不動産業界の内輪ネタ満載とTwitter界隈で有名になったので買ってみたが、小説としても結構面白かった。
「おい、お前、今人生考えてたろ。何でこんなことしてんだろって思ってたろ。なぁ。何人生考えてんだよ。てめぇ、人生考えてる暇あったら客見つけてこいよ」
など、冒頭から名セリフ炸裂中編なのだが、途中から主人公の成長物語風になっていく。
ただ、中編のため、人物の背景描写やエピソードが少なく、ストーリーも抛り出すように終わるが、かえってその分、主人公のその後に思いを巡らすことになる。
城繁幸の解説は、「そもそも日本人にとって仕事とはなにか」というのが本書のテーマではないかという。
解説では、日本の雇用環境の枠組みを前提とするならば、仕事は仕事と割り切って目立たぬようにノルマをこなし続けるか、プレイヤーとしての充実感を貪欲に追及するかのどちらかにならざるをえない。そこの部分をこの小説は描き出しているという。
なら何で作者は『狭小住宅』というタイトルにしたのだろうか、と考えて、実はタイトルは『狭小邸宅』であることに気が付いた。
そこには単なるカテゴリーではない、住む人の思いが入っている。
--下手に喋るな、現実を見てわからせればいい。客が納得するまで何件でもまわしつづけろ。
予算や利便性、快適さ、さらには見栄などのすべてを満足させる理想的な物件はない。
その中でどこかで妥協しつつ家を買うか、または買わないかを客は悩み、そういう客にどうやって買わせるかに不動産屋はあの手この手を使う。
そのことをわかりはじめてきた主人公は、自らの仕事についてどういう選択をするのだろうか。