一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

出張の供

2013-07-28 | 乱読日記
暑さでやる気が出ないうえに出張やら何やら重なってごぶさたしております。

今回も手抜きで出張に持って行った、軽く読める文庫本の紹介です。


『家日和』

奥田英朗はストーリーの構成が上手くはずれがない。
これは短編集なので細切れの時間に息抜きにも良い。
一服の清涼剤のような毒も効いているし。





『目からハム』

イタリア語通訳の田丸公実子さんのエッセイ。
著者の経験、観察眼、人生観の三拍子そろい踏みそろいぶみでとても面白い。





『もっと秘境駅に行こう!』

会社員のかたわら、「秘境駅」めぐりを趣味にしている著者の2作目。
前著『秘境駅に行こう』(ブログで取り上げるのを忘れていたようです)は秘境駅というコンセプトとそれに沿った駅の紹介に重点がおかれていたのに比べ、こちらでは著者の好みや思いがよりストレートに出ている。
ここで取り上げられている駅に行こう、というより、こういう自分の興味だけを追う(他人からは理解されないであろう)旅行をしたいな、と思わせられる。
出張中に読むと「このまま先に足を延ばせば・・・」と楽しさと残念さを同時に味わうこともできる。





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『スマイリーと仲間たち』

2013-07-17 | 乱読日記

ジョン・ル・カレ「スマイリー三部作」の3作目読了。

ストーリーの構成と展開など小説としての完成度の高さについては評判通りだが、1970年代という時代背景の重さも味わえる一冊。

現在とは情報の絶対量が異なり、人生の選択肢も限られているという状況が、人生の不条理、組織の不合理・冷酷さなどをよりクローズアップさせている。

なら情報と選択肢が多い現在の方が幸福なのか、と考えると、そうでもないところが難しいところだ。

そして、人生の智慧は、制約の多いところから生まれるものなのかもしれない。

本書に尋問される時の心得として書かれていたことが、ストックデールの逆説と符号する。

非礼に非礼をもって対さぬこと、挑発されぬこと、得点せぬこと、機知や優越感や知性を見せぬこと、怒り、絶望、あるいはたまになにかの質問でとつぜん湧き上がる希望などに惑わされぬこと。単調には単調をもって、ルーティーンにはルーティーンをもって対すること。そして胸のいちばん奥底に、ふたつの秘密をしっかり抱いていれば、そんな屈辱にも耐えられれる。ひとつは彼らへの憎しみ、もうひとつはのぞみ--水のしずくが際限もなく石にしたたるのにも似た毎日がすぎて、ついにある日、彼らは根負けし、彼らの巨大なプロセスからやっとひとつ出てきた奇跡により、奪われていた自由をとりもどすというのぞみである。

そういう時代だったのだろう。


そして、オスカー・ワイルドの言葉も引用されている。

理想のために死んだからといって、その理想が正しいとはかぎらない。
 


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逆プラセボ

2013-07-15 | よしなしごと

ヘルスメーター(体重・体組成計)の液晶表示が出なくなったので修理に出した。

保証期間外だったが基盤交換を無料でしてくれた。

さすが○ムロン。

さっそく乗ってみたのだが、以前と体重、体脂肪率、骨格筋率、内臓脂肪レベルが同じにもかかわらず、体年齢が1歳ほど高く表示されるようになった。

1歳とはいえ、ちょっとへこむ

身長などの設定データは同じはずなのだが、この数年で基準が変わったのか?
それとも、前の基盤が不良品だったのか?


おだてられて伸びるタイプとしては、前の方がよかったのだが。


(交換がなければ、比較することもなかったわけだけど)

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『医療にたかるな』

2013-07-01 | 乱読日記

目から鱗が何枚も落ち、何度も膝を打って膝が痛くなり、という本。

著者の村上智彦氏は、夕張市の地域医療の再生に従事した医師(詳しくはwikipedia参照)で、地域医療に限らず医療制度全体の問題点を指摘しています。

医療については、行政や医師側だけでなく、利用者の患者の意識も大きな問題であること、そして利用者に誤ったインセンティブを与えている現行制度の問題を鋭く指摘しています。

著者は「戦う医療」から「ささえる医療」への転換を提唱します。
それは予防医療の重視、高度急性期医療に重点を置いている現在の医療機関の資源配分の見直しであり、それへのインセンティブを与えるための保険制度の見直しなどを通じて、医師のみならず歯科医や看護師などとも連携した地域医療の在り方へ制度を変えていこうというものです。

新書版に現行制度の問題点と将来への改善策、そして著者の怒りまで凝縮された好著です。


PS
社会保障制度改革国民会議のサイトを見ると、問題意識としては本書と同じ方向を向いているようにも見えます。

「これまでの議論の整理」(参照)では

病院で治す」医療から超高齢社会に合った「地域全体で、治し・支える医療」へ転換することが必要である。

という記述もありますし、たとえば医療の資源配分についてはこちらの14,15ページ前後に触れられています。

医療関係者だけでなく負担の増える利用者からの抵抗も大きいでしょうが、このままでは遅かれ早かれ破たんしてしまうので、きちんとした提言と実行に期待したいです。


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