非常に面白い本でした。
扇情的なサブタイトル
「実録・中国に消えた投資マネー」
と、帯のコピー
そこは恐ろしき無法地帯だった!
うごめく大金、群がる投資家、
腐敗した共産党幹部、裏切りの連続・・・・・・。
ウォール街の投資家が体験した中国ビジネスの闇。
を無視しても読んだ甲斐がありました。(しかし、日本経済新聞社ってセンスないですね・・・)
著者はイギリス人で、アーサーアンダーセンの香港事務所のときに中国に興味を持ち、1980年代後半に中国の大学に留学します。その後アメリカ人のインベストメントバンカーと知り合い、中国投資のファンドの運用担当者として中国での合弁企業への投資と経営を行うことになります。
本書は中国への外国人投資の黎明期での著者の悪戦苦闘の物語です。 しかし、著者はかつ中国文化と中国人への敬意や愛情を持った、金融の世界の外のイギリス人で、当時の改革開放路線の初期の中国人の思考・行動様式とともにアメリカの投資家の思考・行動様式をともに客観的に見る目を持っています。
上のコピーのように決して外国人投資家の目から中国市場を「闇」と一方的に切り捨てたりはしていません(このコピーを書いた人は中身を読んだのでしょうか?)。
逆に著者はアメリカの投資家の、何でもビジネススクールのケーススタディどおりに行くはずだという行動様式や、悪いニュースを受けたときの投資家達の反応を、脇から冷静に見ています。
中国投資ビジネスの実態とともにアメリカの投資銀行家の実態も垣間見ることができる(=「あるある、こんなこと!」といろんなところでにやっとできる)、そこが本書の一番の魅力だと思います。
ぜひ、お勧めです。
ここまでで本書を読んでみようと思われた方は、以下は飛ばしていただきたいのですが、終章に著者のスタンスがあらわれた文章がありますので、ちょっと長いですが引用します。
この新たな経済成長(注、2000年以降の)のおかげで、外国投資家の間には、しばらく第二の投資ブームが続きそうである。彼らは最初の十年で何十億ドルも失ったが、いまだに投資を続けている。わたし自身は、かつて抱いていた中国に対するイメージを全て撤回して、中国から学びなおす必要を痛感していたが、いまだに多くの投資家は、いつかは中国も自分たちと同じ視点で世界を見るようになり、「道理がわかる」ようになり、ビジネススクールで学んだ例のとおりになると思っている。中国は、継続的に、驚異的な速度で世界へ向けて開放を進めていくだろう。しかし、中国という国は、これからも常に、世界の歴史における自分たちの場所というものを強く意識せずにはいられないはずだ。これまで以上に複雑な国として、これまで以上に「中華思想」を強め、過去の歴史とつながっていくだろう。そして、国際電気通信協定を「アメリカ式手法の勝利」と称したアメリカ通商代表部のシャーリーン・バーシェフスキーのような訪問者が思うほど簡単に、体制に従うことはないはずだ。それもやがてわかることだ。