思ったんですが、実はそうではないみたいです。

「オフィスグリコ」・・・3年かけた仕組みづくり によるとそもそも「単品管理」のようなマーケティングはしていないとか。  

単品情報の入力の手間をかけていると採算が合わないことがわかったからでした。  
また、そもそも「単品管理」をする必要性も低かったのです。
というのも、単品管理の主たる目的は、売れ筋・死に筋 を把握して在庫の適正化を図ることですが、お菓子は飽きられやすい商品であるため、単純に、 売れ筋・死に筋という判断はできないからです。

そこで、オフィスグリコでは年間52週分の商品配置計画を作成し、3回の巡回訪問(商品補充と代金回収のため)ですべての商品が入れ替わるようにしています。

ただ、単品管理をせず、在庫と販売の効率を最大化を目指しつつ、商品を頻繁に入れ替えるという「方程式」を 解くのは相当の難題だったようです。 実際、この方程式を解くために発見した一定の「法則」に ついては、特許申請も行っているそうです。

なので会社に来る人はホントに補充と代金回収だけが仕事なんですね。

オフィスグリコのQ&Aにも  

Q なかなかフォローにきてくれないのですが? 
A 訪問予定日が祝祭日に重なったり、サービススタッフの体調不良による急な休みなどで、どうしても訪問させていただけない場合がございます。大変ご迷惑をおかけ致しますが、訪問日の変更をもってできる限りご不便をおかけしないよう心がけてまいります。  

などとけっこうのんびりしたことが書いてあります。  
求人情報を見ても、時給1000円で「お菓子を届ける」のが仕事で、営業を期待されたり売上げのインセンティブがあったりするわけではないようです。 
勤務時間も平日の9:00~16:30(実働6.5h)なので、小さい子供を持った母親とかなどにはいいかもしれません。(運動不足解消にもなりそうだし。)

同じオフィスでの販売でも歩合が大きいのか良くも悪くもアグレッシブな営業が持ち味の「ヤクルトおばさん」(今でもこの用語は使っていいのだろうか?)と正反対のビジネスモデルですね。
以前ヤクルトの販売所が火事になって、ワゴンに積んだ商品の損失の帰属についてヤクルトと販売員で訴訟になり「販売員はヤクルトから商品を仕入れて売る事業者だ」という会社の主張が受け入れられなかったことがありましたが、(それを契機に今は変わっているかもしれません)それくらいヤクルトおばさんは「自営」度が高いのに比べて、オフィスグリコは単なる配達員でいい、ということのようです。  


置いてある菓子も、自社製品に限らず「office Glico」と印刷してある他社のOEM?品(中小メーカーのものが多い)や純粋な他社製品(カルビーなど)もあってバラエティに富んでいるのがいいです。 
注文をとると人気商品に偏ったり会社の中で喧嘩になったりするかもしれないし、中身がランダムに入れ替わったほうが意外な発見があったりしてかえって楽しめますね。
社内では議論があったんだろうけど、他社製品も入れたのは立派だと思います(でも必ずビスコは入っているのは最後の意地?)。 

この経済状況の中で10年近く発展してきている新商売、学ぶべきところも多いです。


ところで最近ウチに「オフィスグリコから独立して置き菓子の商売を始めたので切り替えないか」という売り込みがあったらしいです。
営業マンが怪しかったので門前払いしたようですが、競合に対しては「グリコ」というメーカーのブランドが強みになると思います。  

ちなみに「置き菓子」はグリコの登録商標だとこちらにあったけど、 ホントだ
よく取れたなぁ。

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右ハンドル車の輸出

2010-10-21 | あきなひ

以前こちらのエントリで紹介した

アメリカでアニメやマンガが売れなくなった本当の理由?Too much expectations and not enough marketing lead to manga slump in US
の続きがup

マンガやアニメが不調…ならどうすりゃいいの?ってんで続き?And what to do about the biz slump in manga & anime  

Mangaへのレクイエム?Sadly, manga will be on the fringe of US market

最後のエントリに象徴的な話が  

2004年にアメリカの最大手ランダムハウスと、日本の最大手である講談社が事業提携したときに、そのプロジェクトの一環としてSF系のインプリント(出版レーベル)であるデル・レイから、CLAMPの「XXXHolic」や赤松健の「魔法先生ネギま!?」など、4タイトルから始めて徐々に少女マンガを中心にアメリカでもマンガが定着しそうな勢いがあった。  

大手出版社から出されて、大手書店に並ぶ、というメインストリームの一部を勝ち得たかのように思えた。当初からデル・レイの編集方針はハッキリしていて、「我々がよく知っているYAの市場から始めて、これはと思うタイトルに絞り、でもやるからには徹底的にマーケティングをする。そしてYAの主力層であるプレティーン?ティーンエイジャーの女の子の反応を見ながら徐々にマンガの幅を広げていく」というものだった。  

何もないところに、ポンッとマンガなるものを出してきて、それが一般家庭に受け入れられるようになるにはそれなりの時間がかかるし、宣伝もしていかなければならない、という決意があればこそ、だ。  

でもまぁ、原作のマンガを送り出す講談社にしてみれば、もっともっとやってもらいたいわけですよ。  

で講談社は典型的なプロダクト・アウトをやってしまい、マーケットを作る前に大量供給した結果、際物になってしまったという話。  


米国のビッグ3の斜陽が言われていた1980年代は、輸入車はフォルクスワーゲンなど一部のメーカーを除いてほとんどが左ハンドルでした。
今や日本への輸入車は原則右ハンドルになっていますが、逆に日本企業は外国に「右ハンドル車」を持ち出そうとしているのかもしれません。



おまけ  こういうのいいよね。  

 
ネタ元はこちら
楽器が盗まれてもiPhoneさえあれば!──NY地下鉄のバンド即興PVが話題に



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八丈島町議会議員選挙(2010年)

2010-10-20 | よしなしごと
八丈町議会選挙というエントリがアクセスの上位に来ているので何かと思ったら、今回4年ぶりに選挙があったようです。
(ググるとこのエントリが2番目に来るようです。それくらい取り上げられていないというのもマスコミ的にはどうなんでしょう・・・)


 結果はこのとおり (出典はこちら

★開票結果
投票総数 5,538票 (有効投票数 5,502票、 無効投票数 36票) 

 

 氏 名得票数 氏 名得票数
小 沢 一 美 488 長戸路 義 郎 351
山下 まつくに 487.577 奥 山 さちこ 329.474
岩 崎 ゆ み 481 菊 池 むつお 319
土 屋   博 469 山口 ひではる 248
水 野 よし子 440 菊 池 りょう 217
沖 山 宗 春 396 広 江  才 187
奥山 ひろふみ 365.525    菊 池 あやこ 185
山 下   崇 357.422   菊 池 孜 行 181
5,501.998
あん分切捨票 0.002


 投票率も前回よりは若干低いものの80%を超えており、関心の高さが伺えます。
有権者が6902人しかいないので、当然かもしれません。

次点との差が2票というのは悔しいでしょうね。
今回、立候補者のプロフィールがわからないので前回を参考にすると、4年前の選挙で当選した当時「71歳船大工」の伊勢崎さんは今回は立候補しなかったようです。
でもトップの小沢さんと二位の山下さん(ともに無職、ということは議員が本職?)はそれぞれ71歳と69歳になっているはずです。
また当選した土屋さん、沖山さんはそれぞれ72歳。
一方で最下位に沈んだ現職の菊池孜行(「しこう」と読む)さんは73歳なので、75歳くらいが八丈島のリタイヤの相場なのかもしれません。

ある意味うらやましい。


ところで「山下」さん「奥山」さん「菊池」さんが当選者14人中それぞれ2人を占めている(ほかに落選した「菊池」さんが2人いる)のですが、この苗字は八丈島では多いのでしょうか。


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日中関係の目線

2010-10-19 | よしなしごと
暢気に山歩きなどをしている間にも、中国で反日デモが起きていたようです。

おかしかったのが、日曜のニュースでインタビューされてた成都の大学生と思しき中国人女性が「日本のお店は悪くないので暴力に訴えるのは良くない」と言っていたのに月曜の朝のニュースでは「釣魚島を侵害している日本はけしからん」という発言で取り上げられていた。両方ともそれと対になる別の人のコメント(日曜は強硬派、月曜は穏健派)と一緒に取り上げられていたのだが、テレビの編集の怖さを垣間見た感じ。


その一方で、実はこういう個人ベースの高くも低くもない目線が大事なんだよなとおもったのがこれ。

ワリカンは日本の悪い習慣?~「中国嫁日記の王先生の衝撃」((新)第三の隣人 中国朝鮮族)
あわせてこちらも。
中国東北女性の生態学
中国東北女性の生態学パート2

元ネタの中国嫁日記は4コママンガ仕立てなこともありさらにほのぼのとしてます。


当たり前なんだけど、中国人であることより妻であることにまつわることの方が日常生活では大きな要素なんだろうなぁ。

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谷川岳

2010-10-18 | うろうろ歩き

久しぶりに晴れたので、先週末(10/16)谷川岳に行ってきました。

といってもお気軽トレッキング。
歩いたのは一ノ倉沢トレッキングコース
(地図はこちら参照)

上のほうは紅葉が盛りということでしたが、下はまだまだでした。

マチガ沢

マチガ沢


渋滞を避けて5時出だったので、まだ谷間は日が差してません。
人影もまばら。
前を行く3人は地元のパトロールの人。

道は国道(ハイ・シーズンは通行止め)なので、一ノ倉沢までは舗装されてます。


一ノ倉沢

一ノ倉沢



一ノ倉沢はロッククライミングの名所で、それだけ遭難する人も多く、道脇の岩には遭難した人たちの慰霊のプレートがたくさん取り付けてありました。



幽ノ沢





ちょっと戻って新道に回ります。

「新道」の方が登山道なのが面白い。

けっこう急な下り道で湯檜曽川の河原まで下ります。


新道からちょっとはずれて河原で一休み



(ちょっと露出オーバー。コンデジなので仕方ないか)



マチガ沢で旧道に戻ると、既にかなりの人出でした。

舗装道なので自転車で来る人も。

これは、マチガ沢の脇の岸壁で子供にフリークライミングの練習をさせている外国人一家。
右上の水色のレギンスをはいているのが小学校4年くらいの女の子



写真を撮っている母親の陰になってますが、奥で父親がロープを持ってます。


ロープウエイの土合口まで戻って、ロープウエイで天神平に。

昔スキーに来たときは小さいゴンドラだったのが、今や21人乗りの立派なものに。
2007年に入れ替えたとのこと。
確かに冬はスキー、夏は登山・トレッキング・観光と通年稼動できるからいいですね。

昼前になると観光バスも続々とつめかけ、ゴンドラは乗車待ちの列ができるほどです。


天神平からリフトで展望台へ



天神平から上は紅葉していました。


展望台から見た谷川岳




上のほうは秋本番という感じでした。











ここまで順調だったので、帰りに伊香保の水沢うどんを食べに寄ったら、川越インターの先で渋滞に巻き込まれてしまった・・・orz


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ラサ工業と沖大東島

2010-10-14 | あきなひ
尖閣諸島問題にからみ、東シナ海・南シナ海での領土問題がクローズアップされています。

「中国の海洋戦略」を読むと、中国海軍は近海だけでなく外洋(下図の「第2列島線」)まで行動範囲を広げようとしているそうです。

 



ところで、南大東島のさらに南、位置的には台北から東に伸ばした線と鹿児島から南に伸ばした線の交わるあたりに沖大東島という島があります。


 


実はこの島はラサ工業という上場会社(4022)が所有しています(参照)。 

そもそも社名の「ラサ」というのは沖大東島が「ラサ島」と呼ばれていたところから来ています(こちらのエントリ参照)。 


このラサ工業は過去2期営業赤字が続き、事業のリストラでの特損を資本準備金を振り替えてまかなうという土俵際の状態です。
そのため株価も低迷し時価総額は50億を切っています(参照)。


   


一方で、沖大東島はその場所から、領海や200海里の排他的経済水域の面からも重要です。
さらに国連海洋法条約で大陸棚の限界延長が認められたため、海底資源の面からも重要性を増しています(参照)。
(下の図のオレンジのところです。)
   とすると  


   50億円弱で沖大東島が買えると考えれば安い買い物だ


と考えるどこかの国も出てくるのではないでしょうか。  


土地を外国に買われたとしても、日本領土は日本領土ですし現状は米軍の射爆場として使われているのですぐに実効支配は難しいですが、米軍との契約が切れたときに更新せず、さらに住民を20~30年住まわせたあとに独立を宣言し、当該国への帰属を申し立てるとかいう可能性はあるかもしれません(そういうことが国際法上可能なのかはわかりませんが50年、100年単位の計画を立てれば不可能でもないかと)。  


そこで、たとえば某国が背後にあると思しき企業とか転売をもくろむ投資家がいきなりTOBをかけてきたら?  


これに対して国がTOBで対抗するというのも、予算のしばりや意思決定のしくみなどから考えて現実的ではない感じはします(やるとしたら財務省理財局なのでしょうか)  

そうすると、会社は沖大東島の所有権を国に売却するという対抗措置を取るのでしょう。
敵対的買収に対する防衛策のひとつ "crown jewel" ですね(「焦土化作戦」というと既に射爆場なのでストレートすぎるか)。  


このとき、会社の取締役は所有権にいくらの値段をつけるのが適当なのでしょうか。 

善管注意義務という点からは、固定資産税評価額+αであれば大丈夫でしょうが、株主のためという点では、国の足元を見てできるだけ吊り上げるのが筋になります。
ただ、それは社会的には非難ごうごうでしょう。 

また逆に、「株主からはなんでもっと粘らないんだ」と言われるリスクもあります。

普通のM&AのようにFinancial Advisorをつけて価値評価をさせるというのも金の無駄遣いですが、第三者間の公正な取引だと説明するのは難しいですね。 

企業側も銭金だけでなく「国益への配慮は最大のCSRだ」などとと考えると、なかなか難しいところです。  


そうなると、国に土地収用をしてくれ、というのが現実的な解決策になるのでしょうか。 
ただ、収用にあたっては、TOB期間内に土地収用の事業計画(自衛隊の基地を作るとか)を決定しなければならないあたりがネックになるかもしれません。  



法治国家とか企業のCSRというのもいろいろ大変です。



(一応disclaimer)

1.このブログはあくまでネタであり、有価証券の募集、売出し若しくは売買その他の取引若しくはデリバティブ取引等のため、又は有価証券等の相場の変動を図る目的をもってはおりません。 
(それでもこのエントリが「風説の流布」にあたるんじゃないか、と思われた方は、ぜひご指摘ください。)

2.このブログはネタの提供のみを唯一の目的としており、いかなる証券もしくは金融商品に係る売買の広告や勧誘ではありません。当ブログに記載されている情報の正確性、完全性及び信頼性については、明示されていると否とに関わらず、それらを保証するものではなく、記載されている証券、市場、市況についての完全な内容もしくは概要を紹介することを意図して作成されたものでもありません。あたりまえの話ですが、中の人はお客様が投資により利益を得ることを保証いたしません。投資にはリスクが生じますので、投資の判断を行う場合は慎重を期してください。当ブログは皆様の投資判断を代替・軽減するものではなく、投資その他の判断はご自身のご判断・責任でお願いいたします。

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久しぶりに春日電機

2010-10-13 | あきなひ

しばらくフォローしていなかった春日電機ですが、こんな話が。

あの「春日電機」社長だった篠原猛氏らの特背容疑で警視庁が家宅捜索

これは10/10の記事なんですが、このブログの春日電機のエントリへのアクセスはそれ以前の10/8に急に増えてました。
「春日電機 篠原猛」でググるとなぜかこのエントリがトップにくる(10/12現在)からかもしれません。

まあ、それだけマイナーなネタなので、家宅捜索だけではマスコミが取り上げるニュースにはならないのでしょうw

でも世の中には早耳の人が多いと今更ながら感心。



それで、肝心の春日電機といえば、上場廃止、会社更生法適用の後、新たなスポンサーをみつけて新・春日電機として再出発しているようです。

事業譲渡に関するお知らせ

当社は、因幡電機産業株式会社の子会社として設立された春日電機株式会社・・・と事業譲渡契約を締結し、事業譲渡実行に向けた準備を進めてまいりました。
そして、本日、東京地方裁判所から上記事業譲渡契約について、会社更生法第46条第2項の許可をいただきましたので、ご報告いたします。
平成21年11月1日の事業譲渡実行後は、譲渡先会社が当社の事業等を継続し、商品の安定供給と新製品の提供に尽力してまいります。


上場時の株主の方は気の毒でしたし、会社としても資金流出は残念でしたが、営業と従業員は維持できたのは不幸中の幸いだったと思います。

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『グリーン・ゾーン』

2010-10-10 | キネマ
イラクのバグダッドで大量破壊兵器の捜索に携わっていた米軍兵士(マット・デイモン)がその裏に隠されていた真実に迫る・・・という話。

アメリカには悪い奴もいるけど、まだまだ正義も行なわれている、という風にまとまっていて、いろんな意味で気配りの行き届いた脚本です。
(イラク人にも配慮してるけど、そこはちょっと不足な感じ)

大量破壊兵器問題は、国が公式に認めるまではハリウッド映画にはしにくかったであろう反面、今となってはテーマとしてちょっと古さを感じます。
新事実発見のドキュメンタリーなら別だったんだろうけど。

そんなこんなで、無難に楽しめるちょっと社会派アクション映画という収まりになっています。

ところで現代の米軍が登場する映画に出てくるハイテク兵器とか諜報技術とかって、どこまでホントなんですかね。「そこまでできるならここで使えよ」というようなつっこみどころは随所にあるので。


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ノーベル賞の遅行性

2010-10-09 | よしなしごと

そのとおり。

日本人のノーベル賞受賞に浮かれるな

ノーベル賞はあくまでも過去の業績に対して与えられるものであり、
鈴木氏、根岸氏の受賞にしても約30年も前の研究業績が受賞の理由である。
これは日本人が行った過去の研究が素晴らしかったことは示唆するが、
今後の研究レベルを保証するものでは全くない。
ノーベル賞は遅行指標であり、過去の結果を確認するに過ぎない。

少子化についても合計特殊出生率は昭和30年代から人口を維持するに必要な2.1ぎり
ぎりの水準まで低下していたので、現在の状態は予測できたはずですが、当時は平
均寿命が延びて「世界一の長寿国」になったことを喜んでいた、というのとなんとな
く似ているような気がします。




特に人と人との繋がりは研究において主要な役割を果たし、
世代を超えた研究者同士の繋がりが一旦失われれば、
それを回復するには膨大な時間がかかる。

この指摘は真剣に受け止めるべきでしょう。

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新卒採用の正常化

2010-10-08 | よしなしごと
現状は確かに異常。

大手商社:新卒採用遅らす方針 4カ月程度、協調呼び掛け
(2010年10月7日 毎日新聞)  

三菱商事や三井物産などの商社の業界団体である日本貿易会は6日、商社の大卒新卒者の採用活動の時期を遅らせる方針を決めた。従来より4カ月程度遅らせ、採用試験は大学4年生の夏ごろとすることを検討しており、13年春入社の新卒採用からの実施を目指す。また「商社業界だけでは効果が薄い」として日本経団連など関係団体にも協調を呼びかける方針だ。  

いいことだと思う。
というか、企業側も青田刈り合戦に疲れてきたのではないか。

僕が面接官をやってた頃も、4年生になったかならないかの学生だと、ゼミとか卒論の話もできず、結局サークルで幹事やってましたとかいう話の中から選ばなければならないのはけっこうしんどかった。  
それに、学生にしても3年の後半から企業のセミナーに出たりするから、内定が出なければ結局1年半近く就職活動をすることになるので、学生生活の大半が就職活動という妙なことになってしまう。 
また、以前のエントリ大学教員からみた学生の就職活動もご参考。  


いっそのこと、在学中の採用活動は禁止したらどうだろう。
そして入社は9月か10月にする。 

そうすれば、成績表も提出することになり、学生もまじめに勉強するだろう。 
その間の生活費は、社会奉仕を義務付けて給料を国が払うことにすれば一石二鳥。

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東浩紀+藤本壮介

2010-10-06 | うろうろ歩き

ワタリウム美術館での建築家藤本壮介展の一環の、東 浩紀とのトークセッションに参加。
建築の学生とワタリウム美術館のメンバーとおぼしき年配の方がほとんどで、仕事帰りのサラリーマンというのは僕だけだったようで、ちょっと浮いてたけど。

東浩紀を生で見るのは初めて。
『存在論的、郵便的』(1998)のときは20代だったけど、もう40近いんだよね。(まあ、そのぶん僕も歳をとったのですがw)

トークセッションといいながら、8割がたは東浩紀が話してました。
異業種ということでけっこう気楽に話していたようなので面白い話がきけました。


基本は「日本は昔からガラパゴスだったし、これからもガラパゴスでしかありえない」

「金がない時間がない土地がない」というところにものすごいエネルギーを投じて何かを作り出してきたのが日本で、その意味ではゲームも一戸建ても一緒

大化の改新から明治維新まで、日本は重要なときは外国人の力を借りて変革をしてきた。「いざとなったら伝統を捨てる」ことが日本の伝統で、その意味では今の日本はまだ困ってないのでこのまま2,30年は行くのではないか

明治維新以降の「近代日本」というのが一つのガラパゴス。教育のために言文一致運動を主導したのが文学者で、そのために文学者・評論家というのが特異な地位を占めている。その尻尾に自分(東)はいる。20歳くらいのときにそう考えれば海外に出ていただろうが、今の「大学に属さない批評家」(reviewerとも違う)というポジションは海外にはないので、(日本語を使う仕事とういう点を抜きにしても)自分は海外には出られない
だって、外国に柄谷行人みたいなpositionないでしょ?(ワロタ)

日本を出て成功した例では村上隆がいるが、彼は日本のオタクにも、日本の美術界(これもガラパゴス)からも評価されていない。
しかもグローバルには「日本人が何か面白いことやってる」というローカルな点で評価されている。
なので、とても孤独な立場ではある。

最後の村上隆についての指摘は特に面白かった。
評価軸のずれを鞘取りするといってしまえば簡単ですが、どちらからも諸手をあげて歓迎されているわけではないという状態に耐える強さ、したたかさが必要なわけです。
たとえば外資系投資銀行の日本人社員とかそういうものなのかもしれません(それこそ外からの見方ですが)。
また「世界と日本」に限らず、ポジションのとり方について示唆に富むと思います。


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MOMA

2010-10-05 | うろうろ歩き
マンハッタンの中ではグッゲンハイム美術館(企画展準備中で一部の展示のみだったので駆け足)と近代美術館(MOMA、これも大きかったので賭け足)を回りました。

こういうところを見ると、日本は明治維新以降の近代化と敗戦後の高度経済成長はして世界第2位の経済大国にまでなった、富の蓄積という点ではまだまだ不十分なところでピークを迎えてしまった(ここであきらめちゃいけないですけどw)と思います。

特に美術のような「衣食足りて」系の蓄積だとそのへんの差を実感します。まあ、その期間もアメリカはずっとGDP世界一だったわけですからストックの部分で追いつくのは無理があるのですけど。


ちょうどMOMAではマティスの企画展をやっていたのですが、日本でよくある企画展のようにどこそこの美術館からまるまる借り出した(最近のオルセー美術館の改装に伴う各所での印象派展など)ものでなく、自分の所蔵品に他所からの貸出を加えて厚みのある展示になっています。

このへんは、全米各地の美術館だけでなくヨーロッパの美術館とも距離的に近いというアドバンテージもありますね。

それから、展示作品のキャプションを見て気が付いたのですが、MOMAが購入したものは意外と少なく、"gift of xx"(寄贈)
とか"xx fund"(基金?)の所有というものが多いこと。
ファンドの中には独自のコーナーを持っているものもいくつかありました。

ここでfundと別にfoudationというのも登場します。たとえばこれ

 Kenneth Noland
 Trans Shift, 1964
 Acrylic on canvas, 254 x 288.3 cm
 Solomon R. Guggenheim Museum, New York,
 Purchased with funds contributed by
 Elaine and Werner Dannheisser and The Dannheisser Foundation

 81.2812
 (C) Estate of Kenneth Noland/Licensed by VAGA, New York, NY

fundは「投資ファンド」の「ファンド」と同じ作品の所有や購入を目的とする基金で、foudationは法人格のある財団みたいなものでしょうか。

なのでソロモン・R・グッゲンハイム美術館Solomon R. Guggenheim Foundationが運営していて、ソロモンの弟(ともに鉱山王の一族らしい)は"Simon Guggenheim fund" を残してMOMAに展示されていたりします。

このへんの仕組みを知ろうと、帰国してから『美術館は眠らない』というホイットニー美術館のdevelopment officeという資金調達をする部署でフェローをしていた人の本を探して(今は絶版)読んでみました。

この本によると、大きな時代背景としては、個人の名を冠した美術館が個人の手を離れて非営利目的の公益法人としての認定をうけるよになったのは1960年代から70年代にかけてで、同時にその時期から美術館にdevelopment officeという部門が設けられるようになったといいます。

一方で、財団とか基金と聞くと、下世話な私はすぐ相続税などの税金対策を考えてしまうのですが、1970年代までは作品を美術館に寄贈する際には寄贈時の市価を申告すればほぼ100%税の控除を受けられたものが、1986年からは36%になり、しかも鑑定士の評価が必要になってしまったそうです(現金の寄付も同様)。
 
ただ一方で、アメリカの富豪や企業家には、税制上の動機以上に、豊かになったぶん社会に還元しよう、また自分たちの文化は政府の介入なく自分たちで支えようという意識が強く、社会貢献として文化活動への資金が継続的に流れているそうです。
そしてその資金を取り込もうと、それぞれの美術館がしのぎを削っているようです。


この本ではこれと対比して、公立が多く「お上の予算」に縛られている日本の美術館や、企業などの芸術への援助のありかたを描いていますが、その辺の構造はこの本が出てから20年経った今では多少は変わっているかも気になるところです。
 

美術館に行っても、ソロバン勘定が気になってしまう性分は如何ともしがたいようですが、日本の美術館も負けずに元気をだしてもらいたいものです。

 
余談ですが、Musium Shopは美術館の1階と通り向かいの2箇所にあります。
ただ、売っているものは所蔵品のポスターや書籍を除くと、小物類はどこかで見たことのあるものが多く、日本の雑貨店の品揃えの良さにあらためて感心します。
ちなみにMuseum Shopの奥の一角にはMUJI(無印良品)のコーナーがあったりするのもその印象を強めます。

一方で表参道にMOMA Design Storeというのがあり、これは三洋電機がライセンスを得てやっているようです(パナソニックになったらどうなるんだろう)。
ネット通販もあるけど、売れているんでしょうか。
  





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