一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『税と社会保障の抜本改革』

2012-08-26 | 乱読日記

良書。

年金・社会保障制度と税(所得税=国税、住民税=地方税、消費税)の仕組みと関係を網羅的にかつ分かりやすく説明した上で、その課題・問題点を一体的に論じています。

特に予備知識がなくとも読むことができ、問題の全体像を理解することができます。

今後なされる(はずの)税・社会保障の一体改革の議論を理解するためにはぜひ読んでおいたほうがいいと思います。


著者の指摘によると、現行制度の大きな問題点は

① 社会保険料の負担と受益の対応関係が希薄化している
特に制度間の所得移転(=自分の払った保険料のうち少なくない部分が他の制度に回っている)や国庫負担(=間接的に税金として負担している)によって資金の流れがきわめて複雑で、国民に実感も納得間もない。

② 制度が分立し、それぞれに加入条件の制約があること、また国庫負担投入のひずみにより、低所得者層の社会保険料負担が重くなっている
社会保険料には控除も累進税率もなく、国民年金は定額負担であり、国民健康保険は他の制度のセーフティネットにいなっている分保険料も高く市町村格差も大きい。

③ 「国庫負担」「公費負担」というがその財源は税でまかなえておらず、国債に依存している
これらは税の自然増収が見込め、高齢化率が低かった過去のモデルであり、これがあるために協会健保や市町村の国保が国への依存心をもってしまう。


これに対して、著者は改革の方向性をつぎのようにまとめています。

① 社会保険料の名目で費用を徴収する場合は、負担と受益の対応関係を明確にし、再分配の役割は税に一本化する。

② 政府部門間移転としての国費・公費負担はやめ、家計への直接移転とする。

③ 国や地方の一般会計からの税を投入する場合、その投入目的を明確にする (たとえばベーシックインカムの確保など)。

④ 税と社会保障制度全体を極力簡素にする

ここにもある「負担と受益の関係の対応関係」「制度目的の明確化」というのは本書を一貫して流れるスタンスであり、税や社会保障をめぐるさまざまな議論について考えるスタンスとしても非常に有効だと思います。

たとえば、子ども手当ての財源確保のための配偶者控除の廃止についてはこう指摘します。  

 税制も社会保障制度も、家族や労働のあり方に関する一定の価値観に基づいて作られている。例えば、個人所得課税における配偶者控除は、被扶養配偶者が家計の担税力の低下要因であり、かつ、家事や育児といった家庭内労働が税制上補償されるべきであるという価値観が根底にある。
・・・仮に、配偶者控除が廃止されるとしても、単に子ども手当てのためのつじつま合わせでいいはずがなく、配偶者控除の根底にある価値観が、今日において見直されるべきという民主党の判断に基づいていなければならない。
 その際、一方の年金制度において、第3号被保険者制度が残り続けるのであれば、一国の制度でありながら、拠って立つ価値観が異なることになりかねない。ある新しい価値観のもとに税制を再構築しようとするならば、年金をはじめとする社会保障制度もその価値観のもとに一体的に再検討されなければならない。


専門知識のない一般人にも十分分かりやすい本なので、「第40回 日本公認会計士協会学術賞 受賞」という帯が、逆に一般向けの本としてとっすきにくくしてしまっているのではないかと心配です。


 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ねんきん定期便

2012-08-24 | よしなしごと
1年間拠出額は変わっていないのに、受給予定額が微妙に減っている。
算定根拠を示していないところは、そのうち問題になりそうだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

クアラルンプール

2012-08-23 | うろうろ歩き
クアラルンプール

ジャカルタに比べると道路や地下鉄などの交通機関が整備されているので喧騒は少なめ。
ただ朝夕の渋滞はあります。

ショッピングモール



インド系の人が目に付きます。
ラマダン中だったので日中はムスリムの人は外出を控えているからでしょうか。

ダイソーの5リンギットショップ。日本円だと約125円になります。
これが大人気。



また「東京street」というコーナーもありました。



こう人気があると、期待に沿わねば、という気持ちになります。


MRTの女性専用者。
ヒジャブ(頭にかぶるスカーフ)の趣旨からいってもムスリムにはなじむ仕組みかもしれせん。



自分の無知を実感したのは、ムスリム=アラブ人と無意識に思っていたこと。
イメージ的にはムスリム=髭を蓄えた男というのがあったのですが、こちらでは髭を生やしている人は見かけませんでした。
髭=男性の象徴というのはアラブの文化であって、イスラムの文化ではないんですね。


Extra Coffee Java Chip Frapputino

カカオ豆・コーヒーの産地が近いだけあってのオリジナル商品。
飲んでみたかったのですが昼に食べた料理の香辛料がお腹に来たのでつめたいものは回避



もっともスタバはひとつのショッピングモールに2つあるなどザラで、いたるところにあります。


クアラルンプールと空港の間にある新都心プトラジャヤ

過密化するクアラルンプールから官庁を移転させた街。1990年代から開発が始まったものの、アジア通貨危機や予算不足で首都機能の完全移転までにはいたっていないそうです。



大きなブロックに立派な建物が立ち並んでいて壮観ですが殺風景でもあります。
マレーシアは国民の約3割が公務員だそうで、このへんは長期政権の残滓なのでしょうか。



クアラルンプールの郊外にはカジノがあります。
標高2000mの山の上を大開発したもの。
ここの創業者はマレーシアの初代首相と懇意で、国内で唯一のカジノ免許を持っているそうです。

カジノの中にある、創業者の足跡をたたえる記念館の模型。
全体の規模の大きさが分かります。

ホテルが7~8棟にカジノも3つ(たぶん)、遊園地もあります。



この会社は、ここの他にカジノ・クルーズ船や、最近ではシンガポールのセントーサ島のカジノも経営しています。
こちらのカジノやホテルには、あまり更新投資をしていない感じです。
政治情勢に影響されやすい事業なので、リスクヘッジのための多店舗展開への投資に重点を置いているのでしょうか。
ただ、中は中国人観光客中心に盛況でした。
(イスラム教では禁止されているので、マレー系の人はいない)


日本でもカジノ解禁の議論がありますが、要するに外貨獲得が目的なわけで、日本人から収益をあげてもパチンコ中毒者の債務問題が拡大するだけなので、解禁するにしてもこういう隔絶したところに設置することが大事なように思います。

それこそ尖閣諸島とかどうでしょうか。
中国政府としては自国領土といっている以上、中国人観光客に渡航制限しづらいでしょうし。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『経済大国インドネシア』

2012-08-21 | 乱読日記
行きの機中で読んだ本

インドネシアの政治、経済(経済政策から財閥まで)、社会(宗教・人口・地域問題)の歴史と現状を満遍なく、しかもバランスよくとりあげている好著です。
インドネシアに愛情をもって接しながらも身びいきにならずに冷静に分析したうえで、時には愛の鞭を振るっています。

他の国についてもこういう風まとめてくれればいいのに、という、お手本になると思います。

2011年12月出版の本なので、インドネシアの現状を一通り知りたい人には最適だと思います。
(そう思う人が多いのか、既に4版を重ねています)


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ジャカルタ

2012-08-20 | うろうろ歩き

シンガポールからインドネシアに入ると入国時に25US$の入国税をとられて、いきなり経済力の差を感じます。
ちなみに出国時にも15万ルピアの出国税がかかります。

そして入国カードの裏側には、麻薬の運び屋は死刑です、と注意書きが書かれています。

もっともシンガポールでも半年で1000人以上が逮捕されているそうなので、これはインドネシアに限ったことではなさそうです


ジャカルタで有名なのは交通渋滞。
地下鉄などの公共交通機関が都市化の進展についていっておらず、多くの人が自動車やバイクで通勤しています。 しかも、高速道路優先で整備したので、ジャカルタ市内まできたはいいもののそこからの一般道の渋滞を加速しているようです。

朝の渋滞

 

夕方のバス

 

渋滞では少しでも前へとクラクションを鳴らしながら鼻先をつっこむのがコツのようです。
車の運転は相当荒く、高速道路の路肩走行などは普通で、皆車線を意識しない自由な走りをします。
特にバイクが車の間を左右に縫って走るので(しかも2人乗りとか荷物を抱えている人も多い)、自動車の運転には相当気を使いそうです。

車は日本車が多く、バイク(スクーター)はほとんど日本製。
中古でも故障が少ないのが人気なのでしょうか。
帰りにホテルから空港までタクシーを頼んだ時に荷物が多いと言ったらホテルのコンシエルジュが「それならベンツ(*)より大きい車を手配しよう」と言われて、やって来たのがカムリだったのには笑いましたが(確かにカムリの方が積めるらしい)。
(*) ジャカルタのタクシー会社で安心できるのは「Silver Bird」と「Blue Bird」の二社らしく、ホテルにはいつも「Silver Bird」が止まっていました。「Silver Bird」の車両はベンツのEクラスが多かった。


渋滞の喧騒だけを見るとまだまだ発展途上国という印象を受けますが、インドネシアの一人当たりGDPは3500ドルであるものの、ジャカルタの都市圏に限って言えば、一人当たりGDPは7000ドルを超えている立派な大都市です。

ショッピングモールも立派なものがいくつもあります。

 

 

ショッピングモールは今やアジアの大都市どこにでも見られる感じです。

そして不思議なのは、どこにもブランドショップが入っていて、隣あったモールに同じブランドが入っていることもあります。
地下鉄や地下通路などが整備されておらず街中でも暑いので、東京や大阪と違って施設間の徒歩での移動というのがないせいもあるのでしょうか。


人気だったのが日本食レストラン。
どこの施設にも複数の日本食レストランがあります。
大きく焼肉系と寿司系に分かれるようですが、ラーメン店もけっこうあります。

インドネシアは世界最大のイスラム教徒を抱える国ですが、日本食は魚と野菜が中心で、豚肉でないと成り立たないという料理は少ないので、ハラールな料理が多いのも人気の理由かも知れません。
(昔、味の素が豚由来の原料を使っていてインドネシアで問題になったことがありましたね。)

中華が続いたので口直しにと頼んだカレーうどん

牛肉がガッツリはいっていたのは想定外。
汁は日本のカレーうどんと同じだし肉もおいしいのですが、軽くしたいときに出たのできつかったです。


イスラム教では、今年は8月19日でラマダンが終わり、そのあとはレバランという長期休暇に入ります。
日本で言えば正月みたいなもののようで、皆いっせいに帰省するのでこれまた帰省ラッシュで大渋滞になるそうです。

行ったときはラマダン中だったので、ムスリムの人は昼は飲食はしません。なので日中は飲食店も空いています。
ただ、日没後は飲食可なので、夜は飲食店は混んでいます。
特に最近は日没後に友人たちと一緒に食事をするのが流行っているらしいです。
日中飲食せずに、さらに長時間渋滞の中を帰るよりは、街中で食べたほうがいいということでしょうか。
実際、女子会や職場の飲み会(アルコールは禁止なので「食事会」ですね)のようなグループを沢山見かけました。


インドネシア全体のことはわかりませんが、ジャカルタについていえば、都市化・人口集中のスピードにインフラ整備が追いついてくれば、発展が期待できる印象です。

あと、政治の安定も重要です。
イスラム過激派のテロを警戒してか、オフィスだけでなく、ホテルやショッピングモールの入り口でも手荷物のX線検査と金属探知機によるチェックをおこなっていたのが印象的でした。
(中国と違って真面目にやっていましたが)

初の民主投票で選出されたユドヨノ政権も2014年で2期目が終わり任期満了になるので、その後の政治の安定も期待されます。


余談ですが、インドネシアはコーヒーとカカオ豆の世界有数の産地でもあります。
コーヒーでは、ジャコウネコの腸内で発酵した貴重品とされるコピ・ルアク の産地でもあります。

そこで土産物店で探したところこんなものが。

かえってマイナス効果になる翻訳のいい例ですね。
特に日本人は漢字が読めるので日本人にも売れなそうです。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シンガポール

2012-08-19 | うろうろ歩き
一人当たりGDPは日本を上回るだけあって、とても小ぎれいで物価の高い国(街)で、しかも景気がいいので日本のバブルを思い出させる感じもあります。


The Fullerton Bay Hotelの屋上のバーからの眺め。



シンガポールは中心地区が非常にコンパクトにまとまっているので、マリナ・ベイをはさんでサンズとお互いに借景になっていて、景観的には迫力があります。

一方で都市計画がしっかりしていて、マリナ・ベイ周辺の空き地(埋立地)に今後の開発計画もあるのでオフィスビルの賃料は高騰までは至らないそうです。

都市計画館(正式名称を忘れた)の模型。
手前の茶色のところが今後の計画。まだまだ拡張の余地がある、またはやる気満々ともとれます。



住宅も国が土地の供給をコントロールしているので、高騰しだすと様々な抑制策をとっているそうです。


物価は全般的に高い。
食事も街中だと東京と変わらない感じです。

自動車は欧州車(ベンツ、BMWが多く、中国に比べてアウディは少ない)が多く、速度制限もあるし高速道路にも長い直線があるわけではないのにランボルギーニとかフェラーリとかがいます。
日本車は左側通行にも関わらず少ない感じ。

シンガポールでは自動車の購入権(COE)が入札にかかり、最近だと600万円くらいするそうです。それに関税が車両価格の100%かかるので、たとえば日本で150万円のVitzを買おうとしても900万円になってしまう。
そこで安い車を買うとCOEを買ってるんだか車を買ってるんだかわからなくなってしまうので、どうせ車を買うなら高い車を買おうということなのかもしれません。


シンガポールならではの食べものとかお土産というのがなく、豪華なホテルとカジノがあるくらいなので、個人的にはさほど観光地としての魅力は感じません。
ただ、海に面しているので東京よりも最高気温が低いのと日陰だと風が涼しかったのはよかったw
屋内は死ぬほど冷房が効いていてこれはこれでちょいとつらいですが(これはアジア各国共通)


シンガポールは水はマレーシアからの供給に依存し、電力は火力発電なので燃料は輸入に依存し、人材も外国から積極的にスカウトし(諸外国の実績のある研究者だけでなく、マレーシアの優秀な高校生を大学学費免除・2年間就業を条件にスカウトし、その後国籍を与えるということをやっているらしい)し、企業も税制優遇で誘致し、という形で「0から作る」部分、「地方」を外部化して効率的な都市国家を作り上げています。

「計画経済」という意味では高度成長期の日本もそうだったわけで、現在そのほころびがでているわけですが、シンガポールの試みはどこまで成功し続けるのでしょうか。

たとえば、マレーシアとタイの国境、マレー半島の一番細い部分にあるクラ地峡に運河を通そうという計画がずいぶん昔からあるそうです。もっとも現時点で具体的なスケジュールが決まっているわけではないようです。

ただ万が一これができれば物流拠点としてのシンガポールの優位性は失われてしまうわけで、そうしたときにシンガポールはどういう行動をとるか興味があります。

反対運動などというけち臭いことをせずに、運河ごと買ったりするんじゃないかと思うのですが。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

訂正

2012-08-15 | うろうろ歩き

この前、中国でのNHK放送がタイムラグがあるのは検閲があるからではないか、という話を書いたのですが、シンガポールでもやはり番組は時差+30分遅れくらいでした。

オリンピック放送については、IOCとの放映権の契約の関係で外国に放送できないという事情もあるようで、ほかにも海外ドラマの放映などもそういう問題があるのでしょうから、NHKも海外向け放送用に再編集して送信しているのかもしれません。

でも、薄煕来事件のときは、ニュースの画面が突然砂嵐になったらしいので、中国当局もなにがしかのコントロールは行われているのでしょうけど、取り急ぎ濡れ衣は晴らしておきます。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

"Safe House" (邦題「デンジャラス・ラン」)

2012-08-12 | キネマ
9/7に公開予定らしいですが一足お先に機内で。

あらすじをgoo映画から引用。
(公式サイトはこちら

南アフリカ・ケープタウン。諜報活動の最前線から遠く離れたこの地で、CIAの新米職員マット・ウェストンは隠れ家の管理という閑職に辟易していた。ある日、大物犯罪者が護送されてきた。その男の名はトビン・フロスト。元CIAの超エリート諜報員にして、今は国家機密を密売する危険人物として世界中から指名手配を受けていた。そんな時、隠れ家が武装した男たちに襲撃される。命からがらマットはフロストを連れ出すが…。

原題はその隠れ家からとった"Safe House"、邦題は「デンジャラス・ラン」。

この手の設定は、展開としては「背後にある陰謀」とか「実はこいつが裏切り者だった」というパターンになってしまうので、謎解きとしては比較的先が読めてしまいます。
また舞台設定も地味なので、最近の金をかけたテレビシリーズ物との差別化しにくい難しさがあります。
なので、マット・フロスト役のデンゼルワシントンの芸を楽しむ映画と割り切ったほうがいいのかもしれません。
(ウェストン役のライアン・レイノルズはイケメンで有名らしいので、そのファンの方もどうぞ)

ひょっとすると、役者を変えてテレビシリーズ化を狙っていたりして・・・(エンディングの後に後日談を加えれば出来る感じです)


<iframe width="560" height="315" src="http://www.youtube.com/embed/3z7rhZzBDHw?rel=0" frameborder="0" allowfullscreen></iframe>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国おまけ

2012-08-11 | うろうろ歩き

今回、大連→天津→北京と回ったのですが道中の印象をあれこれ。

・ 服装が小ぎれい

4年前に上海に行ったときより、全般的に服装が小ぎれいになっている感じがします。 

天津のバス停


北京の地下鉄

 


大連の裏通りの屋台にいくとこんな感じですが。


一方で、小じゃれた店が並ぶ北京の三里屯地区だと、こんな感じ。

 



・ 無印良品、ユニクロ

北京の都心のショッピングセンターに「日本ブランドフロア」のようなところがありました。
だいたい1人民元=10円換算の値段で売っています(為替レートは12.5円くらい)。
無印良品はけっこう人が入ってました。
ユニクロは三里屯にも巨大な店がありましたが、どちらかというと派手目の服装が好まれるなかで「中の上」あたりを狙っているような店舗と価格戦略は当たるのでしょうか。


・ セキュリティ・チェック

とにかくいろんなところでセキュリティ・チェックがあります。
高速鉄道乗り場、地下鉄、鳥の巣の入り口、天安門広場、都市計画館など公共のところはほとんど手荷物検査があります。
ただ、荷物を通すもののほとんど真面目に見ておらず、金属探知機もピーっと鳴ってもそのまま通されたりします。
お役所仕事そのものという感じ。

また、高速鉄道に乗るときはきっぷのほかにIDカードもチェックされます。
いざというとき移動の制限をかけることができるようにということでしょうか。
それやこれやで駅はとても混んでいます。

天津駅

 


 ・自動車

大連・天津・北京とも高級車が目立ちます。 ベンツよりアウディ・BMWのほうが人気があるようです。
特にアウディ、それもA6、Q7という大きい車が目立ちます。
VWグループが早くから中国に進出した影響でしょうか。

子供にも人気?

 

さらにマセラッティ(住宅地のスーパーマーケットの前で展示会をやってたりするらしい)、ジャガー、フェラーリからランボルギーニ(さすがに注目を集めていた)まで見かけました。
レンジローバー・イヴォークなどは都内ではまだ見たことがないのですが数台見かけました。

普通の人や商用車は現代・フォルクスワーゲン・起亜が多い感じです。
日本車の存在感は残念ながらあまりない感じです。
このへん、現地生産に出遅れた影響でしょうか。

 天安門広場近くで見かけたパトカー


手前がVW、真ん中二台が現代、奥にプリウス(プリウスを見たのはこれだけでした)。
これは外交的配慮なのでしょうか?

といいながら、天安門広場にある大ビジョンでは、中国の観光名所として西沙諸島も紹介されてましたが。


・ NHK放送にも検閲?

天安門といえば検閲ネタ。
ホテルのテレビではNHKやBBCなど外国の放送も映るのですが、NHKはリアルタイムの放送ではなく、30分くらいずれて放送されています。
時差が1時間あるので本来北京の6時にNHKの7時のニュースが見られるはずなのですが、6時半頃の放送が流れます。
そして、プログラムも総合テレビそのものでなく、編集されています。なぜか四国のローカル放送がはさまったり、朝一から無難な風景番組が流れたりします。
たぶん中国中央電視台で再編集しているのではないかと思います。
そんなことをやっているからあんなに大きなビルがひつようなのかもしれません。


・ セミの鳴き声が違う

北京でもセミが鳴いていたのですが「ジュワジュワジュワ」という日本では聞いたことのない低く濁った鳴き方をします。

中国ではセミを鳴き声から「知了(zhi liao)」というらしいですが「ミンミンゼミ」「ツクツクボーシ」ではそうは言わないでしょうから、種類が違うのかもしれません。
(参照:書迷博客「セミの鳴き声」在日中国人女性の随筆「蝉(知了zhi liao)」


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

北京普請道楽めぐり

2012-08-09 | うろうろ歩き

昨日の『構造デザイン講義』でもいくつか取り上げられていたこともあり、北京では万博、オリンピックを契機にここ10年世界中から建築家を集めてデザインを「食い散らかし」ている中国の普請道楽ぶりを見ようと、渋滞の中急ぎ足で回ってきました。


オリンピックのメインスタジアム「鳥の巣」

設計はスイスの建築家ユニットヘルツォーク&ド・ムーロン。 
プラダ・ブティック青山店の設計者でもあります。
(ちなみにプラダ・ブティック青山店の外壁のガラスは1枚1000万円したとか)

『構造デザイン講義』によると

中国というのは変わった国で、設計がそこそこ見えてくると、中国設計院という国の設計事務所のような機関が出てきて、色々と調整をし、場合によっては、後は自分たちでやるから結構です、ということになるらしい。ちなみにヘルツォークは、その段階で鉄骨量を20%以上減らすように命じられたという話を聞きました。・・・まあ、建築というのは、巨大になればなるほど色々な思惑や事情が混ざりこむものですから、こんなことは日常茶飯事です。問題は、非常に高度な構造であった場合、それをものづくりのレベルまでフォローアップしなくて大丈夫なのか、ということです。全体の系やロジックが分かっていないと思わぬことが細部で起きてくる、ということもあるからです。


ここは依然として観光名所になっています。
修学旅行のような団体旅行が多かったですが、中国はとにかく敷地が広いので夏場はたどり着くだけで疲れてしまいます。

中国人も暑がっていたので、日本人がひ弱なわけではないとちょっと安心。



「鳥の巣」の構造材を下から見るとこんな感じ。

 

この銀色の柱は、鉄骨(多分)の上に金属のパネルを張ったもので、近くで見るとちょっとペナペナ感があります。
あと、この写真は階段を降りるところで撮ったのですが、階段面の水勾配がうまく取れていないようで、水溜りがいくつかあったのが気になりました。(だから日本人は細かいと言われるのかもしれないが・・・)


この近くにあるのが国家水泳センター、通称「水立方」。

 

オーストラリアのPTWアーキテクツの設計。
これも『構造デザイン講義』によると

最近流行っている手法です。ボックスのようなものをつくり、それを泡のようなスポンジ状の構造で構成するというビジョンを立てる。そこに働く応力に対して解析を掛ける。応力が集中しているところは泡のユニットを小さくし、あまり応力が働いていないところは泡を大きくつくり、応力に従ってこの泡を増やしたり減らしたりしてこういう構造体を構築するのです。

建物内部には競技プールのほかに一般市民向けのウォータースライダーもあって、見学客以外にもプール利用の人もけっこういました。


「泡」ですが、近くで見るとこんな感じ

 


内側と外側に鉄の部材で泡の骨格をつくり、それを透明のフィルムで囲んでいます。

 

遠くから見るぶんにはいいのですが、近くで見るとフィルムの汚れが気になります。
だから日本人は細かい、とまた言われるかもしれませんが、メンテナンスも考えた素材にできなかったものでしょうか。


鳥の巣と水立方は建物としては「隣」なのですが、ものすごく広い通りを挟むので、行き来だけで一汗かきます。

   

この通りは、故宮・天安門広場を貫く南北軸の延長上にあるとのことです。
こういうシンメトリー、大通り、というのは北京の特徴でもあります。
その代わりに建物は何でもありなのでしょうか。



「何でもあり」度合いが特に強いのが中国中央電視台(国営テレビ局)のビル。

 

独特の形状が威容というより異様です。
イサムノグチの彫刻「エナジーボイド」を建築にしてしまったかのような感じ。

 

『構造デザイン講義』の時は計画段階だったようです

二本の巨大な超高層が上空で結び合っています。巨大なキャンティレバーです。でき上がると、人目を驚かす威圧的な建物になるのではないかと思います。外壁に入っている斜めの線は、力学的な解析で密度が決まっています。

ただ、内藤先生は  

国家の企みと建築家の野望が手を取り合った共犯関係であることがあまりに明白で、見ていてこちらが恥ずかしくなります。    

と手厳しいです。

実際近くではものすごい威圧感ですし、ビルの合間から見えるだけでも独特の存在感があります。





「共犯関係」はかなりの成功を収めているといえます。


ただ、天安門広場の近くにある都市計画博物館(というような意味の名前でした)に行くと、まだまだ派手な建物が出来るようです。

   

右端の∩型の建物はまだ出来ていないのですが、さすがにやりすぎ感があります。  

また市街地中心部の建物を忠実に再現した巨大なジオラマもあります。  
これは見学者の市民向けだけでなく「ウチのビルはもっと派手にしろ」と施主の競争意識を煽る効果もあるのかもしれません。

 

上のほうにある茶色いところが故宮です。  


この都市計画博物館というのは主要都市には必ずあるようで、意気込みが伝わって見所ではあります。


北京国際空港ターミナル

 

これはノーマン・フォスター。
大屋根は鉄骨を複雑に構成させています。 平面図はターミナルは曲線で構成されているのですが、中央の軸線は故宮をイメージしたかのような列柱とシンメトリーが特徴です。
ターミナル間のシャトル乗り場からの景色

シンメトリーに配された柱を赤く塗るあたり、コンペ向けに媚びた感じもしますが、外国人旅行者にとっては北京らしさが出ているようにも思えます。


最後は、今回泊まったホテルThe Opposite House

 
(写真拝借)

設計は日本の隈研吾。
"the opposite party"もない国で"opposite house"とは刺戟的と思ったのですが、中国古来の家作り形式「四合院」で居住部分の反対側にゲスト用の部屋を作ったことにちなんだネーミングだそうです。
ちなみに中国語表記は「瑜舎」。「瑜」とは美しい珠という意味のようです。


エントランスロビー

 

レセプションカウンターがなくレジと情報端末があるだけ。
ソファーに坐ってチェックイン/アウトをします。


ホール

 

オブジェの奥がレストラン。
他に地下にイタリアン・レストラン、バーも1Fと2Fにあります。


地下のトイレ

 

奥が小用。用を足しているとそのまま宇宙船に連れて行かれそう。
はたまた軽井沢星のやのメディテーション・バスか。

室内も凝っています。

浴槽がカーテンの仕切りだけでオープンスペースにおいてあります。

お湯がはねないか、あふれないかと気になるのは小市民の証拠w

また、シャワーブースも別にあるのですが、床面の高さが変わらないので水が染み出してきます。
思わずタオルで拭いてしまったところも小市民w

全体的に木を多用していることもあり、メンテナンス費用がかさみそうです。
当日もロビーの裏手の入り口のフローリングを張り替えていました。

また、競合が出てくる中でいつまで話題性を保っていられるかがポイントになりそうです。

以前聞いた「金持ちがホテルを持つことはあるが、ホテルを持って金持ちになった奴はいない」(オペレーターは儲かるかもしれないが)という言葉を思い出してしまいました。


日本もバブル期には外国人建築家の実験場みたいになったわけであまり他人のことは言えませんが、さすが中国、その部分まで日本を凌駕しています。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『構造デザイン講義』

2012-08-08 | 乱読日記

海外に行って見慣れない形状の橋や建物を見たときに役に立つのではと思い衝動買いしたまま積読していたものを、 今回中国行きの機中のお供に。

建築家内藤廣氏の東京大学での同名の講義をまとめたものです。
書名からは、構築物はそれが大型化・高層化するほど複雑な構造計算に依存するようになり、結果最終的な形状にはそれぞれ理由があるんだ、ということを説明する、いわばバウハウス的な「形状は機能に従う」内容かと思っていたら、いい意味で裏切られました。

コンピューターによる構造計算技術が飛躍的に進歩した結果、それがブラックボックス化してしまい、昔の手計算をしていた時代のように様々な段階でチェックが効かなくなった、一方で建築家・エンジニアが構造全体に対する想像力を持たなくなりつつあることへの危惧を語ります。     

工学的な知識を土台にして、どのようにすれば物質に対する感性を磨けるか、どのようにすれば構造全体に対して想像を巡らせることが出来るか。そうしたことがこれから重要になってきます。極論すれば、これらを欠いた人は、エンジニアになる資格がない。もちろん、建築家になる資格もありません。    

恐らくみなさんが将来抱えるはずの大問題ですが、現場でモノをつくっている人達のノウハウが急速に落ちています。人材不足、ある種、現場の空洞化が進行しつつあります。現場が何とかしてくれる、メーカーが何とかしてくれる、なんていう幻想は捨てたほうがいい。だから、設計者の技術に対する認識や知識が中途半端でいい加減だと、必ず現場で問題が起きます。特に高度な技術を駆使する場合は、設計者がちゃんとした知識を貯え、より綿密に現場を監視する必要があります。

本書では、石による組構造、鉄、コンクリート、木造と素材ごとの特徴と使われ方、代表的な建築物について解説していきます。
最後には最前線の動向についても触れています。  
ただいわゆるポストモダンの建築物については、著者は批判的です。  

今はコンピューターを使ってあれもこれもできるという、謂わばテーブルの上に全部広げて食い散らかしている状態です。構造はコンピューターというテクノロジーによって生み出された余剰を蕩尽している状況、つまりバブルと言えなくもありません。そこではデザインそものもがその余剰に振り回され、方向性を見失っているのです。構造デザインは、コンピューターのさらなる進化によって、より多様化の方向へ向かうのか、それともさらに次元の高いパラダイムへと収束していくのか、いまだに予測が立っていません。  

2008年出版の本なので絶版になっているかと思いきや、まだ買えるようなので、建築に興味のある方は手元に置いてもいいと思います。



 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする