前のエントリで紹介したビルの買い手が決まったようです。
米系不動産ファンド、東京駅近接のビルを1400億円で買収
(2009年12月15日6:00 日本経済新聞)
米系大手不動産ファンドのセキュアード・キャピタル・ジャパンが東京・丸の内の大型複合ビル「パシフィックセンチュリープレイス(PCP)丸の内」を年内に買収することが14日分かった。取得額は約1400億円。5月に日本生命保険が取得した丸の内のAIGビル(1155億円)を抜き、金融危機後で国内最大の不動産取引となる。都心の優良不動産に投資マネーが回帰し始めた。
この1400億円というのがどういう意味を持つかと言うと、日経不動産マーケット情報によれば
同ビルの取得に際しては新生銀行が1120億円のシニアローンを融資。これを基に、新生証券をアレンジャーとするCMBSのハーベスト・ツー信託が2007年11月に発行されている。さらに外資系銀行などによって約600億円のメザニンローンが提供された。シニアとメザニンを合わせたローン総額は約1700億円。
ということで、メザニンのうち半分の300億円は飛んでしまったことになります。
一方、セキュアード・キャピタルの資金調達については、新生銀行はCMBSをデフォルトさせたくないのでセキュアードが300億円を用意すればシニアローンはそのままリファイナンスするのではないかという説もあります。
ただこの場合元のCMBSを償還して再度同じ格付けは取れない(LTVが80%にもなるし)ので、自己勘定で貸すのか、とかまあ、はっきりした根拠があるわけでもなさそうです。
なので「都心の優良不動産に投資マネーが回帰し始めた。」と言いきるには、セキュアード・キャピタルの資金調達がどうなるのかを見てからでも遅くはないと思います。
ところで、新生銀行がそのままローンを出し続けるというのは、前のバブルの崩壊期の銀行の「飛ばし」などの時間稼ぎ戦術と同じ構造ですが、この日本発の戦術は、"extend and pretend"という名前がついてアメリカに「輸出」されているようです。
(参照:U.S. banks 'extend and pretend' by repeating failed Japanese loan strategy)
さらに、語呂合わせの上手い人がいるもので、この"extend and pretend"には"deley and pray"という対語まであるようです。(参照)
「いざというときの神頼み」というのも洋の東西(や神様)を問わないのでしょうか。
でも、prayで通じるほど世の中甘くはないのも事実で、この語呂合わせもさらに続きがあって、Extend, PretendのあとはAmend,そして最後はSend となります。
こちらのサイトによれば、
Extend and Pretend - extend the financing out and pretend that business is going to come back and the leverage is going to be okay.
--返済期限を延ばして、そのうち事業が持ち直しローンも順調になるふりをする
Amend - realize that it’s not coming back and attempt to modify the financing to make it more “palatable” for everyone involved.
--でも回復は当分無理と気が付き、関係者全員が「まあ、いいんじゃないか」と思うようなものに契約条件を修正しようとする。
Send - realize that it doesn’t work, it’s not going to work, the business is not going to come back, and send the lender the keys and go home.
--修正もうまくいかず、うまくいく見込みもなく、事業も回復しないお手上げ状態だと悟り、レンダ―に鍵を渡して家に帰る
この元ネタはリーマン・ブラザーズのCEOのインタビュー番組(今年の7月なのでChapter11後の会社運営をしている人ですね)というところが泣けます。
Then "send". In other words send the keys.
That is the phases we are in right now.
ダ・ヴィンチは"Send"してしまったわけですが、セキュアードはいろんなしがらみのついたままの鍵を拾ったのか、自分で錠前を交換したのかが今後の注目です。
また、新生銀行とすれば「ここを先途と」がんばったのかもしれません。
(お後がよろしいようで)