サブタイトルは出版社側でつけたんだろうが、「中国の・・・」はさておき「中小企業改革で再び輝くか」というのは、ぱっと見「中小企業の復活」という期待を持って本書を手に取った人はがっかりすると思う。
ざっくり言うと
日本の中小企業は「中小企業のままでいること」に税制・制度的に様々なインセンティブがあり、それを放置したままでは日本の労働生産性は上がらない。
したがって、最低賃金を大幅に引き上げるなど生産性の低い企業を淘汰していく必要がある。
同時に賃金が上昇することで消費が増えればGDPも上昇する。
というのが本書の主張。
その通りだと思う。
高度成長期には中小企業の育成は重要だったが、現在では票と資金力(パーティー券購入など)を持っているために政治的な影響力は大きいことから、現在の情勢に合わない制度も温存され、さらには助長されている。
(大企業もそれに乗っかって、過去には、外形標準課税回避のための減資とか、中小企業への融資ノルマ達成のための投資ビークルである有限会社への融資などをやっていたのであまり偉そうなことは言えない。)
とはいえ高齢者と中小企業経営者の票が選挙を左右する現状をどうやって変えるか。
★3.5
ざっくり言うと
日本の中小企業は「中小企業のままでいること」に税制・制度的に様々なインセンティブがあり、それを放置したままでは日本の労働生産性は上がらない。
したがって、最低賃金を大幅に引き上げるなど生産性の低い企業を淘汰していく必要がある。
同時に賃金が上昇することで消費が増えればGDPも上昇する。
というのが本書の主張。
その通りだと思う。
高度成長期には中小企業の育成は重要だったが、現在では票と資金力(パーティー券購入など)を持っているために政治的な影響力は大きいことから、現在の情勢に合わない制度も温存され、さらには助長されている。
(大企業もそれに乗っかって、過去には、外形標準課税回避のための減資とか、中小企業への融資ノルマ達成のための投資ビークルである有限会社への融資などをやっていたのであまり偉そうなことは言えない。)
とはいえ高齢者と中小企業経営者の票が選挙を左右する現状をどうやって変えるか。
★3.5
戦国時代が面白いのだったら、その前の時代も面白いはず。
応仁の乱を、興福寺の僧侶2人の日記を軸に、それぞれの勢力の利害関係、力関係というリアルな政治として描いている。
著者は従来の歴史学を「階級闘争史観」-下の階級の者がその上の階級の者に対して闘争を起こし、打倒することで歴史は進歩する、という歴史観-として批判する。
言われてみれば当然なのだが、いつの時代もその時々の利害関係、力関係で動いている。その結果が後世からみれば「歴史」になるわけで、過去にさかのぼるほど史料が乏しく、事実についての公式記録しか残らないので、いわば後講釈の階級闘争史観が成り立つのだろう。
その断層が戦国時代前後にあったものを、史料の綿密な読み解きから一つ前倒ししてみると、応仁の乱も当然魅力的になる。
特に戦国時代よりも力のあった天皇というプレイヤーが加わること(特にその判断によっていかに自らの影響力を損なってしまったかも含め)、舞台が主に畿内にとどまることで、内容が濃密になっている。
難点といえば、親族同士で東軍西軍に分かれたり、血縁関係が分かりにくくて読んでいて混乱すること。
系譜図をスクショして常に参照できるようにしたら理解が早まった。電子書籍の使い方に段々慣れてきた(紙の本でも付箋つけとけばいいんだけど)
★3.5
応仁の乱を、興福寺の僧侶2人の日記を軸に、それぞれの勢力の利害関係、力関係というリアルな政治として描いている。
著者は従来の歴史学を「階級闘争史観」-下の階級の者がその上の階級の者に対して闘争を起こし、打倒することで歴史は進歩する、という歴史観-として批判する。
言われてみれば当然なのだが、いつの時代もその時々の利害関係、力関係で動いている。その結果が後世からみれば「歴史」になるわけで、過去にさかのぼるほど史料が乏しく、事実についての公式記録しか残らないので、いわば後講釈の階級闘争史観が成り立つのだろう。
その断層が戦国時代前後にあったものを、史料の綿密な読み解きから一つ前倒ししてみると、応仁の乱も当然魅力的になる。
特に戦国時代よりも力のあった天皇というプレイヤーが加わること(特にその判断によっていかに自らの影響力を損なってしまったかも含め)、舞台が主に畿内にとどまることで、内容が濃密になっている。
難点といえば、親族同士で東軍西軍に分かれたり、血縁関係が分かりにくくて読んでいて混乱すること。
系譜図をスクショして常に参照できるようにしたら理解が早まった。電子書籍の使い方に段々慣れてきた(紙の本でも付箋つけとけばいいんだけど)
★3.5
人間の体には腸管内だけで100兆個4000種類の微生物が存在し、人体は栄養の吸収、免疫の発動などを微生物にアウトソーシングしながら共生している。
著者は、マレーシアでのフィールドワーク中にダニに咬まれ原因不明の熱帯病に感染した。そして治療のために大量の抗生物質を投与された結果、感染症は治癒したものの、胃腸障害、免疫力の低下などにその後長期間苦しめられることとなった。これをきっかけに、共生微生物(マイクロバイオータ)に興味を持つようになる。
共生微生物の研究はここ15年(本書は2015年刊行)で飛躍的に発展した分野。
現在では、共生微生物のアンバランスが胃腸疾患、アレルギー、自己免疫疾患、肥満、さらには鬱病、自閉症にも影響を与えていることが明らかになっている。
本書は最新の研究事例を紹介しつつ、現代人が共生微生物といかにうまく共生するべきかについて語っている。
本書が「腸内細菌が何でも解決!」のようなトンデモ本、礼賛本になっていないのは、相関関係と因果関係を峻別しており(当たり前なんだけどこれをあやふやにして煽る本が多い)、また、科学的に解明されていない部分はきちんとその旨を書いているところ。
抗生物質についても否定しているわけではなく、過剰な使用(「クモを殺すのにクラスター爆弾を使う」)をするなと言っているだけ。
具体的な日常生活への心掛けにつながることや、なるほど、という部分(たとえば共生微生物が出産を通じて母親から子供に受け継がれる仕組みなど)が多く、非常に勉強になる。
★5
『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』の著者が、鳥類の祖先とされる恐竜の生態を、(本人曰く「恐竜ブームに便乗」して」鳥類学の人気を広めるべく)鳥類学の研究成果から類推して解き明かそうという本。
単行本の出版は上の本より前のようだが。
最近の研究で、恐竜は実は羽毛が生えているものもいた、とか実際はもっとカラフルだったのではないかということが明らかになってきている。化石からだけではわからない生態を鳥類の生態から想像力を膨らませて描いている。
「便乗」とおちゃらけていても、話はややもすると愛する鳥類への言及のほうがメインになりがちなところも含め、著者らしくていい。
★3.5
「令状なきGPS捜査は違法」の最高裁判決を勝ち取った話。これ自体読み物としてはとても面白い。
ただ、下の写真のように、本書は通常の講談社現代新書のカバーの上に事件の主人公である著者の写真のカバーがダブルであり、共著者の名前よりも大きく書かれている。(もっとも共著者はライターなので事件の主人公ではないのだが)
なおかつ亀石弁護士は「美人すぎる」弁護士としてテレビのコメンテーターとして活躍中で(知らなかった。確かに美人である)参院選に出馬が予定されていた(購入当時。結果落選した)。
ここまで選挙前の知名度アップのダメ押しキャンペーンを前面に押し出している本も珍しいし、講談社現代新書もそれに乗って売れればいい、という姿勢はどうなんだろう。
いや、本の中身は刑事弁護手続きや弁護士における最高裁の重みや登場する弁護士の背景などが描かれていて面白かったんだけど。
★3
タイトル的には「トンデモ本」の香りがしないでもなかったがとてもまともな本だった。
「いい医者の見分け方」を指南する本でも「既存の医療の間違い」を威勢よく糾弾する本でもなく、「よい患者」になる心得を説いている。
具体的には、きちんと医者とコミュニケーションを取り、自分の健康のために何が必要かを考えながら医者の言うことをきちんと理解しようとする姿勢が大事。
血液検査や画像検査の結果が「正常化」するのは、病気の治療の結果生じる(かもしれない)副産物。けれども、血液検査結果そのもの、画像検査結果そのものは、治療の目的でも何でもありません。
健康診断で「異常」を指摘されても、じつは放っておいてよい人はとても多いのです(そうでない人ももちろんいます)。ですから、もっと気をラクに「検査は検査、大事なのは自分自身の健康で、両者は別物」と考えるのが賢明です。
ただ、実際に「放っておいてよい」か「そうでない」かを適切にアドバイスしてくれるかかりつけ医に巡り合うのはけっこう難しいのだが。
★3.5
「ごく普通の人にもある程度は正しい病気の知識を身につけてほしい」と書かれた本。
細胞の損傷・適応・死、血流の異常のメカニズム、そして後半は今や「病の皇帝」であるがんの発生・増殖の仕組みや抑制・予防について書かれている。
高校の生物・化学知識を引っぱり出しながら概ねは理解できた感じ(いつも通り、もっとちゃんと勉強しておけばよかったという後悔は先に立たず)。
著者の実際の講義もそうらしいが、脱線やたとえ話が多く、それらが面白い(ここが合わないと読んでてつらいかも)。
いくつか面白かった話をメモ
・がんの死亡者数が増えたのは高齢化が原因。死亡率を年齢で補正すると女性は1960年代からずっと、男性も1995年以降は減少している。「日本人の死因の第一位はがん」という保険会社のうりこみを真に受けてはいけない
・タスマニアデビルは伝染性のがんで一時絶滅の危機に瀕したが、わずか20年、4~6世代で抵抗性を獲得しつつある。
・分子標的薬はピンポイントの薬なので、がんも変異すると効かなくなってしまう。薬が細分化するほどコストは高くなるが、日本の健康保険制度はそういう医薬品を前提に設計されていない。「命をお金に換算せざるを得ない時代」がやってきた。
ちなみにアメリカ、イギリスではQOLを維持する年間のコストとして500~600万円が限界と言われている。
★4.5